スクラップ
唯乃人物
「廃車場にふたり」①
「あなたが星水冬季さん、ですか?」
僕は廃車置き場の旧いミニバンの天井に寝転んで夕ご飯をかじっていた。満天の星空の下、その声を聴いて身体を起こす。
眼下を見ると星空とミニバンと砂利だらけの地面の間に、一人の女の子が立っている。
「そうだよ」
返事をして彼女を見つめる。彼女は綿毛のようなフワフワした水色のフリース羽織り、白のレーススカートを揺らしていた。廃車場には似合わなすぎた。
それにこんな年齢の女の子が、僕のことを知っていることにも違和感があった。
何しろ僕は、そんなに健全な大人ではないのだ。
僕はミニバンから飛び降りる。少しバランスを崩れて両手が地面につくと砂利のいくつかが手のひらにしがみついた。砂利はそのままに立ち上がり、彼女へと近づいて私は訊く。
「僕に何の用事?」
少女はため息を吐くように息を吸い込み、息を飲むように言った。
「あなたを、殺させてください」
彼女の左手にはスタンガンが握られていた。
スクラップ 唯乃人物 @20220603
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