第3話 愉快なイノシシさん達と噂達
「ありがとう。でも「魔物コイコイ」はいらないかな釣りの邪魔はされたくないし。」
「浅はかだなコルリ!先に魔物をおびき寄せる赤を使った後すぐに、魔物を寄りつかなくする青を使うと効果が2倍になるんだぜ!」
「なんと。そんな裏技が」
「でも絶対すぐに使うんだぞ!投げてすぐだ。それと赤の後に青だぞ。間違えるなよ」
「うん。わかったよ。子供じゃ在るまいし。それくらい大丈夫だよ。それよりまた貰っちゃったけどいいの?」
「気にすんなって。最近私もレベルがあがってきて、お金にも余裕が出てきたしさ。装備もちょっと変わったんだぜ。ほら」
そういって道具袋から綺麗な短剣を取り出す。
「うわー凄いね。」
「これはたまたまモンスターからドロップしたんだけどな。・・・コルリの魚の印象が強すぎて言うの忘れてた。他にもレアな道具やスキルを落とすこともあるらしいからたまに周辺を見てみるといいよ。お、そろそろ時間だ。じゃあ、またな。」
「わかった。またねー」
コノハがログアウトする
「よーし。釣るぞーーー!」
コノハがログアウトしてから少しして
「うーーん。もう少し静かにしてくれるかな。今は構ってられないよ。イノシシさん」
魚完全防御形態のコルリにイノシシが攻撃してくる。
特にダメージがないので問題ないのだが
こうドタドタされると魚が逃げてしまう。
「あ、そうだ、確かコノハから貰ったビンがあった。釣りに夢中で忘れてたよ。」
いそいそと投げる準備をする
ここで思い出して貰いたい。
コルリはゲーム初心者であるということを
「あれ?どれくらい使えばいいのかな。周りのイノシシさんは10匹くらいいるし。1個じゃ絶対足りないよね。よし全部いっちゃおう。その方が効果も高いはず。」
そして、釣り以外にはほぼ無関心でコノハの説明あまり聞いてなかったことを
「まず青のビンを全部叩き割って。」
バリン
「次に赤のビンを全部叩き割るっと。よしこれで釣りに集中できる」
しばらくして
「あれーー。おかしいな?さっきよりイノシシさんが増えてるような。気のせいか・・・あ!!」
そこで湖の水面にゆらりと大物の魚影が見えた。
その魚がゆっくりとコルリの竿餌の方に近づいてくる。
緊張するコルリは息を潜めて餌に食らいつくのを見守る。
やがて魚が意を決したように素早く下からコルリの餌めがけてまっしぐらに向かう。完全に捉えた!!この魚は絶対に餌を食う。コルリの頭の中はこれからのキャスティングで頭がいっぱいだ。
ドーーーーーン。
突如地響きのような振動が大地を震わせる。
その振動が湖にも伝わり、なんと魚が逃げてしまう。
「ああーーー!!!!!!そんな・・・・」
魚さんとのまだ見ぬバトルを夢描いていたコルリにとって最悪の瞬間だ。
ドドッドドドッド
その魚逃がしの犯人がコルリに近づいてくる。
見ると数百はいるイノシシの大群がコルリに近づいて来ていた。
普通の人であればその数は絶望的
ベテランでもこのイノシシの大群の壁を無傷で突破するのはきついレベルだ。
だが釣りを邪魔されたコルリの怒りはイノシシに向いた。
「もう、せっかくいいところだったのに、許さないからね。カジカさん突撃!!!」
魚から頭だけ出した状態でコルリがイノシシに突っ込んでいく
「カジカVSイノシシの大群」の戦いが今火蓋を切って落とされた。
これが後に歴史に残す事になる「雷雲のカジカさん協奏曲」である
数分後。
チーーーーン。
湖の付近に横たわる大量のイノシシさん。
ものの数分で決着は着いた。
「まったく、遊ぶのはいいけど、他の釣り人の邪魔をしちゃダメってお母さんに教わったでしょ。」
「おやおや、子供たちが世話になったようだね。」
コルリが振向くと50mはある親イノシシがそこにいた。
そのままコルリに突撃してくる
ポン
『シークレットボスが発生しました。この戦いに拒否権はございません』
「シークレット?なんだかよくわからないけど。こっっちに来るならちょっと痛い目みてもらうよ。カジカさん!!」
ドーーん。二人が衝突する。
ぐらぐらと世界が揺れたように震える。
たまたま素材が足りなくてこの湖のフィールド近くに来ている者がいた
普段はここにいることはないランキング常連者揃いのメンバーだ。
「!!!!・・・なんだ今の?みんな大丈夫か?」
「ああ、こっちは大丈夫」
「私も大丈夫よ」
皆ゆっくりと地面から立ち上がる。
あまりの衝撃で膝をついてしまっていた。
こんなこといつぶりだ?手強い龍を倒した時もここまでではなかった
それにしても。。。凄い衝撃だったな
騎士の格好の男が土埃を払う
「誰かモンスターと戦ってるのか?」
「いや。それはないだろう。一応ここ始めのフィールだぞ。初心者が戦ってここまでで来る衝撃って、どんなヤツらが戦ってるんだよ。」
「見て!!」
女性が指指す方向にとんでもない黒雲と雷雲が立ちこめている。
まるで世界の終わりのような
「なんだあれは・・・いかん。とりあえずここに居てはヤバイ。とにかく引き返すぞ」
その雷雲の下で「カジカ」が雨に濡れていた。
「ふーーーー。それにしても硬かったなーー。普段は一発なのに今回は2発も突撃しなくちゃいけなかったよ。これに懲りたらもう邪魔しないでね。」
横たわる巨大イノシシさん
ポン
『シークレットボスを撃破しました。報酬としてスキルが付与されます』
「これがコノハのいってたやつかな?どれどれ?」
~無慈悲なイノシシ撃破報酬~
スキル
猪突猛進スペシャル
効果
使用者のステータスを全て0に、HPとMPを1にするが攻撃力が3倍になる。またどんなモーションでも連続して動けるようになる。使用MP0 制限時間 解除するまで
「へーー全然わかんないや。とりあえずこれでゆっくり釣りができそうだね。」
収まった雨の中遠くで虹がかかっている。
さきほどとは打って変わって静かな中コルリが湖に糸を落とす。
数日後。とある冒険者が集まる酒場。
窓際のテラスにコルリとコノハが座っていた
「そういえば、明日から競技コンテストが開催されるらしいぜ。」
「競技コンテスト?」
「うん。お知らせBOXにも来てると思うけど・・・あ。これな。そうそうそこタップして、」
「結構大きいコンテストなんだね。今回は中継もあるって書いてあるよ。」
「上位者だけだと思うけどな。」
「コンテストは全員参加型のバトルロワイヤル方式だって、・・・倒した相手のレベルでポイント加算、上位者は素敵な報酬も!!」
「数年やってるベテランや廃課金プレイヤーも参戦するからウチらじゃ入賞どころか10万位以内も無理だろうけどな。10万位からアイテムが貰えるらしいぜ。参加資格は特にないからコルリも参加ボタンは押しておくといいよ。」
「そういや、コルリどれくらいのレベルになった?私は25だけど。」
「んーと30だけど。」
「・・・ちょっと待って。コルリって釣りばっかしてたよね?モンスター倒すっていっても自分に寄ってくるイノシシくらいじゃなかった?数匹程度じゃそこまでいかないはず・・・この間までレベル2とかだったよね?ゴットフィッシュ倒した経験値はチュートリアルのときだったせいか特に大したことなかったはずだし」
「そうだよー」
「私めっちゃ効率重視してダンジョンとかに潜ってたんだけど」
「わーーー。なんかごめん。」
「くそっ。少しも悪いと思ってないな。」
頭をぐりぐりする。
「いてて。冗談だよ。うーーんたぶんあれかな。ビン割ったら魔物来たヤツだと思う。」
「魔物?ちゃんと赤、青の順で割ったよね?」
「割ったよー。しかも何かでかいのが出てきた。」
「何かでかいの・・・」
「そっ。で、虹の中でアメマスを釣りましたー」
「いや、釣り情報はいいから。でもアメマス気になるな。結構大きかった?」
「まあまあなサイズかな?スキルも手に入ったよー」
「へーーースキル。えっスキル?話に釣りが巧妙に紛れ込んでてわかりにくい」
「あーこれこれ。」
「なんだこれ。「猪突猛進スペシャル」・・・見たことないスキルなんだけど。情報サイトにも乗ってないし。」
「親を叱ったら手に入ったよ」
「ダメダ。詳細聞くほどわからなくなる。その話はおいおい詳しく聞くことにしよう。でも私以外にレアな情報は気軽に話しちゃだめだよ。」
「わかった。じゃあ。そろそろログアウトしようか。」
コルリ達が去った後
コルリのことを噂する者がいた。
「だから、見たんだって巨大なカジカが湖で釣りをしてるのを!!!」
「飲み過ぎだな。いくら何でもそれはないぜ。カジカが釣りって何だよそれ、おめーはまだ初心者ホヤホヤだからな。たぶん何か別のものと見間違えたんだろ」
「そんなことないって、こう器用に口で加えて、リリースまでしてたんだって。」
初心者の男がそばの箸で真似る
「はっはっは。なんだ?そのカジカ君は自分の食い扶持はしっかり釣りでってか?そりゃあご立派なこって。わかった、わかった。それより始まりの湖といえば『雷雲の化け物だろ』。なあ?」
男が別の席のベテラン冒険者に声をかける
「ああ、確かにあいつは存在した。雲に隠れて全貌はわからなかったが、衝撃だけで俺達は吹っ飛んだからな。」
「ランキング上位者のあんたが言うんじゃ間違いねえな」
最近はどこの酒場もこの話題でいっぱいだ
「何だと思う?ラスボスの新実装かな?」
エルフの女性が聞く
「でもそのラスボスが2体いたんだろ?戦ってたみたいだし。ボスモンどうしの縄張り争いか?」
さらにとなりの席からも話に参戦してくる
徐々に酒場全体その話題で持ちきりになていく
「明日から競技コンテストだから、案外そいつらがひょっこり出てきたりしてな。はは」
「勘弁してもらいたいな。あんなのが出てきたらどうしようもない」
そうして波乱の競技コンテストが幕を開ける!!
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