第4話 恋よりも寧ろ近しい

 近い、近いってば、こんなに近くていいわけがない。近すぎると私の全部が見えてしまう。嫌なところも全部。むしろそれがいいんだよと彼はなんでも受け入れる。そうでいて時々怒ってくれる。


 愚痴を言うのを我慢する私を怒ってくれる。そういう生き物なんだよ。悪口も妬みも愚痴も恥ずかしいことも言うための口なんだよ、ずっと閉じていたら呼吸ができないんだよ。貝だって口を開くよ、水を吹くよ。黙っているのもすきだけどね。


 バランスがとれないんだということも伝える。それも受け入れられる。何をすれば受け入れられないんだろうと考えてしまうほどに、彼は優しい。嫌われるためにあれこれいろんなことをしてみた。逆効果だったようだ。彼の気持ちを否定してみた。


「私のこと本当はすきじゃないでしょ」


「それについてはもう十分考えてるから」


「考えた結果どうだったの?」


「この気持ちは恋じゃない」


「じゃないならなんなの?」


「ん?この気持ちはなんだろう?って思って、名前つけなくてもいいやって」


「お、合唱の」


「え?何、急に」


「はるに」


「へ?夏だよ?」


 私は笑った。おかしくてしかたない。生きているなあ、生きていきたいなぁとただ思った。あの激しくてやわらかい世界中のたくさんの曲のように。息をして歌いたい。一曲の何分間ですら怒ったり笑ったりしている。


 夏なんて過ぎてしまえばあっという間で

 短いようで長いこのひとときも一瞬

 2人の時間を大事にしたいと思いました

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