45.帰らない妻

外出先から車で帰路についていた。

あともう少しで家に着くといったあたりで買い忘れを思い出した妻は、私に「先に帰ってて」とだけ言って荷物片手に車を降りた。

家で帰りを待っていたがいつまでたっても戻ってこない妻が気になり、迎えに行くことにした。

家から商店街までは一本道。両脇には竹林が広がっている。

たどりついた商店街の最初の店の店主に聞いたが妻は見ていないと言う。「それよりもこれ、忘れ物」と手渡された鞄は妻の物だった。中には財布、携帯電話と他諸々が入っていた。連絡手段がないのは困ったな、と思った。

何らかの事情で竹林に入ったのかもしれない、私は来た道を引き返した。

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