46.命

「命を大切にしてください!」

少女の言葉でオレは自殺を思いとどまった

当時中学二年生だったその少女は、尊い命を救ったとして市長から表彰された

文武両道で人一倍思いやりの心を持つ少女は称えられ、その未来は実に明るかった

一方オレの方は自殺未遂が仇となり友を失い職を失い報道されたこの顔のおかげで街を歩けば注目の的だが、たったひとつの大切な命だけは守ることができた

あれから数年経つが、少女の方は順風満帆らしい

当時精神が不安定だったため、これまで命の恩人である彼女に感謝を一言も伝えていない

気付いたならば善は急げ、お礼に参らにゃならんだろう

突然の訪問に驚くだろうか、鈍色に輝く手土産を背に隠し、その少女の家のチャイムを鳴らした

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