第10話
「よし……行くぞ……!」
狙いを定めて引き金を引く。その瞬間、凄まじい反動が発生して体が後方へ持っていかれそうになる。なんとか耐えて撃ち続ける。そして遂に……
ガァン!という音と共に巨大魔獣の体に穴を空けることができた。
その光景を見て、エアリスちゃんは驚いていた。
「嘘……!?」
そして、巨大魔獣の方も自分の身に何が起きたのか理解できていないようで、戸惑っているような表情を浮かべている。
「今だ……!」
ルシードさんが巨大魔獣の懐に入り込んで連続で斬りつけると、ついに相手の体が崩れ落ちていった。そして、そのまま動かなくなったことを確認した後……
「やったな……!」
「うん……!」
喜びを分かち合うように握手をした。だが、すぐに次の行動へと移っていく。
「すぐにここを離れよう!」
「そうだね!」
「えっと……僕は何をすれば良いですか?」
俺がそう尋ねると、ルシードさんが答えてくれる。
「君には街に戻ってもらって、このことをギルドに伝えてもらいたいんだ。この森には強力な魔物が潜んでいる可能性があると」
「分かりました!」
「頼む!」
「気をつけて帰ってください!」
「ありがとうございます!」
二人と別れて、俺は急いで街の方へと向かった。
しばらく走っていると、遠くの方に煙のようなものが立ち上っているのが見えてきた。おそらくあれが戦闘が行われている場所なんだと思う。
だが、まだ距離があるため、正確な状況までは把握することができない。とにかく急ごうと思い、さらに速度を上げて走り続けた。
それから数分ほどで到着したのだが、そこで見たものは想像していたものとは全く違うものであった。
まず最初に目に入ったのは巨大なクレーターのようなものだ。それはまるで隕石でも落ちたかのようなものであり、周囲には大量の瓦礫が散乱している。
そして次に見えたもの……それは倒れている一人の男性の姿であった。その姿を見た時……全身の血の気が引いていく感覚に襲われた。
「父さん!!」
慌てて駆け寄って抱き起こすと、僅かに意識が残っているようだった。
「う……あ……リク……か……」
「大丈夫?しっかりして!」
「すまないな……。お前に……謝らないと……」
そう言いかけたところで、突然口から血を吐いて咳き込んだ。その姿を見て、俺は最悪の事態を考えてしまった。
「まさか……もう……?」
「いや……まだ大丈夫……だ。まだ……戦える……」
「そんな状態で戦うなんて無理だよ!お願いだから休んで……」
「駄目なんだ……ここで……止めないと……」
「どうして……?」
「あいつは……この森の支配者は……まだ生きている……」
「そんな……それじゃ……」
「だから……止めないと……」
「そんなことできる訳ないじゃないか!!そんなボロボロの状態で……そんな状態なのに戦ったら死んじゃうよ!」
「それでも行かないと……いけないんだ……!」
「……ッ!」
その時、俺の中で何かが切れた。それは今まで抑えていた感情が一気に溢れ出してきた結果だった。
「ふざけるなよ……そんなの勝手過ぎるだろう……!」
「リ……ク……?」
「そんなに死にたいなら勝手に一人で死んでろよ……!」
「……」
「俺を巻き込むなって言ってんだよ……!」
「……」
「これ以上俺に関わるなよ……!」
「……すまなかった」
「……ごめんなさい」
俺達はお互いに謝罪の言葉を口にすると、同時に笑い合った。
「全く……本当に馬鹿だよね。こんな時にまで喧嘩するだなんてさ」
「ああ……本当だ」
「でも、おかげで目が覚めた」
「そうか。良かった」
「ねぇ、一つだけ約束してくれるかな」
「何だ……?」
「絶対に生きて帰ってきて」
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