第9話

「はい。この辺り一帯には強力な魔物が沢山いるらしいですよ」


「そうみたいだな。だが、この森には妙な気配を感じる……気をつけた方がいいかもしれんぞ?」


「分かりました。ところで、ルシードさんのお姉さんはどちらに居るのでしょうか?」


「さあな。どこに向かったのかまでは知らん」


「そうなんですか……」


そんな話をしていると、突然魔物達が姿を現した。


「魔物だわ……皆、構えて!」


「はい!」


アルセリアさんの掛け声と共に武器を構える。そして、戦いが始まった。


まず最初に飛び出したのはエリオさんだった。彼は素早い動きで魔物に接近していく。


すると、その途中で魔物の集団と遭遇してしまい……あっという間に戦闘が開始された。


一方、アルセリアさんは精霊の力を借りて強力な魔法を放ち、次々と魔物を倒していっている。


そして、最後に残ったのは大型の熊のような姿をした巨大な魔物だった。


そいつは他の個体より明らかに大きく、その体は真っ黒に染まっていた。


恐らく、こいつがこの森のボスなんだろう。そんなことを思っている間にも戦いが進んでいき……やがて決着が着いた。


最後の一匹を倒した後、その場に倒れ込むと大きな音を立てて消えてしまった。


「やったわね」


「うん。これで、この森の調査が楽になるといいんだけど……」


「そうね……」


「ルシードさん。この森に何か変わった事はありませんでしたか?」


「特に何もなかったはずだが……」


「そうですか……」


その時、背後から巨大な生物が現れて襲いかかってきた。


咄嵯の判断で振り返ると、そこには今まで見たことがないような巨大かつ凶暴なドラゴンの姿があった。


「こいつは……?」


「そんな……どうしてここに!?」


「どうやらお前達の仲間じゃないようだな。そいつがこの森の中で一番強い奴って訳か……」


「どうして分かるの?」


「魔力の質が普通の奴らとは全く違うからな」


「そうか……なら話は早いね。あいつは僕達の手で倒そう!」


「はい!」「おう!」


こうして、新たな仲間達と共に巨大龍との戦いが始まる。


巨大魔獣は全身が黒い色で覆われており、背中からは二枚の翼が伸びていた。


どうやら空を飛ぶことも可能らしく、空に浮かびながら炎のブレスを放ってきた。その威力は凄まじく地面を簡単に焦土へと変えてしまうほどだった。


「危ない……!」ルシードさんの声に反応してその場から移動する。


その直後、直前まで俺の居た場所は業火によって飲み込まれていった。


どうやら、あれにまともに直撃すれば一瞬にして骨も残らずに灰となってしまうだろう。それほどの高火力の攻撃だった。


「あの攻撃をどうやって防ぐんだ……?」


俺達が攻撃を防ぐ手段を考えようとする前に、エアリスちゃんの方から声がかけられた。


「私に任せて!二人共、少し離れてて!」


「えっ……?」


よく分からないままに言われた通りにする。


そして次の瞬間、彼女を中心にして強烈な光が放たれ始めたかと思うと、光の障壁が展開されていき……完全に防御が完了した。


「今のは一体……?」


「私の持っている剣は光属性に特化した能力を持っていてね。それを使って魔法を使っただけよ」


彼女はそう言いながらも空中にいる巨大魔獣に向かって連続で光線を撃ち続けている。


その光景を見て俺はある事を思い出した。


以前読んだことがあるのだが、魔法の中には魔法陣を展開してそこから放つというものではなく自らの体内に存在するエネルギーを直接変換させて撃ち出すというものが存在しているらしいのだ。もしかしたら彼女の使っているものもそういう類のものなのかもしれない。


「これはチャンスだ……!」


そう呟き、すぐにルシードさんも攻撃を仕掛けるために飛び出していく。彼はそのまま走り抜け、途中でジャンプをして上空から斬りかかった。


だが、相手も黙っているわけではなく、両腕を振り下ろして彼を迎撃してきた。


「ちぃ……!」彼は素早く移動して攻撃をかわすと、今度は相手の腹部目掛けて思い切り蹴りを入れた。


その結果、相手が怯んだタイミングでエアリスちゃんが再び攻撃を仕掛けて動きを止めてくれる。


その隙にルシードさんが追撃を行い、さらにダメージを与えていこうとしている。


「俺だって……!」二人に続くために武器を構えた時、後方から大きな爆発が発生した。


何が起きたのかと思い確認してみると、そこには一人の男性が立っていた。


彼の腕には金色のリングが輝いており、それはどこか神秘的な輝きを発している。


そんな男性に視線を向けたまま俺は思考を巡らせ始める。まず最初に考えたのは……あの人は誰なのかということだ。


次に思ったのはどうしてここに居るのか。


それから考えられることは、彼がこの森に住んでいる人だということだが……それならば何故巨大魔獣と戦っているのだろうか?まさか……この人がこの森を支配しているという魔物……なのだろうか?だとしたら非常にまずいことになる。急いで止めないと……。


そう考えているうちに男性は右腕を大きく振り上げていた。


何をするつもりなのだろうと見ていると、拳の先には強大な魔力が集中し始めていく。そして、それが最高潮にまで高まったと同時に……一気に巨大な球体となって解き放たれた。


放たれた魔力球がこちらに向かって飛んでくる。慌てて回避しようとしたが、反応が遅れてしまいギリギリで避けたもののその衝撃の余波で吹き飛ばされてしまった。幸いなことに大きな怪我はなく、何とか立ち上がることができた。


すると、いつの間にかルシードさん達が近くまで来てくれていた。


「大丈夫か?」


「はい。どうにか……」


「そうか……」


そんな会話をしていると、先程の男性が話しかけてきた。


「ふむ……まだ生きているとは驚きですね」


「貴方は一体……」


アルセリアさんの質問に対して、男は落ち着いた様子で答えてくれた。


「私はこの森に住む者です。この魔獣を倒すために来たのですが……どうやら手遅れだったようですね」


「いえ……そんなことありません」


「ほう……?」


「確かにこの巨大龍はかなりの強さを持っていると思います。でも、だからといって諦める訳にはいきません。僕達は絶対に負けられないんです!」


俺の言葉を聞いて男は大きく笑った。


「くくく……面白いことを言う少年だ。いいでしょう。私も協力しますよ。さぁ、早く終わらせましょうか」


「はい!」


こうして、三人の協力を得たことで戦いは最終局面へと突入していく。


ルシードさんが正面から突っ込み、巨大魔獣の注意を引きつけつつ攻撃を加えていく。その隙を狙ってエアリスちゃんが背後から魔法で攻撃を行っていく。俺は二人を援護するために遠距離からの射撃を行うことにした。


「くそっ……硬い……」


「ルシード!下がって!」


「ああ!」


二人は上手く連携を取りながら攻撃を繰り出していたが、それでも決定打を与えることができずにいた。このままではいずれ力尽きてしまうだろう。


「俺も何かできないかな……?」


考えろ……自分にできることは何がある……?


その時、脳裏に一つのイメージが浮かんできた。それは、俺の持っている銃の威力を上げればあの強固な鱗を貫くことができるのではないかというものだった。


「やってみるか……!」


すぐに実行に移すべく、腰から銃を抜いて構えた。


「どうしたんだ?」


「ちょっと試したいことがあるんで……少しの間、時間を稼いでくれますか?」


「分かった」


ルシードさんはそう言うと、再び巨大魔獣へと向かっていった。


「よし……

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