第8話

「お待たせしました!」


「おっ、来たか」


「ご注文をお伺いしにきました!」


「俺とルシードの分は適当でいいぞ」


「分かった。それじゃあ、こっちのお客さんの分だけ聞くとするよ」


「俺はカレーライスとカツ丼をお願いするよ」


「はい!分かりました!」


「ルシードさんはどうしますか?」


「じゃあ、このハンバーグ定食を頼もうかな」


「はい!それでは少々お待ち下さい!」


「そういえば、アスターはいつもここで食事をしているのか?」


「うん。僕達は毎日ここに来てるよ」


「へぇー。そうなんだな」


「二人も毎日来れば、きっと常連になれると思うよ」


「そうかもな」


「でも、僕は二人に会えて嬉しいけどね!」


「そう言ってくれてありがとな」


「こちらこそだよ」


「ところで、二人はどうしてこの国に来たの?」


「俺達はな……この国の遺跡を調べに来ているんだ」


「そうなんだ!じゃあ、博士さんと同じだね」


「ああ。だが、俺は遺跡の調査が目的じゃないんだ」


「どういう事?」


「俺の目的は遺跡の中にある宝箱の中に入っている物を手に入れることだ」


「へぇー。そうだったんだ」


「ああ。この国にある遺跡は全部で5つあってな……その全てを調査した結果、俺達が探し求めている物がこの国のどこかに存在することが分かったんだ」


「成程……それで、博士さんはその宝を探しに来たってわけだね」


「そういう事だ」


「博士さん達は凄いんですね」


「まあな。ところで、二人はどうしてこの国にいるんだ?」


「実は、僕らは仲間と一緒に旅をしているんです」


「そうだったのか」


「うん。そして、今、この国に居るんだけど……ちょっとした事情で離れられない状況になっているんだよ」


「どんな理由だ?」


「それがね……この国には強い魔物が多く生息しているらしいんだ」


「この国にはそんな危険な場所があるのか?」


「うん。この国には『暗黒の森』っていう大きな森があって、そこに強力な魔物が住み着いているみたいなんだ」


「暗黒の森?」


「そうよ。そこには沢山の魔物がいるらしくて……そこに入った人は生きて帰って来れないと言われているわ」


「恐ろしい所なんだな……」


「うん。でも、最近になってその森に変化があったんだ」


「変化?それは一体何なの?」


「どうやら、その森の中心に巨大な塔が建っているようなんだ」


「何だって……?」


「まさかとは思うが……そいつの中に強力な魔力を持つ奴が現れたとか言うんじゃないだろうな?」


「どうしてそれを!?」


「やっぱりかよ……」


「知ってるの?ルシードさん!」


「ああ。俺達もその塔を見たことがあるからな」


「そうなんだ……でも、どうして知っているの?」


「俺達はな……その塔を調査しに行った事があるんだよ」


「ええっ!?」


「お前らは知らないだろうが、あの塔には特殊な結界が施されていてな。普通の人間じゃ中に入ることすら出来ないようになってたんだ」


「へぇー。そうだったんだ……」


「でも、お前らなら入れるんじゃないか?」


「僕達にそんな力はないよ」


「そうか……まあ、そんなことだろうとは思ってたがな」


「そういえば、二人はどうやって塔の中に入れたの?」


「私達はね……ルシードのお姉さんに助けてもらったの」


「ルシードさんの?」


「ああ。あいつの姉は俺よりも遥かに強くてな……結界なんて簡単に破壊できるほどなんだ」


「そうなんだ……でも、今はどこにいるの?」


「さあな。あいつの居場所は俺にも分からねえよ」


「そうなんだね……」


「ところで、二人はこれからどうするつもりなんだ?」


「うーん……」


「そうだなぁ……」


「おいおい。まだ決めてないのかよ」


「ごめんなさい……」


「とりあえず、今日はこの宿に泊まって明日になったらまた考えようかなと思っています」


「そうか……それじゃあ、それまでの間は暇になるんだな?」


「まあ、そういう事になるね」


「よし。それなら俺達の手伝いをしてくれないか?」


「手伝う?」


「実は、明日にでもその暗黒の森に行ってみようと思っているんだ」


「本当ですか!」


「ああ。そこで、もしもの時に備えて一緒に戦える仲間を増やしたいと思っていたところなんだよ」


「成程ね……」


「どうする?俺としては二人も同行してくれた方が助かるんだが」


「私は賛成です!」


「僕もいいと思うよ」


「二人共……ありがとう!」


「でも、どうしてそこまでしてくれるの?」


「実は、俺達はある人達を探しているんだが……なかなか見つからなくてな。だから、少しでも戦力を増やそうとしていたんだ」


「そうだったんだね」


「それに、もし二人が協力してくれないと言うのであれば……一人で行くしかないからな」


「一人じゃ危険だよ!ここは三人で協力しようよ!」


「分かった。それでいいんだな?」


「うん」「勿論だぜ」


「それじゃあ決まりだな。改めてよろしく頼むぞ」


「こちらこそ、よろしくお願いします!」


その後、俺は二人と握手を交わしてから部屋に戻った。


そして、翌日になると二人は準備を整えた後ですぐに出発することになった。


それから数時間後。俺達は『暗黒の森』と呼ばれる場所に辿り着いた。


「ここが例の場所なのか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る