捕食 第7章
「ゆーた、世界各地のパンデミック対策の動画、まとめてくれた?」
「うん。まとめたよ。現地の映像とかはないから、イメージ映像を付けたよ。動物を殺害しようとする人たちが、動物に襲われて、殺されて、食べられる、ということが次々と起こってるらしい。まるで『怪奇現象』のように恐ろしいよ。」
『インフルエンザパンデミック関連のニュースです。依然として感染者数死者数ともに、増加の一途を辿っています。
「・・・どうなっちゃうんだろうね。」
『続いて世界各地の話題です。世界各地で猛威を振るっているインフルエンザ。アフリカではライオンインフルエンザ、ヒョウインフルエンザ、ゾウインフルエンザがパンデミックの様相を呈していますが、日本と同様に、感染源とみられる動物の殺処分が難しい状況、とのことです。』
「僕らはその理由も、詳しく調べたけどね。」
『
『はい。現地の保健局によりますと、殺処分担当者が、ライフル銃を持って出掛けたきり戻って来ない、という事件が相次いでおりまして、殺処分の現場で何が起きているのか、取材班が取材を・・・・・・・・・・・・。』
『・・・鹿島さん?・・・鹿島さん?聞こえますかー。』
『・・・キャー!』
『鹿島さん、鹿島さん、聞こえますか?』
『・・・えー、今、外で悲鳴が聞こえました。外の様子を見てみます・・・えー、状況をお伝えします。街中の道路にですね、今、野生のライオンが歩いておりまして・・・。』
『キャー‼』
『映像、届いておりますでしょうか。これは一体、どういうことなのでしょう。・・・あ、今ライオンが、急に走り出しました!ライオンの前方を、女性が走って逃げています。』
『映像、届いております。・・・ちょっとこれ、大丈夫なんでしょうか?』
『もう少しで追いつかれそうです。・・・あ、追いつかれた!あああっ!・・・どうやらライオンは、女性に噛みついたようです。・・・辺りにおびただしい
「・・・げげえ~・・・。」
「・・・すっげーことに、なってんな・・・。」
「怖い・・・。」
『今、カメラが捉えた映像です。あの一匹のライオンの後ろから、多くの動物の群れがついて来ています・・・一体、何頭ぐらいいるでしょうか。ざっと・・・百頭はいるようです。まるで、デモ行進のように、ゆっくりと、道幅いっぱいに道路を練り歩く、といった状況になっております!』
『緊急事態じゃないですか!』
『もう少し、カメラを回してみます。』
『この時間、予定を変更して、引き続き、現地の様子をお伝えいたします。なお、この時間に予定されていた”木曜名作特等席『湯けむり殺人事件』”は、・・・。』
◇◇◇
『何でしょうか?・・・サル・・・でしょうか?動物の群れから、大勢のサルが飛び出して、猛スピードで人間を追いかけています。』
『サルですか?』
『あああっ!大変です!大勢のサルたちが、人間の歩行を妨害するだけでなく、・・・体に乗ったり、引っ掻いたり、噛みついたりしています!』
『鹿島さん。こちらにも映像が届いているのですが・・・これはもう、緊急事態じゃないですか!』
『ギャー!』
『ワー!』
『大変です!サルたちが足止めをしている人々に、ライオンやトラが、猛スピードで駆け寄って・・・かなり激しく噛みついているようです!』
『映像届いています・・・かなり激しい
「うわっ、えぐいな。」
『ライオンやトラが、・・・人肉を食べています!ライオンやトラが、むさぼるように人肉を食べています!街の道路が、大量の
『一旦、コマーシャルです。』
◇◇◇
『ブルルルルル・・・。』
『戦車です!戦車が現れました!』
『やはり鹿島さん、生身の人間では対処できない事態になっていますからね。戦車で対処していくしかないのでしょうね。大統領命令なのでしょうか。』
『ズドーン‼』
『戦車が今、大砲を撃ちました!戦車が今、大砲を撃ちました!・・・一部、動物に命中したでしょうか。』
『バサバサバサバサ・・・。』
『何でしょう。空に・・・鳥の大群が現れました!何の鳥だろ。とても大きな鳥・・・
『・・・鷲、のようですね。』
『今、鷲の大群が・・・戦車の上の方に、カタマリを作って旋回しています。』
『・・・何故、戦車の上で、旋回しているのでしょう。威嚇、ですかね。』
『鷲の大群が、何かを落としています。・・・フン・・・でしょうか。次から次へと、鷲の大群が、戦車めがけてフンを落としているようです。』
『ズドーン‼』
『また戦車が大砲を撃ちました。しかし、動物を狙ってはいなかったようです。外しました。』
『戦車は動物に近づいた、というのに。どういうことでしょうかね。』
『先程の鷲のフンですが、もしかすると、
『ドスン、ドスン、ドスン、ドスン・・・。』
『おーっと!ゾウの大群がやってきました!どのくらい、いるでしょう。・・・凄い大群です。五十頭はいると思われます。戦車の後方に近づいていきます。』
『
『ズドーン!』
『パオーン!』
『一頭のゾウに、大砲が当たったようです!』
『・・・・・・ドサッ。』
『大砲に当たったとみられるゾウが今、倒れました。』
『・・・・・・・・・ドドドドドドドドド。』
『ゾウの大群が突然、走り出しました!挑発されたのでしょうか?』
『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド。』
『ゾウの大群は、一斉に、戦車めがけて突進しています。』
『ドスッ。・・・ドスッ。・・・ドスッ。』
『ゾウが一頭、また一頭と戦車に近づき、戦車が完全に取り囲まれました!身動きが取れない状態になっています!戦車の上に横倒しになっているゾウ、戦車の上に乗ろうと、足を動かしているゾウ、戦車の横でタイヤに身体を擦りつけているゾウ、ゾウは様々な行動を取り、戦車の行く手を阻んでいます!』
『戦車の大砲は、長いですからね。至近距離で取り囲まれた場合、攻撃できませんよね。』
「すげーな。”戦車”対”ゾウ”。」
「なんか、形、似てね?」
「戦車の”戦車砲”と、ゾウの”鼻”だけだろ、似てんのは。」
『・・・何か、飛び出してきました。・・・サル、でしょうか?・・・後ろから数十匹ものサルが、リーダーとみられるサルのうしろについていっているようです。・・・やはり、戦車の方向に向かって、一目散に走っています。』
『サル、物凄い速いですね。』
『戦車のハッチの上に数匹のサル、戦車を取り囲んだ数十匹がゾウに寄り添うかたちで、ハッチ周辺に居るサルを見守っています。』
「戦車が動物に囲まれて、こんな状態になってるのなんて、見たことないな。」
『おーっと!リーダーとみられるサルが、ハッチを開けました!』
『内側から鍵はかけていなかったんでしょうかね。』
『かけていなかったんですかね。サルは簡単に開けてしまいました。リーダーのサルが、戦車の中に入った!・・・それに続いて、七~八匹のサルたちも戦車の中に入っていきました!』
「戦車の中って狭いんだろ?」
「人が一人入れるぐらいのスペースなんじゃないのかな。」
『戦車の中で、今何が起きているのでしょうか?・・・おーっと!ハッチが開きました。ゾウに寄り添って待機していた数十匹のサルたちが、一斉にハッチのところに集結しました!・・・中から数匹のサルが出てきました。・・・中に居た兵士を、戦車の上に引きずり上げているようです!』
『兵士の方は、大丈夫なんでしょうか?』
『・・・兵士は無抵抗なようです。・・・サルが兵士を完全に戦車の上に乗せました。』
『兵士の方、ぐったりしてますね。』
『そうですね。
「やられたんだろうな。」
「あのホームページに書かれていたことは、本当だったんだ!」
『まるで、スペインの”トマト祭り”のように、血で真っ赤に染まってしまった街ですが・・・一匹のライオンが、戦車に近づいてきましたね。・・・戦車の上で、兵士を取り囲んでいるサルが、何やら、動き出しましたよ。』
「まさか・・・戦車の上で・・・。」
「見せしめか?」
『複数のサルが、何やら兵士の服を引きちぎるなどして切り裂いています。・・・あおむけになっている兵士の服は、ボロボロに切り裂かれました。』
『一旦、コマーシャルです。』
◇◇◇
『鹿島さん、どうぞ。』
『戦車のところにやってきたライオンがですね、兵士の首に噛みついて、首からドオーっと血が吹き出しましてね。兵士は死亡、あるいは死亡する寸前の状態とみられます。・・・ライオンが、爪で兵士の皮膚を切り裂きましてね。・・・今こうして、兵士の肉を・・・ガツガツと食べています。・・・他のライオンが戦車の上にやって来ました。・・・一緒になって、ガツガツと兵士の肉を食べています。ライオンの口から、血が
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