捕食 第6章

 れん、ミサオ、ゆーたの三人は、動画の加工や、動画に載せる資料集めをしながら、テレビニュースを聞いていた。



 『次のニュースです。アフリカで、ライオンインフルエンザ、ヒョウインフルエンザ、ゾウインフルエンザが猛威を振るっています。感染者数が爆発的に増加してパンデミックの様相をていして久しいですが、それに伴って、死者数も爆発的に増加しています。』



 「アフリカでも、三種類のインフルエンザが流行ってるらしいぞ。これも調査したいよね。」

 

 「アフリカの言葉はよくわかんない。出回っている動画や写真を使えるかもしれないけど・・・。」


 「翻訳は出来ないけど、動画や写真を見て、俺たちはこう解釈しました、って言えばいいよ。」


 「あれ、英語で書かれたニュースもあるぞ。」



 「あっ、ちょっと待って!日本人が作ったサイトがある。」


 「ゆーたは、上に上がって来ないような、マイナーなサイトも検索出来るからな。」


 「閲覧件数が少ないのか、無料で作ったサイトだからかはわからないけど、『わんだほーえくすぺりえんす』と似たような調査をして作られてるサイトで、いつも参考にしてるんだ。物凄く、頭のいい人が作ってるみたい。」


 「ゆーたは、天才とか秀才、好きだからな。」



 アフリカでは、感染源とされる肉食動物をライフル銃で仕留めて殺害したり、ゾウに毒物を与えて殺害するなどの手法で、インフルエンザの感染防止に取り組んでいた。


 しかし、アフリカでも『怪奇現象』と言えるような、超常現象のような出来事が度々たびたび起きていたのだ。


◇◇◇




 ライオンやヒョウを標的にしている男が二人、茂みに隠れて、ライフル銃を構えていた。



 マンドリルの集団が、その様子を見ていた。



 「人間の奴ら、また、ライフル銃なんか構えてやがるぜ。」


 アフリカのライオンや、ヒョウが、次々とライフルで撃たれ、人間が与えたエサをゾウが食べた瞬間、苦しんでのたうちまわって死に至る現場を目の当たりにしてきたマンドリルの集団が、作戦を決行するため、茂みに隠れて耳打ちした。



 「俺たち、アフリカの森の仲間たちが人間に殺されたら、どうするんだっけ?」


 「人間を殺す。森のおきてだ。」


 「そうだよな。それじゃ、ライフル銃を構えた、あの男たちを殺そう。役割分担をするぞ。」



 リーダーとみられるマンドリルが、仕切り始めた。


 「ライオンやヒョウに集中している彼らを、一瞬振り向かせるために、背後に何かを投げ入れて、注意をらせる役。」


 「私がやります。」


 メスのマンドリルが立候補した。



 「次に、二人を驚かせるために、いきなり目の前に姿を見せる役。この役は、危険を伴うから、敏捷びんしょうな男性を希望する。」


 「俺がやるよ。ヤバくなりそうになったら、すぐ逃げるから、平気さ。」



 「次に、大勢で一気に体におおいかぶさって襲うぞ。これも男性陣で頼む。」


 「はいっ、僕ら『マンドリルガーディアンズ』が引き受けます。」


 

 「次に、羽交はがめにしている間に、危険なライフル銃を、彼らから奪うぞ。」


 「ここは、あたしたち、『マンドリルエンジェル』の出番ね。」



 「『マンドリルガーディアンズ』は、彼らを取り押さえたまま確保してくれ。彼らを我々のアジトに運搬する。」


 「人間は重たいから、もう少し手が必要かな。」


 「それなら、僕たちも手伝うよ。」


 「男の子たちも、協力してくれるそうだ。運搬後は、つるで、後ろ手に拘束するぞ。よし!この作戦で行こう。順番通りに、着実に仕留めよう!」


◇◇◇



 マンドリル集団の作戦は成功、ライフル銃を持った二人の男は、マンドリルのアジトで、後ろ手に拘束され、身動きが取れなくなっていた。




 「・・・サルなんかに、生けりにされるとは、夢にも思わなかったよ。」


 「俺たち、これからどうなるんだろう。」




 ガウー・・・。


 グルルルル・・・。



 ライオンやヒョウ、トラ、ピューマたちが、こぞって、のそり、のそりと、マンドリルのアジトへやってきた。


 「こんばんは、マンドリルさん。我々にエサを提供してくれて、そして何より、命を守ってくれてありがとう。心から、感謝する。我々が食べ終わった後、残骸ざんがいをくれてやろう。肉を細かく引き裂いておいた方が、マンドリルさん、食べやすいだろ?」


 「ごもっともでごさいます、ライオン様。おこぼれにあずかりたいと存じます。」



 ガウー・・・ウー・・・。


 フ―ッ、フ―ッ、・・・フ―ッ・・・。

 

 グルルルルルルルル・・・。




 腹をすかせたライオンやヒョウが、二人の男の周りを取り囲んでゆく。


 にらみながら、ジリジリと、ゆっくり、近寄っていく。


 だんだん、大きくなる、ライオンの顔。




 「・・・デカい・・・に、睨んでる・・・。」


 「俺たち・・・これから・・・ど、どうなるのかな・・・。」




 身体の震えが止まらない。


 鼻水と、涙が、止まらない。




 一匹のライオンが、よだれを垂らしながら、一人の男の目をジーっと見た。


 そして、大きな舌を出したかと思うと、男の顔を、下から上へ、ベロリと舐めた。


 男は、失禁した。




 ライオンは勢いよく、男の喉元に噛みついた。


 ヒョウも、もう一人の男の喉元に噛みついた。




 二人の頸動脈から、赤い鮮血が吹き出した。




 二人とも、意識を失った。





 後ろ手のつるを、ネズミが嚙み切ると、飢えていた肉食動物はエサに襲いかかった。


 衣服を引きちぎってから、分厚い皮膚を爪で切り裂いた。


 前足や歯で、皮膚を挟んでがして、筋肉をき出しにした。


 筋肉の赤みが見えると、トラは涎を垂らして近づき、ガツガツと食べた。


 ピューマは、前足で血管を切りながら内臓をどけて、男の身体の外に放った。




 心臓は、まだ、ピクッ、ピクッと、脈打っていた。


 


 ◇◇◇



 人間から奪い取ったライフル銃の使い方を練習したマンドリルは、ゾウを毒殺しようとして毒エサを持ってきた人間を射殺した。


 ライオンたち肉食動物が食い散らかした後のおこぼれは、美味しく食べられるところが、余りにも少なかった。


 なので、今回獲得したエサは、マンドリルの集団だけで食べることにした。




 衣服をいで、鋭く尖った石を使って皮膚を切り裂き、筋肉の部分を取り出した。


 マンドリルは、アフリカの観光客からマッチやライターなどをくすねていた。


 彼らの動作を模倣して、火を扱うことが出来るマンドリルは、人間の筋肉を切り分け、丈夫な木の枝に刺して、焚火たきびで焼くことに成功した。



 「今まで、俺たちの住居を荒らし、仲間を殺してきた奴らの肉だ。」



 「僕はあの日、生肉は食べれなかったけど、こうして焼いて食べれば、なかなか美味びみだね!」


 「美味おいしいわ!・・・私、もっと人間の肉、食べたいわ。」


 「君のためなら、また人間を殺してあげるよ。ライフル銃の男たちを殺して、ライフル銃を手に入れて、俺たちだけでパーティーすれば、たらふく食べられるさ。」


 「そうだ!これからも、森の仲間を殺そうとする奴らが現れたら、俺たちで殺して食べよう!」


 「さんせーい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る