犠牲者の呪術 第12章

 『わんだほーえくすぺりえんす』のリーダー、斉藤漣さいとうれんが、企画の打ち合わせで柿生家かきおけにやってきた。


 柿生美佐男かきおみさお裕太ゆうたは、裕太の高校の三年三組の怪奇事件と、美佐男のバイト先の『ペンギン快特便』のパワハラ上司の死について説明した。


 「この二つの事件には、裕太の友人の男の子の呪術が関係しているんだ。とりあえず、これを見てくれよ。」


 裕太がすでに、モザイクをかけて編集した重徳しげのりの呪術の様子を、漣に見せた。


 「三年三組の事件を受けてからの取材だったから、そっちの呪術映像はない。僕の先輩をいつも虐めていたパワハラ上司が、この呪術の二日後に死んだ、という通達が本社からあった。撮影日時を見て確認してほしい。」



 「・・・ゆーたの友達のこの男の子、どうしてこんなことが出来るんだ?」



 「わからないよ。もともと、オカルトとかに興味があるわけでもないし。医者になるのが夢で、数学の成績がずば抜けてて、一学期の期末で百点取ったんだ。スポーツも出来るんだ。いろいろ出来過ぎるし、結構女子にもモテるから、クラスメートからは嫉妬されてたみたい。それで、虐められて、二学期から登校拒否になってるんだ。そしたら急に、『闇の力』が手に入ったみたい。『闇の声』に言われた通りのやり方で呪ったら、呪った人たちが死んだんだって。」




 『キーキキキキキキ。』





 「・・・今、何か聞こえたような気がする。」

 

 漣が言った。



 「『キキキキ』って、誰かが笑っているような声が・・・。」





 

 『・・・シュワブッ。』





 「今、何か聞こえた。男のモヤモヤした声と女のキンキン声が混ざったような声で、『諏訪部すわべ』って言ったような。」


 美佐男が言った。




 「『闇の声』・・・だったりして。」

 




 「・・・漣、僕たち、この件に首を突っ込んで大丈夫かなあ。僕たちまで巻き込まれたりしたら、どうする?」


 「ははっ、そしたらその時よ。俺は怖くない。怪奇現象を、とことん追いかけてみたい。」


◇◇◇


 ブ―ッ!


 重徳のスマホにメッセージが届いた。


 『僕たち『わんだほーえくすぺりえんす』のアカウント、シゲノリが提案した特集の動画をアップしたよ。良かったら見てね!ゆーた。』



 重徳は早速パソコンの電源を付けた。


 高校に行くフリをして買ってきた、カツラとマントとお面を見つめながら、パソコンが立ち上がるのを待った。



 「どーもーっ!『わんだほーえくすぺりえんす』でーす!」


 裕太たちが作成した動画が始まった。


 重徳は、動画を見ながら、画面の下の方を右クリックして、貼り付けて出てきた動画のURLをノートに記入した。



 重徳は、動画を最後まで見てから、自分が作成したホームページを開けた。

 

 ホームページを開けながら、裕太に返信した。



 『死ヲモッテ、つぐなワセヨウ、ホトトギス』というタイトルのホームページに、裕太が知らせてくれた『わんだほーえくすぺりえんす』の動画のURLを貼り付けた。


 そして、別のソーシャルメディアで拡散した。

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