犠牲者の呪術 第6章
「これから、先日行った『まとめのテスト』の答案を返します。良い点数の順に名前を呼びます。名前を呼ばれたら、前に取りくるように。
「はいっ!」
「よくがんばったな!今回は百点だ!」
「ありがとうございますっ!」
(やったー!ついにシゲノリを抜いた‼夢が実現したんだ!)
魁斗は前から
重徳は冷静に、地蔵の様に微動だにせず座っていた。
(何とも思わないのかな。一年生の時から、僕に抜かれたことなんてなかったのに。今日、初めて抜かれて、一位を奪われたのに。・・・まるで、感情がないロボットみたいだ。)
「
「え?俺?はい!」
普段は三位以下の楠木が、次に呼ばれていた。
クラスでは今だ上位であるには違いないのだが、一学期までの重徳は、何処かに行ってしまったようだ。
(シゲノリ、どうしたんだろうな。まあいいや!僕の願望が実現したんだ!『引き寄せの法則』を教えてくれた
◇◇◇
『夏休みだョ!全員参加で肝試し、ダァ~!』のイベントに向けて、準備が始まった。
肝試しの会場は、高校の近くにある工場街だ。
ここには住宅はなく、しかもほとんどがすでに廃業した会社の工場だ。
本来ならば、取り壊しをしなければならないのだが、資金不足で、固定資産税の支払いが関の山だ。
近くに店もなければ、駐車場などもない。
戦後の昭和時代の高度経済成長を支えてきた工場であったが、ハードワーク故の事故が絶えなかった地域である。
車のスクラップ工場では、誤って従業員がスクラップされてしまったり、コンクリートの会社では、コンクリートの中から女性の死体が出てきたり、会社の金庫の中から女性の白骨死体が出てきたりした地域だ。
周辺住民は気味悪がって、近寄ろうとはしない。
ましてや夜間は、人っ子一人居なくなる地域だ。
受付係と案内係は、どこに椅子を持っていくか、地図にしるしをつけた。
お化けに扮する係は、学校のパソコン室を借りて、どこで待機するか、などの綿密な作戦を、グーグルアースを見ながら決めて、その地図に記入した。
『夏休みだョ!全員参加で肝試し、ダァ~!』当日。
「シゲノリとペアだなんて、ラッキーだわ!よろしくね!」
美人の梶山美津子がニコニコしながら言った。
「よろしくお願いします。」
栗林重徳が仮面の笑顔で言った。
魁斗は重徳が羨ましかったが、自分にファンレターをくれた美咲とコミュニケーションする機会ではあると思った。
重徳は、肝試しなんて面倒くさいだけだが、参加しないで家に居るよりも外出した方がマシなので出席しただけだった。
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