犠牲者の呪術 第3章

 自宅に帰った裕太ゆうたは、兄の美佐男みさおと、ソーシャルメディアのアカウントの『わんだほーえくすぺりえんす』の企画について、話し合おうとしていた。


 「シゲノリがまた数学のテストで満点取って、クラスで一位だったんだ!」

 

 「そのシゲノリって奴、なんか不気味じゃねーか?数学で満点ってだけで、ホラーだよ。ところで、お前の友達が満点取ったからって、お前が満点取ったわけじゃないんだからな!」


 美佐男は、裕太が重徳しげのりのことを自慢気に話しているのは、自分と同一視して気分を上げたいからだ、と判断した。

 また、裕太自身と他人の区別をハッキリさせる必要があることに気づかせ、かつ舞い上がってしまいがちな弟のクセに釘を刺した。


 「シゲノリは、不気味な奴なんかじゃないよ!僕の親友を悪く言うのやめろよ!あいつはずば抜けて頭がイイのさ。・・・僕はシゲノリに憧れてる。」


 「ほうほう、それはわるぅございました。」


 「今日も一緒に帰って来たんだ。・・・だけど、あいつさ・・・僕とは幼稚園来の友達なのに、自分の事、僕から聞かないと全然喋らないし、聞いたとしても、当たり障りのない返事しか返って来ないんだよ。それから相変わらず、僕の事を、全然聞いてきてくれないんだ。会話してて淋しくなる時があるよ。」


 「だから、そーゆーところが不気味だっつってんの!彼は他人に関心がないんだよ。僕はそういう冷たくて他人に無関心系、嫌いだな。人に対して心を開いて、楽しく遊んでくれるような奴じゃないと。人間、心が温かくなけりゃ。」


 「なんでシゲノリの悪口ばっかり言うんだよ!」


 「だって、なんか、不気味だからさ。数学なんて、宇宙人が得意な科目だろ?」


 「・・・兄ちゃん、意味わかんないよ。シゲノリは医者になるために、必死に努力して、いい点数を取るんだって言ってたぞ。人を救いたいって。」


 「そんなこと、本当に思っている奴が真面目くさって言うか?なんか変じゃねーかと思わねーの?僕はやっぱり、シゲノリって奴とは、高校まででサヨナラした方がいいと思うぜ、兄貴として。」


 「シゲノリは、数学では満点もらうのに、兄ちゃんからは零点なんだな。」


 「そういうこと。人間力が零点だ。」


 「厳しい先生だな!」


 「厳しいんじゃないよ。『人間味に欠ける』エリートだから危険だって言ってんだ。あとは、僕の勘。なんか、ヤバイ匂いが、プンプンするんだよな、お前の話聞いてんと。」


 「へえ~。どういうところが、なんだろう・・・。」


 「お前はまだ、そんなこと、わからなくていいんだよ。シゲノリと付き合ってりゃさ、いずれ、解る時が来るよ。」

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