平日の公園

 平日の公園は初めて来た。休日の公園とすこしだけ雰囲気の違う感じだった。

伯爵に会えるかもしれないという期待と、彼は大丈夫だったんだろうかという不安な気持ちで、公園の端から端まで探し回ったが伯爵の姿はなかった。

「昼ぐらいにタコスをよく食べにくるっていう情報だけじゃ、やっぱ会えないか」とつぶやく。

「あら?モモじゃない?」聞きなれた声に話しかけられた。

「レオ!!」レオは今日も派手な格好と派手なメイクをしていた。そんな彼の隣にはゴールデンレトリーバー。

「レオって、犬飼ってたの?」触りたい。

「そうよ~クインちゃん。かわいいでしょ!撫でてあげると喜ぶわよ~」

クインちゃんの頭をなでると、ゴロンしてお腹を見せてくれた。

「人懐っこい子だね~かわいい~」撫でまわしてやる!

「あーた、仕事は?今日平日よ?」

「今日は開校記念日でなんだよ。それで、公園散歩してるの」

「あんた…散歩ってかんじしないわよ。公園の中走り回ってるじゃない!」

「あれ、見てた…(苦笑)ちょっと、探し物というか人を探してて…」

「もしかして、前に言ってた伯爵?なに、デートの予定でもしたわけ?展開早い~!」レオは一人でキャーキャー言っている。

「いや、実はね…」私は、この間の日曜日に伯爵の体調が悪くなり救急車を呼んだことを話した。

「えぇ!伯爵は大丈夫なのかしら!?それで今日探しに来たってことね!!」

「ま、まぁ…」

「探すより、もっといい方法あるじゃない!」

「え?」

「あーたがよく食べるタコス屋さんのおっちゃんが、伯爵のこと知ってるんでしょ!

!おっちゃんに聞くのよっ!!!やっぱ、恋愛の最初は情報量が大事なのよっ!!!」鼻息が荒い…

「いや、恋愛ってわけじゃ…」強引にレオに引っ張られる、クインは尻尾をふりふりしながら私を見つめてくる。やっぱり、飼い主に似るのだろうか?



§  §  §

 「あれ、平日に来るとは珍しい!アボカドたっぷりね~」慣れた手つきでおっちゃんはタコスを作り始めそうになった。

「こんにちわぁ~、アタシは彼女の友達のレオっていうんだけど、今日は聞きたいことがあってきたのよん~」レオがぐいぐいおっちゃんに話しかける。そして、友達って言われて少し嬉しい…

「友達と一緒に来るとか初めてじゃないか!がははははははは友達いないと思ってたわ!がははは!!」ぼっちに見られてた…レオはどんどん質問をする

「この子が、この前の日曜日に体調不良の人を助けたらしいじゃない?その人、最近公園来てるのかしら?」

「あー!あの人ね!元気になって何回か公園来てるよ!うちのタコスも昨日食べていったわ!自分を助けてくれた人に礼がしたいって言ってたから、毎週日曜日の昼頃によく来るぜ~って伝えたよ!」おっちゃん有能かよ。

「まぁ!体調良くなったのね!よかったわねモモ!伯爵もあーたのこと探してるとかもうこれは、デートの約束ねっ!!」レオは体をくねらせながら大興奮である。

「元気そうにしてるなら良かった~。」デート云々は無視した。

「時に、お嬢さんたち」おっちゃんが凛々しく話し始めた。

「その伯爵と呼んでいる男性について、俺にもっと聞きたいことがあるんだろ?」

「はい!お嬢さんたちはそのつもりで来ました!!!」レオはノリノリである。

「ちょっと待ってろ、今休憩入るから、近くのベンチでも座っててくれ。(キリッ)」



§   §   §


 「タコス屋の人、アタシのこと『お嬢さん』って言ったわ!!!わかってるわ!!」レオは興奮しまくりである。私はずっと、クインをなでなでしていた。

「遅くなっちまって申し訳ねぇ!とりあえず、タコス!サービスだ!」おっちゃんは、タコスを作ってきてくれたらしい。

「おっちゃん、ありがとう!アボカドたっぷり~おいひ~」やっぱおいしい〜

「あら、気が利くじゃない!紳士ね♡」

「すまん、ワンちゃんには何も用意してこなかった…」クインは寂しそうだ


 「さて、モモさんの恋路を応援するために、俺に聞きたいことを何でも聞いてくれ!」

「いやっ…恋路ではないんです。レオが勝手に盛り上がってるだけで…」

「モモは黙ってなさい!あたしが聞いてあげるから!まずは名前!」

「知らん!」

「職業!」

「知らん!でもいつも1区方面からくるし、お高いスーツ着てるからお堅い職業だと思うぜ。」

「ちょっと!モモ玉の輿じゃない!!!」

「レオ…気が早すぎるって…それに、好きなわけじゃないから!」

「私も知りたいのよ!だから聞いてるの!ハイ次!彼はよく公園に来て何してるの?」 

「うちのタコスを昼に食べた後は、新聞読んだりしてるなぁ。あー、夜も公園に来るかな。夜市で晩御飯テイクアウトしてるところとか見たぜ」

「ふむふむ、お堅い職業でご飯は買って食べることが多いのね。」レオは考え込む

「アタシが思うに、彼女はいないわね!」

「俺もそう思うぞ、既婚者でもないと思う。指輪はしてないし。」二人はどんどん話を進めていく、もはや自分たちが探偵ごっこをしたいだけなのかもしれない。

「あの…私全然付き合いたいとか、そういうのではなく…体調大丈夫かなっていうだけで(苦笑)」

「「はぁ…」」おっちゃんとレオがため息をつく。

「ももさん、交友関係をひろげるチャンスよ?いいじゃないの」おっちゃんに言われると、たしかにそう思う。

「名前も何も知らない、相手と仲良くなって~それで恋に落ちちゃったりして~それで~」レオの暴走妄想は止まらない。

「ま、今度の日曜日にとりあえず会ってみればいいじゃないか!相手はお礼がしたいって言ってたし!」

「そうしてみる…けど…2人が盛り上がるようなことはないからね!!きっと!!」念を押しておく。でも、伯爵の本名は知りたいなと思っていた。





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