日曜日

 休日の朝はすっきりと目が覚めることができる。仕事のある日は朝起きるのもつらいし、ベッドから出るのも嫌になるくらいだ。せっかくの休みだし、また公園でもぶらついてみようかな。


 大都市ヴィンスクの町並みは風変りだ。なぜならここは多民族が共存する街だからである。様々な民族の文化が入り交じり、町並みはどこへ行っても異国を感じさせる。自分の家から、公園までの間に様々な市場があるのも魅力だ。ヴィンスクには市場も多い。


 市場を抜けるとすぐに公園だ。普段運動もあまりしていないので、公園の中をぶらつくことにした。公園とはいえど侮ってはいけない。様々な露店が立ち並んでいる。

見たことない食べ物もあるので今度挑戦してみようと思う。


 少し歩くと公園の中心にある噴水の近くまできた。噴水を背にギターを弾く青年や、ヨガを楽しむキラキラ女子、噴水で遊んでいる子ども。ヴィンスクは今日も平和だ。


 ベンチに座り、読書しながら日光浴をする。太陽の光で元気をチャージって本当なんだなぁ。水筒に入れてきたアイスティーを一口飲む。生き返るなぁ。もうこの時が永遠に続けばいいのに!!月曜から仕事行きたくない!!!あぁ…お腹すいたな。気が付けばもう昼時だった。



§    §    §

「こんにちわ、おっちゃん。」いつものタコス屋のおっちゃんに話しかける。

「よぉ!先週ぶりだな!先週の日曜も会ったな!」

「覚えててくれてるなんて嬉しいです!毎週の日課にしようと思って…」

「おう!うちのタコスを食べることも日課にしてくれ!いつも通りアボカドたっぷりだろ?」

「よろしくお願いします~。」

お店の人とやり取りが増えるとなんだかうれしい。


 先週も座ったベンチでタコスを頬張る。タコスは食べ方にコツがある。地面と平行に食べると具材が落ちない。落ちたとしても、おっちゃんは紙皿をつけてくれるから大丈夫なんだけどね。やっぱおいしいなぁ~、タコミートがスパイシーで家では出せない味なんだよなぁ………あっ…


 伯爵だ。先週と同じベンチに座っているが先週とは違うスーツだ。顔はさらに青白い。タコスは食べていない。

ふむ、彼の定位置はあそこなのね。ってか、先週より青白いとか大丈夫かしら。あら、膝に両肘をついて何か考え事してる…?あ、顔上げた。えっ!?もっと青白くなってない!?大丈夫!?

伯爵は、そのままベンチに横になってしまった。なんか、昼寝してるだけじゃなさそう…ちょっと近くを通るふりをして様子を見てみよう…


 近くを通ると、明らかに具合が悪そうだ。

 「あの、体調悪そうですけれどお手伝いできることありませんか?」思わず声をかけてしまった。やはり、顔は青白いし…返事も返ってこない。息はしてるけど苦しそうだし…もう一度聞いてみる。

「動けますか?」反応はない。携帯をとりだし救急車を呼ぶことにした。

「救急です、ヴィンスク2区にある公園で、人が倒れています。顔は青ざめていて、呼吸していますが、反応が返ってきません。とても苦しそうにしています。年齢は、30代前半だと思います。私の名前は、百々もも・ルマルシャルです。連絡先は~」人生で初めて救急車呼んだ…その間も伯爵はずっと具合が悪そうだ。

「もう少しで、救急車が来ますからね。」と話しかけてみるが、反応はない。


 しばらくして、救急車が到着した。救急隊員は伯爵の体調をみて、脳や心臓などの重大な病気ではないらしく、そのまま救急車で運ばれていった。

「あなたは、たまたま居合わせた人ですか?」救急隊員にきかれた。

「たまたま、向かいのベンチに居たものです。本人とは面識ありません。」

「わかりました。ありがとうございます。」きっとここで、身内だと同乗することになるんだろうな…

そして、救急車は伯爵を乗せてどこかの病院へ行ってしまった。私の周りには、少しだけ人が集まっていた。そら、救急車来るんだもん驚くよね。

「大丈夫か、あのあんちゃん。」タコス屋のおっちゃんが話しかけてきた。

「わからない。おっちゃん知り合いなの?」

「よく昼時になるとうちのタコス食べてるなあ。最近顔色悪いし、元気ないの気にしてたんだけどなんか病気だったのかな。」へぇ、昼時。タコス。

「はやく元気になるといいね。彼」



 伯爵は大丈夫だったのだろうか。昼時になるとタコスを食べているらしいから、また公園に行ってみよう。そういえば今週の金曜日は開校記念日で学校が休みだった。

伯爵の体調が治っていれば、また会えるかな…なんて期待しながら、布団に入った。





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