2日目―2



彼がおびえているのは、誰の目から見ていても明らかだった、

なぜなら、全身から汗が噴き出しており、足が小刻みに動いていたからだ。


しかし、前の2人はうっそうと茂る木々の間を見るのに夢中であり、こちらの様子に気づかなかった。



「おい、なんやあれ」

燐がそう叫ぶのを聞いて、はっとっ我に返った。


燐が言った方を見ると、ひとつの光が森の暗がりの中、ぼんやりと浮かんでいた。


「谷川さん、あれを見たことがありますか?」

優斗がおもむろにそういった。


「あ、ああ、ある、あるよ」

谷川さんは、しどろもどろにそう答えた。


すると、優斗は

「なるほど...」

と言って黙って考え込んでしまった。


「おい優斗、そんな悠長に構えてる暇あらへんで!」

燐が、小声で叫ぶ。


「うん、わかった」

ようやく優斗が立ち上がったので、全員急ぎ足でコテージへ向かった。



***


「あら、お帰りなさい。どうしたの~そんなに息を切らして」


管理人さんのほんわかした声で、ようやく安全な場所に着いたのだと確信した

僕たちは、笑いあえるほどまで精神疲労が回復した。


しかし、谷川さんはそうでもないようで、


「少し部屋で休んでくるよ」


と言って自分の部屋へと向かっていった。


「谷川さん、ちょっとやばいんやないか?」


燐が心配そうな声で優斗に言った。


「そうだね精神的に結構まいっているんじゃないかな。まぁ、でも今はそっとしておくのがいいんじゃないかな」

と優斗が言った。


「大丈夫かしらね~」


管理人さんも、谷川さんの様子を見て心配そうに言った。


***


太陽が沈みかけ、きれいな夕焼けになったころ、コテージの前の広場のような場所には、谷川さんを除く、8人が集まっていた。


「は~い、それじゃあ、焼肉を始めたいと思いま~す」


管理人さんもといひのきさんの掛け声でバーべキューが始まった。


「やぁ、君たち今日はなにをしていたんだい」


僕らのもとにやってくるなりそう聞いたのは、記者の岡西さんだ。


「今日ですか?僕たちは今はいないですけど谷川さんと一緒に森の中で、シカの撮影をしていましたよ」

僕がそう答えると、


「へぇ、そりゃ大層いい運動になっただろうね」


と言って彼女は笑った。


「ええ、まあそうですね」


と言って僕もつられて笑った。


「おーい、道意琉~こっちにこいよ。望月さんの焼く肉、滅茶苦茶うまいぞ!」


優斗が望月さんが焼く肉をもってこちらに手招きしていた。


SPの人が肉を焼くってなかなかシュールな光景だなと思いつつも、岡西さんに断りを入れて彼らのもとへ向かった。


「にしても、ここはなかなかいいところだな。お前たちも招待状をもらって

此処に来たのか?」


そう望月さんに聞かれ僕たちは戸惑った。


「招待状って何ですか?」


と優斗が問うと、


「ん?お前ら招待状もらってないのか?なら、どうしてここへ?」


と望月さんは不思議そうにしている。


「俺らは、インターネットでここの情報を見つけて応募してきたんや」


燐がそう答える。


「なるほど、俺たちは、差出人は書かれていない招待状をもらってここに来たんだ」


そう彼が言う。


?望月さんたちだけじゃないんですか?」


「ああ、ここに泊まるお前ら以外の全員がその招待状を受け取っている」


「そうなんか。でも、なんでやろなぁ」


確かにそうだ、なぜ彼らは招待状を受け取ったのだろうか?

それもの...


その疑問を胸に抱いたままBBQは進行していった。


「谷川さん全然こーへんなぁ」


「そうだね、今は寝てるんじゃない?」


優斗が軽い調子でそういった。


「谷川さん、たしかになにもたべないのはまずいわねぇ~。少し料理を持っていくわ~」


檜さんがそういって料理をとりわけ谷川さんのもとへ行った。


「彼どうしたんだろうね」


そう話しかけてきたのは神明さんだ。


「医者として、やはり気になりますか?」


僕がそう尋ねると、彼女は笑って


「いや、医者としてというより、人として気になるね。森に入って帰ってきたらあの怯えようなのだから。何があったんだってね」


「まぁ、確かにそうですね」


「君たちは一緒にいたんだろう?何があったかわからないのかい?」


「まぁ、最も怪しいものと言えば、帰る途中に見た一つの光くらいですけど、

たかだか一つの光になぜそこまでおびえてるんだっていう疑問もありまして...」


「ふ~ん、何かトラウマがあったと考えた方がいいかもね」


「そうですね」


彼女と話していると、谷川さんのもとへ行っていた檜さんが暗い顔をして帰ってきた。



「どうしたんですか」


優斗がそう尋ねると、


「谷川さん、だいぶ弱っているみたいで、話しかけても『くるな!来ないでれ!』っていうばかりで、最後は、ご飯をとびらの前に置いてきたんですけど、『今すぐ離れてくれ』って言われて帰ってきたところです」


と、彼女は言った。


「まぁ、あいつも明日になったらましになってんじゃねぇか?」


と、望月さんが言う。


「そうですね!はいそれじゃあ~皆さんそろそろ時間も遅くなってきましたので~

部屋に戻って寝ましょうか~」


ふと、腕時計を見ると、すでに23時を過ぎていた。


皆も、続々とコテージの中へ移動していたので、僕も、自分の部屋へと戻って、

眠った。

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