第856話 健太郎との連携

 ボールを持った健太郎に、ひとりマークにつく。いかにも勉強ができますと言った感じの真面目君だ。

 その真面目君の後ろからさらにふたりが健太郎をマークしようと近づいている。

 そのふたりが合流する前に、健太郎は動いた。

 なんかサッカー経験者がやるようなテクニックを使って真面目君を抜き、そのままドリブルで相手陣地を突き進む。

「清水! お前……」

「なんだと!?」

 高木と長岩は健太郎のプレーを見て驚いている。かくいう俺も同じなんだけど一応足だけは動かしている。

 というか健太郎が活躍したら女子たちの声援がすごい。彼女がいようと風見高校ナンバーワンイケメンの人気は凄まじいな。

「くっ、止まれ!」

「イケメンがっ!」

「真人!」

 ふたりがマークにつく前に、健太郎は俺へとパスを出し、俺はなんとかボールを受け取る。

 俺も負けじと運動部に所属してそうな男子をひとり抜いて健太郎にパスを出す。

 というか健太郎……すごいオフェンス力だ。もしかして、あいつらから教わったのはこれか!?

 俺が徹底してディフェンスを鍛えたのとは逆だな。

 一体どれほどの特訓をしたらこれだけの突破力が身につくのだろうか。いや、長岩がいないから俺たちでも十分通用しているのかもしれないが。

「これ以上好きにさせるか!」

 後ろから長岩の声が聞こえてきた。見ると俺たちに向かって全速力で走っている。

 その長岩の後ろには高木もいる。

 長岩はボールを持っている健太郎に向かい、健太郎を追い越し立ちはだかる。

「真人!」

 さすがの突破力でも長岩相手には通用しないとふんだ健太郎はボールを浮かせたパスを俺に出した。

 これは……もうひとつの特訓を活かせるチャンス!

 俺は健太郎のパスを胸で受け止め、そのままリフティングを始める。

 膝、足の甲、インサイドを使ったリフティングを繰り返していると長岩が俺へと向かってくる。

「なにリフティングしてんだ! なめんじゃねぇ!」

 俺はなんとか長岩を躱し、リフティングを続け、高木を探す。

 長岩相手だともう持ちこたえられない。高木、高木……。

 いた! ゴール近くだ!

「高木!」

 俺はまたかろうじて長岩を躱し、高木目掛けてボールを蹴り上げる。

 どれぐらいの力で蹴ればいいのかあまりわかっていなかったが、奇跡的に高木の頭上近くに落下しそうだ。

「お、らぁ!」

 高木はジャンプし、ヘディングシュート。見事相手のゴールに入った。

 シュートが決まると、また大きな歓声が上がった。

「やったな高木!」

「あぁ、ナイスだ中筋!」

 俺は高木とハイタッチをし、こちらに来ていた健太郎ともハイタッチをした。

「清水もすげーな! あんなにサッカーできたのかよ!」

「僕も真人と同じで特訓しただけだよ」

「健太郎は俺とは逆でオフェンスを特訓したんだろ?」

「うん。特訓に付き合ってくれた彼が、サッカー部ではフォワードをやってたからね」

 やっぱりそうか。

 健太郎はもちろん、俺も長岩以外ならなんとか対処できる。

 残り時間五分。もしかしたら逆転できるかもしれないな。

「中筋、清水。お前らの力、アテにしてるぜ! 勝とうな」

「おう!」

「うん!」

 俺たちのプレー、そして高木の同点ゴールで士気が高まっている。

 この雰囲気をそのままに、必ず逆転してみせる!

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