第851話 動画で観戦
「え、ちょっと、相手は真人の所からめっちゃ攻めてるよね!?」
動画を見ていたら、確かにちぃちゃんの言ったように真人がいる所から、相手のクラスのサッカー部らしき人が攻めてる。明らかに真人が狙われてる!
真人が抜かれても真人のクラスのサッカー部の人がフォローに入ったり、キーパーの泉池さんがセーブしたりして得点は阻止してるけど、なんで真人ばかり狙うのかな?
「お待たせしましたー……って、何見てるんですか?」
私たちが動画に集中していると、望緒さんがケーキを持ってきてくれた。
「ああ望緒。さっき風見で行われた、真人の球技大会の動画を見ていたのよ」
「え? 真人君の試合……ですか?」
お姉ちゃんが望緒さんに動画の経緯を説明して、店内を確認すると望緒さんに「よかったら望緒も見る?」と言っていた。どうやら今の時間帯、お客さんはほとんどいないみたい。
望緒さんは「じゃあ、失礼します」と言って、ちぃちゃんの隣に座った。そして望緒さんが最初に見たシーンは、真人がまた抜かれてしまうシーンだった。
「うわ、真人君あっさり抜かされちゃってる。ボール持ってる子ってサッカー部ですか?」
「そうね。莉子……私の友達も言ってるから間違いないでしょうね」
「だとしても、どうして真人ばかり狙うんだろ?」
一宮さんたちが解説してくれているけど、単純にあの人が真人のいる所から攻めるのを得意としているのかもしれないけど……。
「でも、だとしたらどうして味方のサッカー部と思しきあの男子は、フォローに入らずに真人の後ろにいるのかしら?」
お姉ちゃんの言うように、真人と一緒にあの人をマークしたら、ボールを奪える確率は絶対に上がるはずなのに、それをしようともしないでずっと真人の後ろにいる。なんでなの?
「……あのふたり、もしかして真人を陥れようとしてるとか?」
「「「え?」」」
ちぃちゃんの一言に、私たち三人はちぃちゃんを見る。するとちぃちゃんは難しい顔をして画面をじっと見ていた。
いつも鋭いちぃちゃんが言うんだから、そうなのかもしれない。
「どういうこと千佳?」
「真人は風見高校一有名な男子生徒と言われています。それに、杏子センパイや茜センパイはもちろん、真人を神様って言ってる後輩三人も可愛いし、真人の周りには美少女が多いんですよ」
「……」
私もそれはわかってるけど、複雑な気分になるから頷けなかった。
「そんな人気のある真人をひがんで、自分たちの得意なサッカーで真人のカッコ悪い所を見せて、自分たちに女子の人気を集めようとして真人を利用してるんだと思いますよ」
真人の人気を奪おうとクラスの枠を超えて協力関係を結んだってこと? そう考えると、真人が抜かれてからフォローに入るのもちょっと納得ができるかも。
私が画面に視線を戻すと、香織ちゃんの声も聞こえてくる。香織ちゃんも応援に来たんだ。
「なるほどね。真人は人気なんて気にしないけど、色んな意味で目立つから、その真人に恥をかかせて自分たちが凄いんだとアピールするのに義弟を利用してるってわけね」
お姉ちゃんの話を聞きながら、私は画面の真人を見守る。あれ?
「真人、少しずつ止められるようになってきてる……?」
最初はすぐに抜かされていたのに、今はしっかりとサッカー部の人を止めている。
「ホントだ! すごいじゃん真人」
「そういえば、真人君って特訓してたんだよね? その成果が出てきたとか?」
「きっとそうね」
修斗君との練習の成果もだけど、真人は相手の動きに慣れてきたからなのかもしれない。
私はさっきよりも真剣に画面を見ていると、またサッカー部の人と一対一になっていた。
だけど今度はさっきよりもしっかりと止めていて、相手の人は攻めあぐねている。
そして一瞬の隙をついて、ついに真人がボールを奪った。
「す、すごい! すごいよ真人!」
サッカー部の人からボールを奪って、ドリブルもして、相手の人を抜いて……か、かっこいい!
「あ、でもあいつが追いついてきた! 真人どーすんの!?」
いつの間にかちぃちゃんも観戦に熱が入っていた。
「え、うそっ!」
真人がサッカー部の人に追いつかれそうになった瞬間の動きは本当に驚いた。だって……なんの前触れもなく後ろの、同じクラスのサッカー部の人にパスしたんだから。
「かっこいい! かっこいいよ真人ぉ!」
プロの人じゃないとまずやらなさそうなことをやっている旦那様を見て、かっこいいと思わない人はいない。
本当にすごくって、かっこよくて惚れ直しちゃった!
真人からパスを受けたサッカー部の人は、そのまま個人技でボールをキープして、シュートも決めて真人のクラスが勝った。
お姉ちゃんたちも私と一緒みたいで、お店の中だというのを忘れて大盛り上がりだった。
他のお客さんが少なかったのはよかったけど、さすがにお義兄さんに少し注意されてしまった。
それから望緒さんは少しだけバツが悪そうにしながら仕事に戻っていった。
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