第849話 次はドゥー・ボヌールへ

 リズムゲームを四回ほどプレイして、ちょっと早めの昼食を軽めに済ませ、私たちは食後のデザートを食べたくてドゥー・ボヌールにやってきた。

 ここに来るまでのあいだ、ちぃちゃんはあのリズムゲームの研究をネットやSNS、動画でしていて、私も興味があったので一緒に見せてもらった。

 動画を見て、私もやってみたいと思ってしまったから、今度真人と一緒に行ってやってみようかな?

 リズムゲームの話題もそうだけど、もうひとつ話題の中心になっていたものがあって、それは風見高校の球技大会の話題だった。

 もうお昼になっているから、真人やみんなは一試合はしていると思うけど、誰からも結果が送られてこないからどうなっているのかがわからない。

 真人たち二年生男子の試合はお姉ちゃん経由で莉子さんから動画が送られてくることになっているから、真人もそれがわかってるから結果を送ってこないんだと思う。私に動画を少しでも楽しんで見てほしいからだと思う。

「いらっしゃいま……おぉ、千佳、綾奈ちゃん」

 ドゥー・ボヌールに入り、まず最初に私たちを見つけたのは拓斗さんだった。入口のすぐそばにいて、もしかしたら今からお仕事なのかな?

「あれ? 今日って平日だよな?」

 拓斗さんは月曜日のお昼に私たちがここに来たことを不思議に思っているようで、顎に手をやり首を傾げている。どうやら昨日の体育祭は知らなかったみたい。

 ちぃちゃんが体育祭のことを話すと拓斗さんは手をポンと叩いて納得していた。

「拓斗君おはよう。早く厨房に行かないと店長が怒るんじゃない?」

 ここで望緒みおさんがやってきて拓斗さんに声をかけてきて、拓斗さんも望緒さんを見て「あ、望緒さん。おはようございます」と挨拶をしていた。

 ホワイトデーにお付き合いを始めて、もう二ヶ月半になるけど拓斗さんは相変わらず望緒さんに敬語を使っている。

 今が仕事中だから、公私混同は避けて今までどおりの対応をしているだけなのか、それともお付き合いをしている今も、プライベートは変わらずなのかはわからない。望緒さんが年上だし、拓斗さんを引っ張っていってる感じがするし……。

 私が望緒さん拓斗さんカップルの普段の様子を想像していると、拓斗さんが厨房に入っていったのを確認した望緒さんが話しかけてきた。

「さっきの話が聞こえてきたけど、ふたりは昨日体育祭だったんだね」

「はい。昨日もこの夫婦がめちゃくちゃ目立ってましたよ」

 自然と昨日の体育祭を思い出していたけど……うん。すごく目立っていたよね。

 でもあれだけ目立ったのは乃愛ちゃんの実況とお姉ちゃんが真人を甘やかしたのも原因な気がするけど。

「なにそれすっごく気になる!」

 望緒さんも興味を持ってしまって、詳しく聞きたそうに私を見ている。

 そこへ私服姿のお姉ちゃんがやって来た。

「望緒。その気持ちはわかるけど、先にふたりを席に案内してあげて」

「あ、お姉ちゃん」

「麻里奈さんこんにちは」

「ええ」

 私たちがここに来て、入口近くでけっこう話し込んじゃった。店内にある時計を見ると、五分近く経っていた。

「すみません麻里奈さん。ではこちらにどうぞ」

「「はい」」

「私もあとでふたりの席に行くわね。それから、今はピークタイムじゃないから、望緒も時間を見つけて来なさい。昨日のこと、教えてあげるから」

「は、はい! ありがとうございます麻里奈さん」

 お姉ちゃんは嬉しそうに言っていて、望緒さんも笑顔になっていた。

 昨日のことはちょっとだけ恥ずかしい。特別プログラムのところが。

 奥の方の席に案内された私たち。望緒さんはちぃちゃんの注文も取らずに離れていった。

 どうやらちぃちゃんのファーストオーダーも皆さん知っているみたいで、数分後に私のモンブランとちぃちゃんのいちごのミルクレープを持ってきてくれた。

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