第847話 大所帯での昼食
午前中の全試合が終わり、昼食の時間となった。
俺は自分のクラスに戻って弁当を食べることをみんなに伝えると、みんなも一緒についてきた。
それにしても、ちょっと大人数だな。
ちなみにメンバーは二年が俺と一哉、健太郎と香織さん。三年が茜と杏子姉ぇと、まさかの部長。そして一年が一宮さんたち三人の合計十人だ。
ゴールデンウィークにカラオケに行った人数は今よりも多いけど、それは綾奈たち学校が違う人たちがいたからだけど、まさか同じ学校のみんなでここまでの人数になるとはちょっと驚きだ。
部長は最初遠慮していたのだが、茜と杏子姉ぇが押し切った。
俺たちのクラスに着くと、クラスメイトはほとんどいなかったので、机を五つくっつけて、一哉たちは自分の、違う学年のみんなは空いていた椅子を借りて座り、弁当箱を机に置く。
「東雲さん。あなたそれだけ食べて、このあとの試合は大丈夫なの?」
部長がちょっと引き気味に言ったのも無理はない。
茜が持ってきた弁当箱は二段式だ。……ただし重箱のだけど。
あれくらいの大きさの重箱は、昨日俺と健太郎は見ているけど、二段とはいえそれをひとりで平らげてしまう茜の胃袋はマジでブラックホールなんじゃないかとたまに思う時がある。
それでいてあの細さだもんなぁ。栄養もほとんどブラックホールに吸い込まれてるんじゃないかって思ってしまう。
「ん? あぁ、大丈夫大丈夫!」
「部長。茜はいつもこんな感じッスよ」
部長は「そ、そうなのね……」と言ってゆっくり茜の重箱から目を離した。うん。わかります部長。
弁当箱を開け、みんなで「いただきます」を言って卵焼きを箸で掴もうとした直前、杏子姉ぇが俺の弁当を見て言った。
「マサ、今日も良子叔母さんが作ったお弁当じゃん」
新学期が始まってからは、自分の弁当は自分で作るようになったが、サッカーの特訓をする間はまた母さんに弁当を作ってもらってるんだが、当然そのことは部長と一年トリオ以外は知っている。
「明日からはまた自分で作るよ」
「え? 中筋君、お弁当自分で作っているの?」
そのことを知らない四人は驚いていた。
「そうですよ」
「すごっ! 真人神様、なんでもできるんですね!」
「なんでもはできないよ。料理もまだまだ特訓中だし」
『真人神様』はスルーしておこう。今注意してもそのうちまた言いそうだし。
「綾奈さんとの将来のために頑張ってるんだもんな、真人は」
「まぁな」
「西蓮寺先輩との将来のため……ですか?」
一年生三人組と部長にまたしても頭上にクエスチョンマークが見えたので、俺は詳しく話した。
家事は綾奈と一緒に暮らしはじめた時に綾奈に任せっきりにしないように、料理も一緒に作りたいし、マジで何かのお店を開いた時に食べ物を扱う店でもいいように今から色々作れるようになるために。
サッカーの猛特訓も、今日坂井先生に動画を撮られ、麻里姉ぇ経由で綾奈も見ることになるから、ちょっとでも活躍できるようにしようと思ったからというのも……。
「真人神様が頑張る理由って、本当に西蓮寺先輩のためなんですね」
俺の話を聞いて大島さんが感心したように言った。
そこに杏子姉ぇが補足する。
「マサもだけど、アヤちゃんの頑張る理由のほとんどがマサのためだもんね」
「そ、そうだね」
ケーキ作りも、ダイエットも、他のことも、綾奈は俺のために頑張ってくれているのを知っているから、それを思うとたまらなく嬉しくなる。
「お互いのために頑張るなんて素敵すぎます!」
「こいつらは普段イチャイチャばかりしてめちゃくちゃ依存してるが、それだけじゃないからな」
「多分、真人と綾奈さんの仲の良さを知っている人は、ふたりを理想としている人は多いと思うよ」
親友ふたりがそう言い、俺はちょっと照れてしまった。
というか一哉のやつがこうやってちゃんとフォローするの珍しいな。
「私も、真人神様と西蓮寺先輩が理想のカップルです!」
一宮さんが手を挙げて言い、大島さんと立川さんが「私たちもです!」と、ちょっと食い気味に言った。
そんな後輩女子三人を見て、部長が興味深そうに呟いた。
「みんなに憧れられてる中筋君と西蓮寺さん……どういう感じなのか見てみたいわね」
部長は先月、俺と綾奈が揃っているのを見ているけど、真面目な雰囲気だったからイチャイチャはしてない。だからこそなのかもしれないけど。
「久保田さん、覚悟がいるよ」
「そうそう。マサとアヤちゃん、本当にどこででもイチャイチャするから」
「そ、そうなの……?」
部長は目を見開いて茜と杏子姉ぇを見て、その表情のまま俺を見てきた。
自覚があるからそれについては何も言い返せない。
「というか茜。なんだよ覚悟って」
ただ、茜については突っ込んでもいいだろう。覚悟なんて必要ないんだから。
「真人たちの強烈なイチャイチャを見ても動じない覚悟」
「いや強烈って……」
「真人と綾奈さんは昨日の高崎の体育祭でも凄かったもんね」
「け、健太郎……!」
健太郎が茜をフォローしたことによって、健太郎以外のみんなが昨日の体育祭に興味を持ってしまった。
これだけ興味を持たれたら話さないわけにもいかないので、俺は昨日のことをみんなに話した。
話していて綾奈のことを思い浮かべて、会いたくなってしまった。
綾奈、今何してるのかな……?
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