第842話 後輩からの激励

「あ、真人せんぱーい!」

 離れた場所から俺を呼ぶ後輩女子の声が聞こえてきて、そちらを見ると一宮さんたちがやってきていた。

「あ、マサを神様って呼ぶ子たちだー」

「はい。覚えていてくれて嬉しいです杏子先輩!」

 いや、その覚えられかたでいいの? 俺も最近は呼ばれてないし、三人がそれでいいならいいけど……。

「か、神様……?」

「え? 神様ってどういうことなの杏子さん!?」

 ただ、俺を神様呼びしていたことを知らなかった部長と先生が杏子姉ぇに詳細を求めている。

 まぁ、神様って穏やかじゃないからな。俺だって自然と聞いてると思う。

「え、そのままの意味ですよ」

「だからどうしてそう呼ぶようになったのかを知りたいの!」

 おぉ……部長がこんな風にツッコミを入れるのって珍しいな。

 というか杏子姉ぇ……説明が雑にも程があるだろ。もはや説明になってないし。

「俺が話しますよ」

 俺は部長と先生に一宮さんたちとの出会いから説明した。

「なるほど。一宮さんたちが応援してる中学生の男の子が中筋君を尊敬してるから……」

「そうなんです! 普段はかっこいい修斗君なんですけど、真人先輩と話してる時はワンちゃんみたいって聞いてて」

「そのギャップがいいですよね」

「私たちとしては、真人先輩が西蓮寺先輩と一緒にいるのを見るのももちろんいいのですが、修斗君とのツーショットも見てみたいなと思ってます」

 そういや、三人は俺と修斗が一緒にいるとこって、あの練習試合の時しか見てないよな。

 なんかそういうカップリングを見るような目を向けられているような気もしないでもないんだけど、俺もオタク目線でついつい面識のない女子ふたりとかを街で見かけた時にそういう目で見る時がないとは言えないので何も言うまい。

「それより、真人先輩のクラスの試合はいつからなんですか?」

「第三試合だよ大島さん。もしかして、応援してくれるとか?」

「もちろんですよ」

「第三試合なら、私たちは試合ではないと思うので観戦できます!」

「精一杯応援するので、頑張ってくださいね!」

「う、うん。ありがとう」

 一宮さんたちの熱量にちょっとびっくりしたけど、応援してくれるのなら嬉しいな。

 三人とも可愛いし、もしかしたら応援でクラスの士気も高くなるかもしれないしな。

「ここだけ見るとさ、真人のハーレムだよね」

 茜がとんでもないことを口にした。

「何言ってんだよ茜!」

「だってそうじゃん。美少女三人が真人を取り囲んでるんだから」

「うぐ……」

 それに関しては何一つ否定できない。

 というか坂井先生……まだ動画を撮っている。いい加減、いったん撮影をやめてもいいんじゃないか?

 もしかしてだけどこれも麻里姉ぇに送るつもりか!? それはさすがにヤバいんじゃ……。

 あ、でも麻里姉ぇは『私の義弟は人気者ね』とか言って笑いそうだけど、問題は綾奈だ。これを見たら昨日の体育祭みたいな『拗ね拗ねモード』になるんじゃ……。

「あ、かおちゃん呼んでこようかな?」

「呼ばんでいい!」

 香織さんには申し訳ないけど、今は後々厄介事にしかならなさそうだから……。

「これでひーちゃん先輩とマーちゃんがいたらなぁ」

 それ、完全に綾奈が嫉妬するし拗ねてしまうって。

「坂井先生。ここはマジでカットしてください」

「う~ん……ここも考えておくわね」

 先生はマジで考える素振りを見せてくれたから、カットしてくれることを祈ろう。

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