第816話 選抜の意味
江口さんのアナウンスの直後、聴き慣れた音楽が拡声器から聞こえてきた。
「このイントロ……スタアクのフルスロットル!」
俺が最近ヘビロテしている、綾奈が大好きなアイドルグループ『STAR AXELL』。……そのアッパーチューンのフルスロットル。
ゴールデンウィークにみんなで行ったカラオケ、そこで綾奈と夫婦デュエットした曲だ。
イントロが始まると、入場ゲートから続々とチアガール姿をした女子生徒が、曲のリズムに合わせてポンポンを持った両手を上に挙げて手拍子しながら出てくる。
え? というか……出てくる女の人、全員が美少女と呼べるくらいレベルが高い!
まさか……『選抜』って、そういう意味!?
高崎の二年と三年の選りすぐりの美少女を集めての特別パフォーマンス……確かにこれは男子は喜ぶのは無理もない。
俺は最初『選抜』という言葉を聞いて、運動神経とか、ダンスがうまい人を選出したのかと思っていた。ダンスができるのかはさておき、綾奈も数ヶ月の走り込みで体力もついたしリズム感はピカイチだし。
でもどんな理由にしても綾奈が選ばれるのは必然だ。高崎一の美少女で、運動もできるようになっているのだから。……球技はダメダメみたいだけど。
衣装は白を基調としたものなんだけど、それでもチームごとに色が違う部分もある。ポンポンも一緒だ。
「あ、綾奈、綾奈は……!?」
俺は綾奈を必死に探す。チーム『朱雀』のみんなは赤色のポンポンを持っているから、その人たちの中から少し身を乗り出しながら本気でお嫁さんを探す。
弘樹さんに「真人君すごく必死だな」と言われたけど俺は何も答えずにただ真剣に綾奈を探し続ける。お義父さんにこんな態度をとるのは失礼と思っているけど、早く綾奈のチアガール姿を見たい。今の俺にはそれより優先するのもはなかった。
「いた!」
俺たちのいる場所からちょっと離れたところ……一組の人たちの奥、その前の方に綾奈がいた。
ただ前の方ということもあり、俺たちからは斜め後ろ姿しか見えない。でも……。
「か、かわいい……」
正面から見えなくても、綾奈の可愛さは俺にはバッチリとわかった。
それに顔は見えないが、多分このパフォーマンス限定で髪を束ねているのに使っている、俺が綾奈の誕生日にプレゼントしたシュシュも見えて、ちょっと嬉しさが増した。
ダンスもキレがあるとは言えないが、それでも十分に踊れている。
腕と脚の露出は多いけど、それ以外は露出がないが、綾奈を変な目で見ている奴らはきっといるから落ち着かない。
綾奈のチア姿に見惚れている俺は、ここである疑問が浮かんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます