第812話 ケンチカもイチャイチャ
明奈さんが持ってきた四段重の中身が半分くらいになって、体育祭の話題へ。切り出したのは千夏さんだ。
「それにしても、綾奈ちゃん……大縄跳びは大活躍だったね」
「え? そ、そうですか……?」
綾奈は照れながら俺を見てきたので、俺はにこっと笑って首肯した。
一番最初に引っかかっただけで、あとはミスもしなかったし、加えて久弥のサポートまでして、結果『朱雀』を勝利に導いたんだ。大縄跳びだけで言えば間違いなくMVPの活躍を見せていた。
「私たちも綾奈ちゃんが昔から運動が苦手なのは知ってたけど、体力めっちゃついてない?」
「毎日真人と走ってますからね」
綾奈は胸を張ってドヤった。可愛いなぁもう!
「そんでもすごいのは体力だけで、他のスポーツはからっきしなままだけどね~」
千佳さんが白い歯を見せながらニヤニヤして綾奈の揚げ足を取った。
それを聞いてドヤっていた綾奈が頬を染めながらぷっくりと頬を膨らませて千佳さんを睨んだ。
「も、もう! ちぃちゃん言わないでよぉ!」
きっと千佳さんはゴールデンウィークに女性陣でバスケをやった時のことを思い出して言ったんだろうな。
俺は綾奈がランニング以外のスポーツをちゃんとやってるとこを最後に見たのは中学の時だからな。しかも好きになる前だったからあんまり覚えてない。
だからこそ先日のバスケの動画を見たいのだけど、言ったら綾奈が怒るから絶対に言えないんだよなぁ。
茜や杏子姉ぇとかも動画を撮ってそうだけど足がつくし、綾奈が聞いたらあのふたりは簡単に言いそうだから結局は無理だな。
いつまでも欲しいと思っても叶わないから、ここは気持ちを切り替えるためにも話題を繋げようかな。
「他の競技といえば、千佳さん玉入れではめっちゃ活躍してたよね」
玉入れも午前中に行われ、出場した千佳さんは、三メートルくらいの高さにあるカゴに、玉をポンポンと入れまくって、結果これも『朱雀』が一位となった。
千佳さん、コントロールもめちゃくちゃいいとか、スポーツではマジで万能だよ!
「まぁ、あれはせとかの協力があったからだね」
「楠さん、自分では全然投げてなかったもんね」
俺は玉入れに出場していた楠さんの姿を思い出してちょっとだけ苦笑いをした。
楠さんはカゴ周辺に落ちていた玉をめっちゃ拾っていたんだけど、自分からはマジで投げようとせず、拾った玉をそばにいた千佳さんにどんどん手渡していた。
千佳さんは投げるのに集中、楠さんは拾うのに集中といった友人ふたりの連携プレーが見事にハマった結果だった。
「せとか、本当に運動が苦手だからね」
「楠さんは自分の役割だと思ってそれを
「っ! け、健太郎……あんた……」
健太郎がいきなり千佳さんを褒めるもんだから、不意に褒められた千佳さんは目を見開き、頬が真っ赤に染まった。
健太郎も、脈絡……はあったのかもしれないけど、ほとんど面識のない弘樹さんと明奈さんがいる前でサラッとそんなことが言えるのがすごいな。千佳さんを褒めるのに躊躇がない。
俺も面識ない人の前で綾奈を褒めたりしたことはあるが、やっぱり少なからず緊張はするから、健太郎のこういうところは少し見習った方がいいのかもしれない。
「あ、あんたにはかっこいいところより、可愛いところを見てほしい、というか……」
「僕はいつも千佳は可愛いって思ってるよ」
「あ、ありがと……」
千佳さんの顔が真っ赤になった。普段俺たち夫婦のイチャつきについてツッコミを入れてるのに、今は俺たちより甘々な空気を作っている!
「ちぃちゃんかわいい!」
俺も綾奈に同意なので二、三度首肯する。
「うふふ、千佳ちゃんも綾奈たちに負けてないわね」
「ああ、小さい頃から知ってるからちょっとびっくりした」
「千佳……あんた本当にいい子を見つけて……」
「喜ばしいね。俺たちも安心だ」
弘樹さんたちも千佳さんたちのイチャイチャを見て思い思い感想を口にしていた。
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