第801話 二年生最初のテストの結果は
五月十九日の木曜日。
前日までに中間テストが終わり、今日は順位が張り出される日だ。
二年になって初めてのテスト……サッカーの練習と並行していたし、内容も難しくなっていたので、確実に一年の時よりは順位を下げているとは思うけど、それでも去年の一学期の順位……五十位以下にはなってないだろうという確信はある。
いつもより少し早く学校に着き、結果が張り出されている場所に向かうと、既に一哉と健太郎がそこにいた。
「あ、おはよう真人」
「よう、おはよう」
「おはよう健太郎、一哉」
親友ふたりと軽い挨拶を交わし、俺は順位表に目を向ける。
「見てみろよ。健太郎はさすがだよな」
順位を上から見てるから、俺も一哉の言った意味がすぐにわかった。
順位表の一番上に健太郎の名前があったからだ。
「本当だ。すごいな健太郎!」
学年一位に返り咲いた健太郎に俺は賞賛を送る。
「ありがとう真人。なんだか、ちょっと照れるね」
学校一のイケメンで学年一の成績、オマケに優しく人当たりもいい……完璧超人だな健太郎は。
俺は順位表に視線を戻し、自分の名前を上から順に確認していく。
二十位以内には入っていなかったな。まぁ、わかっていたことだから特に残念とか悔しいとかの感情は湧いてこなかった。
悔しいと思ったのはこの直後だ。
二十二位に『山根一哉』の名前を見つけてしまった。
それを見た瞬間、俺は目を見開いて一哉を見る。すると、一哉はドヤ顔をしながら俺を見ていた。なんか腹立つ。
「一哉お前……!」
中学の頃、俺は一哉よりかなり下の成績で、高校に入った頃は同じくらいになって、綾奈と付き合い出してからは俺の方がかなり上だったのに……今回久しぶりに一哉に負けてしまった。
「いつまでもお前に負けっぱなしなのも嫌だし、サッカーにかまけている今回がチャンスと思って、俺は勉強に一点集中したってわけだ」
「なるほどな……おめでとう一哉」
悔しいという感情はあるが、それでも順位をジャンプアップさせた一哉を祝わないのもダメなので、俺は健太郎と同様に賞賛を送った。
「おう、サンキューな」
そしてまたも順位表を見ると、俺の名前を見つける前にまた友達の名前を見つけてしまった。
「マジか! 香織さんにも負けた!」
香織さんが二十七位……テストの順位で初めて香織さんに負けた。普段なら一哉と一緒かちょっと下くらいなのに。なんで一哉と一緒でこんなに順位を上げているんだ!?
「みんなおはよう。あ、順位めっちゃ上がってる!」
ちょうど香織さんが俺たちのところにやって来て、自分の順位を見て喜んでいる。香織さんも一哉と同様に自分で頑張ったのだろうか?
「おはよう北内さん」
「おはよう。それにしても北内さんもかなり順位上げたな。どうやったんだ?」
一哉が俺の知りたかったことを聞いてくれた。多分健太郎も知りたいはずだ。
「実はね。雛さんにリモートで勉強を教わってたの」
「姉さんに?」
「うん。雛さん、成績はかなり上の方って聞いてたから、わからないところを聞いただけなのに、私の先生まで引き受けてくれてね」
「雛先輩。教えるのも上手いからね」
俺も一年の二学期末テスト前に、図書室にいた雛先輩に勉強を見てもらったことがあったけど、雛先輩の教え方は確かにわかりやすいかった。
なるほどな。雛先輩という秘密兵器のおかげで点数をぐんと伸ばしたわけか。
「となると、俺たちの中では真人が最下位ってわけだ」
「ぐぬぬ……」
順位表で俺の名前を探すと、香織さんよりちょっと下の三十位だった。
「見てろよ! 期末では絶対に一哉と香織さんには負けないからな!」
「おう。その分来週の球技大会で大活躍してくれるのを期待してるぜ」
「あまり期待されてもなぁ……」
毎日練習を続けているけど、本当に活躍できるかはやってみないことにはなんとも言えない。修斗以上の実力の人もいないとも限らないし、ほとんどボールが飛んでこないことだってある。俺の様子を坂井先生が撮影してると思うから緊張してそうだし。
「ま、お前は綾奈さんが絡むといつも以上の力を発揮するだろうし、俺たちはそれに期待するさ」
「え? 山根君。なんで綾奈ちゃんが関係してくるの?」
一哉は香織さんに坂井先生が動画を撮る件を説明した。
「そうなんだ。これは活躍するしかないね真人君!」
「まぁ、頑張るさ」
練習できる日数は今日を入れてあと四日だ。本番までにできるだけ、今以上にボールの扱いに慣れておかないとな。
綾奈に、少しでもかっこいいところを見てもらうために……!
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