第799話 帰宅する義両親
綾奈の部屋ではなくリビングで待つこと一時間と少し。
ソファにお互い腕をくっつけて座り、最初はテレビを見ていたのだけど、綾奈が俺の手を握り、こてんと頭を俺の肩に乗せたり、お互いの頬にキスをし、そこからイチャイチャがエスカレートし、いつもの激しいキス、プラス綾奈の体の色んなところに触れていると、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。
「ただいまー」
明奈さんだ。どうやら義両親が帰ってきたみたいだ。
「あ、綾奈!」
「う、うん!」
俺たちはソファから立ち上がり、服が乱れてないかのチェックを素早く行う。
別に脱いではないし、明奈さんたちも俺たちがいてイチャイチャしていないとは思わないだろうけど、今回はキスと……色々したからな。
ま、万が一乱れていたら失礼だから!
「よし、行こう」
「うん」
二秒ほどでチェックを終え、急いで廊下に出る。
「お母さん、お父さん、おかえりなさい」
「お、おかえりなさい弘樹さん、明奈さん」
「ただいま」
「ただいまー。真人君に「おかえり」って言われるの、なんだか不思議な気分だわ」
明奈さんはにこにこしながら言っている。
「そ、そうですね。俺も、同じ気持ちです」
普段は俺がただいまと言って、明奈さんがおかえりと言ってくれる立場なのに、それが逆転しているんだからな。
「ところで、ふたりともどうしたんだ? 綾奈が帰ってくるのは、確か夜のはずだろう?」
綾奈はお泊まりを早く切り上げるとは思えないし……と、弘樹さんは腕を組んで考えている。
今日がなんの日か知らないわけではないだろうに。もしかすると綾奈が帰ってきたら……つまり夜に明奈さんへの贈り物を渡すと考えていたからか?
「その……母の日の贈り物を持ってきたので、ぜひ明奈さんに受け取ってほしくて」
「まぁ! 本当に!?」
「え、えぇ……」
明奈さんのテンションが一気に上がってびっくりした。
「うふふ、まさか真人君からも貰えるとは思ってなかったから、とっても嬉しいわ!」
「ひ、日頃本当にお世話になってますから。それに夜だと時間的にちょっと非常識かなと思って……」
夜、綾奈がここに帰る時、送ると同時に渡すのも考えなかったわけじゃない。だけどそうなると時間は九時とかになってしまう。
泊まる予定もないのにそんな遅い時間にプレゼントを渡してゆっくり話を……とかはさすがにいかがなものかと思い、日中にしたのだけど……。
「あら、この期に及んでまだそんな遠慮をしてるのかしら? 私たちの息子は」
「そうだな。まだそんな考えを持っていることに少し驚いたよ」
「えぇ……」
どうやら俺の気遣いは逆効果だったみたいだ。
『親しき仲にも礼儀あり』という言葉は、捨て置いた方がいいのかな?
「前にも言ったけど、ここは真人君の家でもあるのだから、家族が家に帰ってくるのに、そんな遠慮はしないでしょ?」
「そ、それはそうですけど……」
「けどじゃないの。家族なんだから、迷惑なんて考えなくていいのよ」
「は、はい……」
そう優しくいい、明奈さんは俺の頭を撫でた。綾奈や麻里姉ぇのと違う、ものすごく優しい撫でかただ。
隣にいる綾奈からはヤキモチ焼いている気配はないからちょっと安心した。やっぱり家族が撫でるのは大丈夫みたいだ。
「さ、廊下で立ち話もなんだから、早くリビングに入りましょ。綾奈と真人君のプレゼント、早く見たいし」
「そうだな。三人とも早く入ろう」
「あ、私お部屋にプレゼント置いてるから取ってくるね」
そのまま階段へ歩いていくのかと思いきや、綾奈は一度俺の腕に抱きつき、俺の二の腕辺りに頬をスリスリしてきた。まるで猫が自分のものにニオイをつけるように。
駆け足で階段へ向かっている綾奈の背中を見ながら、綾奈の可愛すぎる独占主張にしばらくドキドキしっぱなしだった。
綾奈の行動はおふたりもすぐにわかったようで、微笑ましい眼差しで階段へ駆ける娘の背中を見ていた。
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