第777話 女性陣が行った場所は
「そういえば、今日はみんなでどこに行ってたの?」
歩き始めてすぐ、俺は隣で俺と手を繋いで歩く綾奈に聞いていた。あの写真と今の服装から、どこかの大きな施設であるとは思うけど……。
「今日はね、高崎の駅からちょっと離れてる、スポーツができる所に行ってきたんだよ」
「というと……前に香織さんから聞いた、スポーツ施設とゲーセンが一緒になったとこかな?」
綾奈は「正解!」といって笑った。可愛い。
「風見の球技大会と高崎の体育祭が近いからってことで、みんなで体を動かそうって話になって、それで香織がそこに行こって言ってって感じだね」
補足してくれたのは千佳さんだ。
なるほど。だからあの写真に写っていた美奈と茉子はバテバテだったんだな。
「ちなみに何やったの?」
「バスケットだよ」
バスケか。女子の種目がバスケだから、風見の面々のちょっとした特訓みたいな感じかな?
「香織さん……球技大会は卓球がいいって言ってた」
そう言ったのは茉子だ。思い出し苦笑いをしている。
まぁ、香織さんは卓球部だから、自分の得意分野で勝負したいって気持ちはわかる。だけど……。
「球技大会で卓球ってどうなんだ? 一度に試合する人数は最大四人なのに……」
卓球も確かに団体スポーツの部類には入るかもしれないが、クラスで競う競技にはどうしても不向きだ。全員がやるには時間もコートの広さも足りないだろう。
「一試合クラスで十一人で勝ち抜き戦をして、ポイントを取られたら即交代、それで全員倒したら勝ちみたいにすればいいのにって言ってた」
「そ、それなら、まぁ……」
全員試合には出れるからアリ……なのかな?
「というかお義姉ちゃん、バスケは下手だったけどほとんど疲れてないんだよ!」
「み、美奈ちゃん!」
「そりゃ毎日走ってるからな。というか美奈、いらん情報まで言わなくても……」
綾奈もバスケは体育でしかやったことないだろうし、下手なのも無理はないって。
「でも確かに、アヤちゃんあんまり息を切らしてなかったよね~。ドリブルもシュートも全然だったけど」
「き、杏子さん! い、言わないでよ……」
どうやらバスケでは珍プレーを連発したのか、頬を染めて俯いてしまった。
俺は綾奈の手を離し、その手で綾奈の頭を抱いた。
「あ……」
「美奈も杏子姉ぇも、あんまり綾奈をからかうなよ」
「真人……」
「わかってる。これ以上は言わないって。ホントにマサはアヤちゃんのこととなると冗談も通じないんだから」
「……でも、どんな様子だったのかは興味がある」
綾奈がスポーツをしてる場面って、実はほとんど見たことがないんだよな。付き合ってからはほぼランニングだけだし、中学の体育は男女別。小学生の時はさすがに男女一緒に体育を受けた記憶はあるけど、内容までは覚えていない。綾奈に恋心を抱くずっと前だったし。
「ふえっ!?」
俺のまさかの一言に、綾奈が心底驚いた顔をして俺を見た。こんなに目を見開いて俺を見るお嫁さんも珍しい。
「……ま、真人のバカー!」
それから綾奈は、頬を膨らませて自分の頭に触れていた俺の手をどかして、俺の胸をポカポカと叩いてきた。もちろん痛くない。
綾奈に「バカ」って言われたのも久しぶりだな。
今の綾奈、前に言った時みたいに裏切り者って思ってそうだな。
「まったくあんたたちはまたイチャイチャして……でもその動画ならあたしが持ってるよ」
千佳さんはポケットからスマホを取り出した。
千佳さん、撮っててくれてたんだ。これはあとで見れるのかな?
そして綾奈は、まさか親友が動画を回していたことに気づかなかったみたいで、俺の胸を叩いていた手がピタリと止まり、さっきと同じような表情で千佳さんを見ている。
「ちぃちゃん真人に見せたらダメだからね!」
そして即釘を刺す綾奈。そんなに見られたくないんだ……。
これは逆に気になるな。なんとかしてその動画を見れないかな?
……いや、やめとこう。綾奈がまた俺を睨んでいる。
見てしまったら綾奈は本気でへそを曲げてしまう。気になるのは山々だが、見ないのが吉だ。
「わかった。もう言わないから。ごめんね綾奈」
「……約束だよ?」
「うん。約束」
指きりをすると、機嫌を直してくれた綾奈はまた俺と手を繋いでくれた。
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