第759話 球技大会の話

「それはそうと、真人は今度の球技大会では確実に注目されるだろうな」

 一哉が言ったように、うちの高校では五月二十九日の月曜日に球技大会が開催される。種目は男子がサッカーで、女子がバスケだ。

「え? なんでだよ?」

 俺はサッカー部ではないし、体育以外ではやったことないのに、なんで注目されるんだ?

「お前は風見高校一有名な男子生徒だ。そんなヤツに注目が集まらないわけないだろう」

「風見一有名って……それは健太郎じゃないのか?」

 風見高校一のイケメンである健太郎に注目が集まるのなら納得だけど、俺……そんなに有名か?

「だが、有名度で言えばお前の方が確実に上だ。その年で婚約者がいて、その婚約者の綾奈さんは高崎高校一の美少女───」

「あぅ~……」

 綾奈がちょっと困ったような声を出した。まぁ、そう言われたら誰しも困ってしまうよな。

「それに風見高校一の美少女の杏子先輩のいとこで、神だからな」

「それは一宮さんたちしか言ってないし、あの子らももう言ってないだろ!」

 真人神様と言わないでとお願いして以来、普通に先輩としか言われてない。

「でも『真人神様』は一度聞いたら耳から離れないよね~」

「ぐぬぬ……」

 茜の言うことももっともだ。俺だって誰かが神様と呼ばれたら絶対に忘れられない。

 そんな俺たちの話を聞いていた美奈が苦笑いをしている。自分の兄が神様と呼ばれているのは複雑なようだ。俺も妹に知られて複雑だよ。

「とにかく、そんな有名人なお前は嫌でもみんなが見るってわけだ」

「でもなぁ、注目されても活躍はできないって。俺がサッカーできないの、お前も知ってるだろう?」

「特訓すりゃいいじゃないか。誰かに見てもらって」

 他人事だと思って、簡単に言ってくれるな。

「誰かに見てもらえって、そんな都合よく見つかるわけ…………あ」

 いた!

「なになに真人! 誰か心当たりあったの?」

「修斗がサッカー部のエースだった」

「決まりだな」

「でもなぁ、そろそろ総体の時期だろ? 修斗も忙しいと思うぞ?」

 最後の総体だから、修斗もめちゃくちゃ気合い入れてると思うし、そんな中で練習に付き合わせるのも悪いし……。

 俺が修斗に頼むのを躊躇っているのを見て、美奈が口を開いた。

「アイツなら調子いいみたいに言ってたから、ちょっとくらい大丈夫だと思うよ」

「そうなのか?」

「うん。他の人に自分から言ってた」

「さすがみっちゃん。しゅーくんのことよくわかってるね」

「……怒るよ杏子お姉ちゃん」

 美奈が杏子姉ぇを睨みつけた。どうやら冗談でも修斗でイジられるのは嫌みたいだ。

 ……普通に友達やってるんだよな?

 でも、友達じゃなかったら自分から修斗のことを言わないだろうから、美奈と修斗の関係については何も言わないでおこう。

「なら、今夜にでも電話してみるか」

 修斗にサッカーの特訓に付き合ってもらうお願いをしようと決めたところで、ちょうど店員さんが大きなお皿を持って入室してきた。

 お皿には様々なお菓子がいっぱいに入っており、茜が目をキラキラさせながら見ていた。

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