第750話 半年記念の深いイチャイチャ

 綾奈の家で夕飯をご馳走になり、今は綾奈の部屋でふたりでくつろいでいる。

 今まで何度かここで食事をさせてもらったが、今日の献立は今までで一番豪華だった。

 明奈さんに聞くと、俺たちの交際半年を祝って、つい張り切りすぎてしまったらしい。

 しかもそれだけではなく、なんと俺の母さんもここに来て、明奈さんと一緒に作ったそう。

 まさかの両家の母親共同の夕食だった。

「さ、さすがにお腹いっぱいだ……」

「わ、私も……」

 ふたりが作ってくれた夕飯……残すのはもったいなさすぎたので、量が多かったがなんとか胃に収めることができた。

 その結果、マジで満腹状態で苦しい。よく階段を上れたと思う。

 これは胃の中の物を少し消化するまではなしかな……。


 十数分後、ようやく普通に動いても問題ないくらいには消化できたので、ここらで膝枕をしようかな。

「綾奈」

 俺はお嫁さんの名前を呼びながら、あぐらをかいている自分の膝枕をぽんぽんと叩いた。

「う、うん」

 それだけで伝わったようで、綾奈は返事をしてゆっくりと立ち上がった。

 ……ん? 立ち上がった?

 膝枕をするのなら、立ち上がる必要はないよな?

 座る位置を調整して、俺の膝に頭を乗せるだけでいいんだから……。

 俺が顔に出さず、驚きながら綾奈を見ていると、綾奈は俺の正面に立った。

「あ、綾奈?」

「えっと……失礼するね真人」

 それだけ言うと、綾奈は一歩前に進み、足を広げ俺の膝をまたぐようにして立った。

 そして次の瞬間に、綾奈は自分の両膝を折り、俺の膝の上に座り、俺の首の後ろに手を回してきた。

「あ、綾奈!?」

「真人……重くない?」

「お、重くないけど……膝枕するんじゃないの?」

 状況が整理できていなくて、顔がめちゃくちゃ暑いけど、俺は頬が真っ赤になっている綾奈に、どうして自分の膝の上に座ったのかをたずねた。

「今日、朝しかキスしてなかったから……」

「た、確かに……」

 毎日、早朝ランニングの時にキスはしてる。

 二年生になってからは、俺も部活に参加するようになったから、一緒に帰る日はふたりで千佳さんを見送ったあと、この家の前でキスをしている。

 朝と夜にキスをする習慣に慣れたのか、綾奈はもっとキスをしたいのかは定かではないけど、綾奈は夜のキスをご所望のようだ。

 俺も、そうだな。綾奈とキスをしたい。

 それに今日は記念日なんだ。

 アイドルフェスに行って、普通では経験し得ない出来事もあり、特別な一日になった。

 だけどキスがいつもより少ないのは、記念日として考えたらいつも以上に物足りなさを感じる。

「キスをしながら……頭を撫でてほしい」

 至近距離でそんなことを言うものだから、ドキドキがさらに強くなる。

 俺はゆっくりと、綾奈の腰に手を回した。

 服の上からでもわかるウエストの細さ。

 ランニングと、そして筋トレも少ししてるって言っていたから、無駄なお肉がほとんどなくなってるんだ。

 そもそも綾奈は本当にダイエットが必要だったのかいまだに謎だ。

 別にお腹が出てるなんてことはなかったし、冬休みに一緒に水着でお風呂に入った時も、細いって思ってたんだけどなぁ。

 まぁ、その答えは綾奈しか持ち合わせていないけど、答えを知る日はやって来ない。

 そんな確認、女の子にするもんじゃないしな。

 俺は右手をゆっくりと綾奈の頭の上に置き、優しく撫でた。

 綾奈はすぐに、いつものふにゃっとした笑顔を見せてくれたかと思ったら、俺に軽く口付けをしてきた。

「……!」

 ほんの一瞬……唇と唇が重なったキス。

 いつももっと深いキスをしているのに、どうしようもなくドキドキする。

 すぐに顔を離した綾奈の、少し照れたような……そんな表情を見て、俺のタガが少し外れた。

「綾奈……もっと、キス、したい」

「私も……ん!」

 俺は綾奈の後頭部にあった自分の手に力を少し入れて、俺へと引き寄せるようにして、また唇を重ねた。

 今度は長く、さっきよりももっと深く……。

「ま、ましゃと……いつも、より……はげしっ……んんっ!」

 そういう綾奈だって、いつもより強く唇を押し当ててくるし、舌も伸ばしてきてる。

 今は手に力なんて入れてなく、ただ優しく綾奈の頭を撫でているのに、綾奈から離そうとする気配がないし、腕も俺の首に巻き付けてるし。

 その後、小休止を挟みながらも俺たちは夢中でキスに溺れ、明奈さんが階下から声をかけてくるまでずっと続いた。

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