第711話 注目の的
お昼休み、私はみんなと学食でお昼を食べて、教室に戻る途中だ。
一年生の時は、私の席でちぃちゃん、乃愛ちゃん、せとかちゃんとひとつの机を囲って食べていたんだけど、舞依ちゃんも加わって、二年になってからは学食で食べる日もあるようになった。
それで今は、一年生の教室がある廊下をみんなと一緒に歩いているんだけど……。
「すごいね! 男子はもちろん、女子もけっこう綾奈ちゃんを見ている子がいるね」
「あぅ~……」
乃愛ちゃんが言ったように、すれ違う後輩……全員じゃないけど、私と目が合う人が多い。
「綾奈は人気者だからね」
「わわっ!」
ちぃちゃんはそう言いながら、私の肩を抱いて自分に引き寄せた。
私とちぃちゃんの身長差はけっこうあるから、肩あたりにちぃちゃんの胸が当たった。
「ち、ちぃちゃんだって見られてるよ!」
男の子も女の子も、私を見たあとにちぃちゃんを見てすごくびっくりしてる人が多いよ!
モデル並みの高身長でオレンジ色の髪、それにスタイル抜群の体をあまり隠していない制服の着方……胸の谷間も見えてるし、スラリと長い美脚も披露している。どれをとっても目立つ要素しかない。
……一昨日は真人もじ~っと見てたし……むぅ。
「でも最初に見られてるのは間違いなく綾奈じゃん」
「うぅ……」
「でも、高崎高校の二大ツートップ美少女が揃ってるんだもん。いやでも目を引いちゃうよね」
え? そうなの!? ……というか、あれ?
「乃愛……二大もツートップも同じ意味だよ」
私が思ったことをせとかちゃんが乃愛ちゃんに突っ込んでいた。こういう遠慮のないところが、やっぱり二人は、私とちぃちゃんみたいに親友同士だなって思う。
「あれ? そだっけ? あはは! まぁいいじゃん!」
乃愛ちゃんは気にした様子もなくカラカラと笑っていて、せとかちゃんはそんな乃愛ちゃんを見てため息を漏らしていた。
「でも、やっぱり綾奈ちゃんと千佳ちゃんが揃うとこう……場が一気に華やぐわ」
そ、そうかな?
「ちょっと舞依、何言ってんのさ?」
「わかる! 今日も見れたーって、なんか嬉しくなるんだよね」
「眼福」
「そ、そんな大げさな……」
もう一年近い付き合いになる乃愛ちゃんとせとかちゃんも、そんなこと思ってたの!?
うぅ~、なんだか照れちゃうよぉ。
「このツートップ美少女二人とも、彼氏がいるって知ったら、一年生たちはどういう反応するのかな?」
「今この瞬間にも、二人に恋しちゃう男の子がいそうだよね」
「絶望か、『やっぱり』って思うかの二択だと思う」
さ、さすがにそれは考えすぎだと思うし、そんなにいっぱい一目惚れなんてする人はいないと思うけどな。
「そ、れ、に~、綾奈ちゃんは彼氏じゃなくて旦那様がいるんだもんね~」
舞依ちゃんはそう言いながら、私の左手を取って、薬指にはめてあるピンクゴールドの指輪をじっと見つめる。
「それにしても、やっぱりこの指輪可愛いね。それに手首に巻いているシュシュも」
「ありがとう舞依ちゃん。真人から貰ったものを褒められるとすごく嬉しい……えへへ♡」
「中筋君の綾奈ちゃんへの愛を感じるわ」
嬉しくなって、真人から貰ったこの指輪を眺めていたら、自然と顔が緩んじゃう……。
あぁ、早く放課後にならないかな? 早く旦那様に会いたいよぉ。
「綾奈ちゃんがすっごく幸せそうな顔になってる」
「絶対中筋君のこと考えてるね」
「中筋君……本当に幸せ者」
乃愛ちゃんたちの言葉も聞こえないほどに、私の頭の中は旦那様一色に染められていたんだけど、
「あやなせんぱ~い!」
突如、前方から聞こえてきた女の子の声で、私は現実に引き戻された。
あれ? この声って……。
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