第703話 プレゼン開始
「まず、真人神様のお嫁さん……西蓮寺先輩は、高崎高校一の美少女です!」
最初に言ったのは、一番最初に入ってきた彼女だ。明るい茶髪がゆるふわウェーブになっている美少女。
俺のお嫁さんは高崎高校一の美少女……それを聞いて……
「そうだったの!?」
俺は驚いていた。
俺の反応が予想外だったのか、綾奈の話の時はザワザワとしていたのに、俺が驚いたらしんと静まり返った。
「え? なんで真人神様が知らないんですか?」
そう言ったのは、二番目に入ってきた女の子。長い青色の髪をポニーテールにしている美少女だ。
「いや、綾奈とそういう話をしたことなかったんだよ。……気にはなっていたけどさ」
俺から『高崎高校一の美少女』について話を振るわけにはいかないじゃん! もしそれで綾奈が嫉妬しても嫌だし、綾奈も自分がそうだなんて認めにくいだろうしさ。
「高崎に入学したうちらの友達が西蓮寺先輩を見かけて、【めっちゃ綺麗になってるんだけど!】ってメッセが来てましたよ」
「そ、そうなんだ……」
「まぁ、綾奈さんはお前にガチ惚れしてるし、恋する女は綺麗になるって言葉を聞くし、綾奈さんを綺麗にした要因は間違いなくお前だよ」
「お、おぅ……」
一哉に真正面からそんなことを言われてたら照れてしまう。
この中だと、俺以外では一哉も小学生の時から綾奈を見てきた一人だから、こいつがそう言うってことは、やっぱり綺麗になったんだろうな。
一番近くにいる俺がその変化に気づかないのは、ダメだな……。
「そして、真人神様はこの風見高校一の美少女、超がつくほどの人気女優、氷見杏子さんをいとこにもっています!」
一番最後に入ってきた、金髪ボブの美少女が杏子姉ぇに手を向けながら言った。
杏子姉ぇに視線が集中する中、杏子姉ぇは三人に手を振りウインクのおまけまでした。
「あぁ……杏子先輩の生ウインク」
「か、可愛すぎるんだけど」
「同じ女子だけど惚れる」
どうやらこの子たちは杏子姉ぇの可愛さにやられてしまったようだ。
「あはは。マサ、この子たち面白いね」
「誰彼構わず魅了するのやめなよ杏子姉ぇ……」
俺のいとこのお姉さん……マジで魔性の女説……あるな。
「そして三つ目は───」
「えぇっ! まだあるの!?」
綾奈と杏子姉ぇのプレゼンでもうお腹いっぱいなんだけど、まだなにかエピソードがあるのか!?
「当たり前じゃないですか真人神様。むしろ私たちにはここからが重要なんです!」
この子たちにとって重要なことってなんだ!? この教室のよくわからん空気に流されて、あまり脳が働かなくなってる。
「私たちの母校の中学の現ナンバーワンイケメンでサッカー部のエース、横水修斗君という人がいるんですが、私たちは中学時代から彼を応援しています」
そうだ修斗だ! 俺と綾奈がこの子たちと出会ったきっかけも修斗だったのに、すっかり忘れてた!
「あ、しゅーくん!? しばらく会ってないけど元気にしてるんだ」
杏子姉ぇが最後に修斗と会ったのって、確かバレンタイン前だったよな。
「そのイケメン君と真人と、なにか関係あるの?」
そして杏子姉ぇ以外は修斗と面識がないからやっぱり気になるみたいで、茜が手を挙げて質問をした。絶対に楽しんでやがるぞあの幼なじみ!
そしていつの間にか茜の大きなおにぎり三つはきれいさっぱりなくなっていた。
「よくぞ聞いてくれました先輩! そのイケメンの修斗君は、真人神様を『おにーさん』と呼んで、それはもうめちゃくちゃ慕ってるんですよ!」
「へ~。真人お前、美少女だけじゃなくてイケメンにも懐かれてるのか」
「結果的にそうなっただけで、まぁ慕ってくれるのは嬉しいけどさ……」
最初はあれだけ俺をディスっていたのに、今はマジで「おにーさん」って言ってついてくるんだよな。
……たまーに修斗が犬っぽく見えるのはここだけの秘密だ。
「さらにさらに、それだけじゃなく」
え? まだあるのか!? 修斗の話で終わりかと思ってたのに、他には一体なにが───
「同じく私たちの母校の中学……そこの現ナンバーワン美少女の吉岡茉子ちゃんにも「お兄ちゃん」と呼ばれてめちゃくちゃ慕われているんですよ!」
「ご、ごめんごめん! ちょっとタイム!」
俺はたまらずに三人にタイムを要求した。
だって、彼女たちは知り得ないはずの茉子の情報……秘密を知っていたから……。
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