第699話 早朝、お弁当を作る真人
四月十一日火曜日の早朝。
この日も綾奈とのランニングを終え、俺は家に帰ってきた。
汗の処理をして、手を洗ってから、俺はリビングに入ると、ちょうど父さんが朝食を終えたところだった。
「お! おかえり真人」
「ただいま父さん」
俺の父さん……中筋
「今日も美味しかった」
「そう、良かったわ」
だけどうちの父さんは優しいんだ。今だって食器をシンクに起きながら母さんに感謝を伝えていて……俺も、綾奈にはいつも感謝を伝えるのを忘れないようにしないとな。
父さん、そして母さんと入れ替わりに、俺はキッチンに入る。
椅子に座り、テレビを見ながら母さんは言った。
「それにしても、まさか自分でお弁当を作りたい、なんて言うなんてね……」
母さんが言ったように、俺がキッチンに入ったのは自分の弁当を作るためだ。
一年の頃までは、弁当は母さんに作ってもらっていたんだけど、将来……マジで綾奈と一緒に飲食関係の店をすることになってもいいように、今から特訓しておこうと思ったわけだ。
「綾奈が俺となにかしたいって言ってくれて、俺も同じことを思ってたから、夢を現実にするためだよ」
平日は自分の弁当を、そして休日はお昼も作ろうと思っている。
「本当、綾奈ちゃん様々よね。あんたがここまで変わったのは」
「そうだけどさ、その話、冬休みにもしてなかった?」
俺は冷蔵庫から卵を数個取り出し、割ってボウルに入れて菜箸でかき混ぜる
中学までの俺からしたら、とても目覚しい進歩で、その原動力は間違いなく綾奈なんだけどさ、母さん……クリスマスにも同じことを言ってたんだよ。
「それだけ綾奈ちゃんに感謝してるってことよ。あんただってそうでしょ?」
「まあね」
俺が変わるきっかけになったのは間違いなく綾奈だ。
綾奈を好きにならなければ、今の生活は絶対になかった。
俺が綾奈に一番感謝してるんだ。だから将来、綾奈に頼りきりにならないためにももっともっと頑張らないと。
『圭×綾カプ至高同盟』の誰かと接触しても、その子たちに中村よりも相応しいって思ってもらうために。
卵を混ぜ終え、卵焼き専用のフライパンを加熱し油を敷く。
普通のフライパンにも、ウインナーを炒めるために油を敷く。
自分で作るのはこのふたつくらいで、あとは冷食だ。さすがに一品一品作る時間はない。
あとはお肉と、野菜かな?
俺はフライパンが温まるまでのあいだに、冷凍庫から鶏肉とほうれん草とコーンのバター炒めを取り出してレンジに入れて解凍する。
フライパンから湯気が出てきたので、どうやら温めはこれくらいでいいみたいだな。
俺はウインナーをフライパンに入れ、卵も卵焼き用のフライパンに流し込んだ。
とまぁ、ここまでは良かったんだけど、さすがにフライパン二つを使用しての同時調理は俺にはまだレベルが高かったらしく、卵焼きを作りながらウインナーが焦げないように気にして、徐々にテンパってしまい、最終的にはウインナーを母さんに任せることになってしまった。
時短をするにはそれ相応の技術が求められる……慣れるまでは一個一個に集中した方がいいな。
俺が初めて作った弁当は……とりあえず良くも悪くもない出来になった。
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