第695話 接触の危惧
「それで久弥。その同盟が存在するって俺に教えた理由は?」
自分たちの理想のカップリングをただ黙って見守る同盟なら、久弥だって俺に伝えたりはしないはずだ。もし本当にそれだけなら実害はないだろうし、俺だけに伝える意味はあまりない。
「その同盟に入ってる女子が、何人か高崎に入学しているとして、近いうちに西蓮寺先輩に彼氏がいるという情報が、その女子たちの耳に入ると思うんです」
「まぁ、そうなるだろうね」
「同盟が西蓮寺先輩に直接コンタクトを取り、先輩の彼氏が誰なのかを聞くことが予想されます」
「同中なら綾奈と喋ること自体、ハードル低いしね」
「ただ、その時に西蓮寺先輩の彼氏イコール中村先輩だと決めつけて喋ってくる可能性が高いんですよね」
「でも、中学時代は噂はあったけど実際には付き合ってなくて、逆に中村は違う女子と付き合ってたしな。しかも、浮気はないにしても何人も」
中村は当時、男子と女子で対応が違っていた。女子には優しく、男子は友達以外の……俺のようなスクールカースト下位の男子をあからさまに見下していた。
今はあることがきっかけとなり、中村は変わりつつあるんだけど、当時、俺のようなやつは大体中村が嫌いだった。
だけど女子にはそんな態度は欠片も見せず、凄まじい人気で生徒会長の座を勝ち取り、彼女も取っかえ引っ変えだった。
当時、綾奈以上のインフルエンサーだった中村の彼女事情を、同盟の子たちが把握していないなんてことは考えにくい……。
「それについては俺も知らないので……。でも、真人先輩がその存在を知るのは、どうしても同盟の女子が西蓮寺先輩に絡みに行った後になるので、せめてそういうのがいると伝えておこうと」
「……ありがとう久弥。ところでこれは、綾奈に教えてもいいんだよね?」
「もちろんです」
まぁ、当事者になる綾奈が知らないまま同盟の子と接触してもパニくるだけだろうし、少しでも情報があれば対処も出来るだろう。
「あれ? なら綾奈たちが今ここで聞いても問題なかったんじゃ……」
綾奈や千佳さんにも聞かせていい内容なら、わざわざ俺たちだけ端の方に移動しなくても、四人で話せばよかったのに……。
そう思いながら綾奈をチラッと見ると、綾奈はじっとこちらを……いや、俺を見ていた。わりと話し込んでしまったから、早く帰ってきてほしいみたいだな。
俺もモヤモヤが募ってるし、早く綾奈に触れたい……ん?
「その、西蓮寺先輩が心底惚れていて、修斗もめちゃくちゃ尊敬している真人先輩を個人的に知りた───」
「ごめん久弥、その話はあとで!」
「え……?」
俺は久弥の話を遮って走った。
チャラそうなイケメン二人が、綾奈と千佳さんの後ろから近づいているのが見えたからだ。
綾奈と千佳さんはじっと俺と久弥がいる方を見ていて、背後の二人組に気付いてないが、その二人組は明らかに綾奈たちを狙っていて、綾奈たちをじっと……いやらしそうな目で見ている気がする。二人組からけっこう離れているから表情が完全にはわからないけど。
あれだと多分、チャラい二人組は綾奈と千佳さんの肩に手を置く。
そんなこと、絶対にさせない!
俺は綾奈の彼氏で、婚約者で、ボディーガードだ。
俺の目の届くうちは、綾奈を守る役目は誰にも渡さないし、あんな奴らに大切なお嫁さんを触れさせやしない!
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