第693話 後輩との再会
マジかよ。修斗にお兄さんがいるなんて初耳だぞ!
久弥君の弟の修斗と駿輔君と初めて会ったのは今年の初詣だ。
超ざっくりと説明すると、迷子になっていた駿輔君が綾奈に、『一緒にお兄ちゃんを探してほしい』と頼み、綾奈が一緒に修斗を探していたんだけど、修斗がいたのは神社の裏手の人がほとんど寄り付かない雑木林で、実は修斗が駿輔君を使って綾奈をそこまで連れてこさせる計画だった。
修斗は今でこそ、俺を『真人おにーさん』と呼んで慕ってくれているけど、そうなる前はかなりの傲慢な性格で、サッカー部のエースだけど個人プレーが目立ってたし、『俺が綾奈先輩に告れば綾奈先輩は絶対にオチる』とまで言っていたのだから、あの出会い一つでああも変わるんだなと今でも思い返す度にびっくりしている。
「その、初詣では修斗のやつがおふたりにご迷惑をおかけしたみたいで……本当にすみません」
「いや、いいんだよもう。俺たちにとっても、いい出会いだったし。ねぇ綾奈」
「うん。人を……真人をバカにしたのは褒められたことじゃないけど、今ではお友達になれてよかったって本心からそう思うよ」
「だよね? …………ん?」
なんか、最初の方に黒い感情が入ってた気がするんだけど……俺の気のせいかな?
「へ~、やっぱりあの時色々あったみたいだね」
「そ、そうだね。本当……色々あったよ」
あの場にいなかったみんなには濁しながら説明をしていた。修斗が反省していたのだから、そのままみんなに伝えたら修斗を傷つけてしまうかもしれなかったからな。
「中筋先輩。こっちの入学式では、合唱部の方々が登壇されると、周りから小さな驚きと歓声が上がってましたよ」
「え、マジで?」
入学式って、厳かな雰囲気でやるはずなのに、なんで歓声が上がったんだろう?
「はい。西蓮寺先輩と宮原先輩……このおふたりにめちゃくちゃ注目が集まってました」
「ああ、なるほどな! それなら納得だわ」
このふたりの顔面偏差値はマジで高いもんな。それを見てしまった日にはテンションが上がってしまうもんだ。
「ま、真人!?」
「あんたまで何言ってんのさ……」
「おふたりはこう言ってますが、俺の周りだけでもかなり話題になってましたよ。男子も女子も……同じ中学出身者も」
別の中学から入ってきた人ならわかるけど、同じ中学出身の人までって、かなりすごいことだよな……。
「こりゃあふたりは明日から大変そうだな……」
「あぅ~……」
「はぁ……」
マンガやラノベでよく見られる、めちゃくちゃ可愛い先輩を一目見ようと休み時間の度にその人の教室に行って見物したりとか……そんな光景が起こりうるのかもしれない。
「俺が一緒の学校なら、守れるのにな……」
「真人……」
こういう時、別々の学校に通っているとすぐに助けに行けないからかなりもどかしいし歯痒い。そもそも放課後までは助けに行けないし。
「ま、綾奈に変な虫が付きそうなら、学校にいる間はあたしが綾奈を守るから安心しなよ」
「ありがとう千佳さん。でも千佳さんも気をつけてよ」
千佳さんだって、腕っぷしが強くても女の子なんだ。綾奈を守りながらヤバいやつに絡まれたらふたりとも心配だ。
「ん、ありがと真人」
「俺も部活が終わったら、高崎高校の校門で待つようにするよ」
部活後は生徒の数も減っているけど、駅で合流するよりかは抑止力になるはずだ。
明日からここではなくて学校前で待つようにすると決めた時、久弥君が俺に耳打ちをしてきた。
「中筋先輩。実は先輩の耳に入れておきたいことがあるのですが……おふたりから離れた場所で話しませんか?」
そう言って、久弥君は構内の端の方を指さしていた。
なんだろう? 綾奈たちには知られたくない話なのは理解したけど……久弥君は真剣な表情をしてるから、これは聞いておいた方がいいやつだと判断した。
「わかった。ごめん綾奈、千佳さん。ちょっと久弥君と話してくるから少しだけ待ってて」
「西蓮寺先輩。少し中筋先輩をお借りします」
「わかったよ。真人、早く帰ってきてね」
「あぁ、もちろんだよ」
俺は優しく笑いながら綾奈を撫でたあと、久弥君の後ろをついて行くように移動した。
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