第691話 綾奈、宣戦布告
入学式が終わって、私たち二年二組のクラスも、今日はこれで放課後になると、ちぃちゃんをはじめとしたお友達が私の席にやって来た。
「綾奈ちゃん、千佳ちゃん。おつかれさま~」
私よりちょっとだけ長いダークブラウンの髪が特徴の
「西蓮寺さんと宮原さん、目立ってた」
「本当にね」
薄い黒フレームのメガネと、背中まで伸びた長い黒髪が特徴的な物静かな
「目立ってたのかな?」
「あーでも、あたしたちが登壇すると、少しだけザワザワしてた気がする。……男だけじゃなくて女子も」
「きっとちぃちゃんの髪色が珍しいからじゃないかな?」
ちぃちゃんは、入学式の時は制服をちゃんと着てたから、朝の真人みたいにちぃちゃんを見たりは……むぅ。
「あれ? 綾奈ちゃん、なんで頬を膨らませてんの?」
「へっ!? ううん、なんでもないよ!」
「どうせ真人絡みでしょ? あんたがそんな顔するのはそれしかないし」
「うぅ……」
さ、さすがちぃちゃん……。
「あっはは! 綾奈ちゃんは相変わらずだね!」
乃愛ちゃんの言葉に、せとかちゃんと舞依ちゃんは「うんうん」と頷いていた。
これ以上話が脱線するとどんどん顔が紅潮しちゃうから、元に戻さないと……!
「目立ってたっていうなら、お姉ちゃんじゃないの?」
私の実のお姉ちゃんで、高崎高校音楽教諭で合唱部顧問の
「確かにそうかもだけど、でもやっぱり私は麻里奈先生よりも綾奈ちゃんじゃないかなって思うよ」
「え?」
「私も乃愛と同意見」
「せとかちゃんも!?」
「でもまさか、綾奈ちゃんと松木先生が姉妹って聞いた時はびっくりしたわ!」
私とお姉ちゃんが姉妹というのは、生徒の中では合唱部の人しか知らなかったんだけど、春休みに乃愛ちゃんとせとかちゃんに打ち明けて、真人が通う風見高校の合唱部で起こったある出来事がきっかけで、秘密にするのをやめたから、今日舞依ちゃんも知った。
「黙っててごめんね舞依ちゃん」
「ううん、謝ることじゃないわよ綾奈ちゃん。身内贔屓とかは誰だって思っちゃうかもだから、秘密にしてて当然だと思うわ」
「うん……」
「まぁ、話を戻すけど、新入生のざわめきの半分以上は綾奈に向けられていただろうね」
「そ、そうなのかな……?」
いまいちピンとこないけど……。
「あたしらの通っていた中学から来た子らもいたし、それに綾奈は一年前とは明らかにキレイになってるしね」
「ふえっ!?」
私はびっくりして顔が熱くなった。な、何を言い出すのちぃちゃん!?
そ、それになんで乃愛ちゃんたちも頷いてるの!?
「真人に恋して、付き合って婚約して……あんたはさらに可愛くなったよ。今の高崎で一番の美少女は間違いなく綾奈だろうね」
「あ、あぅ~……」
「それに綾奈ちゃんって中筋君と毎朝ランニングしてるんだよね?」
「そ、そうだよ」
「前から無かったけど、無駄なお肉がさらに削ぎ落とされた感じがする」
それは私も感じてるよ。
「やっぱり恋は人を変えるんだね」
「ま、真人に『可愛い』って言ってもらいたいし、今は目標もあるから」
「目標?」
これは家族以外に話したことはなかったから、みんなは興味を示している。
だから私は目標……来年のマラソン大会でちぃちゃんに勝ちたいからって伝えた。
これにはみんな驚いていた。元々運動音痴の私が運動競技でちぃちゃんに勝ちたいなんて大それたこと……言うなんて思ってなかっただろうし。
ちぃちゃんを見ると、驚きの表情から一変、不敵な笑みを浮かべていた。
「へぇ~、綾奈がスポーツであたしにねぇ」
なんだろう……この笑みからは挑発ではなく、嬉しさが強く出てる感じがする。
ここは私も笑みを返しておこうかな。
「うん。今よりさらに体力をつけて、ちぃちゃんに勝ってみせるからね」
「あの綾奈からそう言ってくれるのは嬉しいけど、あたしだって負けないよ」
「望むところだよちぃちゃん」
真人と二人三脚で、きっとちぃちゃんに勝ってみせるからね!
ちぃちゃんにマラソン大会での宣戦布告とライバル宣言をしてから、私たちは五人で校門近くまでやって来た。校門を出たらちぃちゃん以外の三人とはここでお別れだ。
校門を出て、三人に挨拶をした直後、男子生徒に声をかけられた。
「あ、お久しぶりです西蓮寺先輩!」
「え? ……あ、あなたは!?」
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