第682話 美奈の感想は……

「ま、マジで!? お、お兄ちゃんもこのケーキを……!?」

「ま、まあな……」

 いまだに美奈と目を合わすことができずに、少しぶっきらぼうにこたえてしまった。

「あーなるほど。つまりこのケーキ、マサとアヤちゃんの夫婦合作なんだ!」

「うん。真人と一緒に作れてとっても楽しかった」

「ま、真人お兄ちゃんも作ったケーキ……」

 杏子姉ぇはポンと手を打ち、全てを理解したようだ。

 茉子は……気のせいか、俺がクリームを塗った部分だけをじっと見ているような……やっぱり気のせいか。

 それは今は置いといて、俺は咳払いをして、美奈を見て言った。

「その、悪かったな美奈」

「え?」

 俺がいきなり謝罪をすると、美奈はびっくりして俺を見た。

「な、なんで謝ってるの?」

「お前は綾奈が作ったケーキを心から楽しみにしていたのに、俺も美奈のためにケーキ作りの手伝いをしたいって申し出て、綾奈と一緒にこのケーキを作ったんだ。俺の手が加えられている、百パーセント綾奈が作ったケーキとは言えないケーキだから……それを聞いたら、もしかしたら美奈はガッカリするんじゃないかって思って……」

「……」

 美奈は目を少し見開き、そして口を半開きにした状態で俺とケーキを交互に見ている。

 そして何度か視線を往復させ、俺を見た。

「あ、謝る必要なんかないじゃん!」

「美奈……」

「確かに最初はびっくりしたけど、ガッカリなんてするわけないじゃん! お兄ちゃんとお義姉ちゃん……大好きな二人が私のために作ってくれた世界でたった一つのケーキなんだよ!? そんなの……嬉しいに決まってるじゃん!」

「美奈」

「美奈ちゃん」

 美奈は指で自分の目を擦った。俺たちからは見えなかったけど、どうやらうっすらと涙が出てきたみたいだ。

「だから、本当にありがとう。お兄ちゃん、お義姉ちゃん!」

 そして涙を拭った美奈は、満面の笑みで俺と綾奈にお礼を言った。

 あぁ……良かった。美奈に喜んでもらえて、本当に、良かった……!

「ね、私の言った通りだったでしょ?」

 綾奈はまた、俺に微笑みを見せてくれた。

「あぁ、本当にね」

 最初から心配する必要はなかった。

 本心からの言葉をもらって、俺は心の底から安堵した。

 安堵した笑みで美奈を見ると、パンツのポケットからスマホを取り出して、カシャカシャとケーキを撮影しだした。

 真上、左右斜め、側面……めちゃくちゃ撮っている。

「何枚撮るんだ!?」

 かれこれ十枚以上は撮っている美奈に思わずツッコミを入れてしまった。

「え~、だって本当に嬉しいんだもん。それに、前に私にお兄ちゃんのガトーショコラでマウントを取ってきた横水に仕返ししてやりたいし」

 あー、以前言ってたアレか。まだ根に持ってたんだな……。

「みぃちゃん終わった? じゃあ次は私が撮る!」

「茉子まで!?」

 美奈が満足するまで撮影し続け、終わったタイミングで今度は茉子もケーキを写真におさめはじめた。

「じゃあケーキを切り分ける前に、集合写真を撮りましょう」

 明奈さんの提案により、美奈を中心とした集合写真を撮影した。テーブルに置かれたケーキを椅子に座った美奈がカメラにちゃんと写るように傾け、茉子、杏子姉ぇ、綾奈も椅子に座り、残りの俺たちは椅子に座った人たちの後ろに立った集合写真だ。

 みんな笑顔で、とても思い出に残る写真になり、美奈の誕生日パーティーも終始、みんな笑顔で幕を閉じた。

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