第681話 お披露目の夫婦合作ケーキ
「じゃあ、美奈ちゃんがみんなからのプレゼントを受け取ったし、そろそろケーキを食べましょうか」
明奈さんが手をパンと叩きながら言った言葉を聞いて、俺の心拍数は一気に上昇した。
美奈を見ると、『待ってました』と言わんばかりのワクワクした表情を浮かべている。
大丈夫だと思うが、この笑顔が曇ってしまうのではないかと不安になる。
「ケーキ、本当に綾奈お義姉ちゃんが作ってくれたの?」
「そうだよ」
「え、マジ!? アヤちゃんの手作り!?」
「綾奈さん……ケーキも作れるんですね」
杏子姉ぇと茉子が驚いている。
そっか……二人は今日のケーキを綾奈が作るって知らなかったんだ。
冬休みに俺の家で綾奈が作ることが決定して、その時には両家の家族しかいなかったからな。
「真人のバースデーケーキを作る時に、お義兄さんに教えてもらったの」
「そうなんだ。マサもクッキー作れるし、これは将来翔太さんと麻里奈さんみたいになるのかな?」
「それはまだなんとも言えないけどな」
本当に洋菓子店をオープンさせるのか、はたまた別のお店にするのかはゆっくり決めていこうと思ってるし。
「うふふ、じゃあ冷蔵庫からケーキを持ってくるわね」
明奈さんは微笑みながら冷蔵庫に向かった。
「ありがとうございます明奈さん」
その背中に向けてお礼を言う美奈。
明奈さんが冷蔵庫を開け、ケーキが乗っている大きなお皿を取り出した。
刻一刻とみんなにケーキをお披露目する時が近づくにつれ、俺は緊張で胃がキリキリしてきた。
そんな不安にかられていると、突然俺の右手が誰かに握られた。
「っ」
握れている俺の右手……握っている手をゆっくりと見上げると、それは綾奈だった。
そして綾奈は、その可愛すぎる微笑みを俺に向けて、『大丈夫』と口パクで言った。
俺がまだ不安がっていたの、バレバレだったみたいだな。まぁ、表情にも出てたし、左手で胃を押さえていたから当然か。
俺も今できる精一杯の笑顔を綾奈に見せ、首肯したら、綾奈は少し頬を染め、笑みを深めた。
いつも綾奈に助けられてるなと思ってるけど、今回の春休みはマジで綾奈に助けられ、支えられる連続だったな。
俺も負けないように綾奈を支えないと。
「は~い、おまたせ~」
明奈さんがケーキを持ってきて、ラップを外し、ついにみんなに俺と綾奈の合作ケーキがお披露目された。
「うわぁ~…………あれ?」
大きさもさることながら、マジでケーキを作ってくれたことに感動していた美奈だったが、やはりすぐに気づいたようだ。
「お義姉ちゃん、なんだか右半分と左半分で出来映えが違うような……」
「本当だね。半分は綺麗だけど、もう半分はちょっとクリームの塗りがまばらというか、ちょっともこってなってる部分がある」
「確かに……それにクリームのデコレーションも大きさが微妙に違う……」
うちの両親も不思議そうにケーキを見ていたけど、それでもすぐに察したようで、二人して俺を見てきたから俺は首肯だけしといた。
「そうだよ。スポンジ生地とクリームは私が作って、生地の半分は私がクリームを塗ったんだよ」
「え、じゃあもう半分といちごとブルーベリーは…………まさか!」
「そう……真人がしてくれたんだよ」
「えっ!?」
美奈、茉子、杏子姉ぇはバッと俺を見てきたので、俺は気まずさや気恥ずかしさから人差し指でポリポリと頬をかきながら「う、うん……」と言った。
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