第680話 みんなからのプレゼント

 クラッカーを片付け、お次はケーキかなと思って少しドキドキしていると、茉子が持っていた小さいカバンから何かを取り出した。

 縦長の長方形の、可愛らしい紙で包装さている……プレゼントだな。

「みぃちゃん、早速なんだけどこれ、プレゼント」

「わぁ! ありがとうマコちゃん! 開けていい?」

「もちろん」

 美奈は嬉しそうに包装紙を破くと、中から出てきたのは……。

「これ、私が欲しいって言ってたシャーペンだ!」

 透明なケースに、何やらイケメンのキャラがプリントされている。シャーペン本体は赤で、そのシャーペンに、ケースに描かれていたキャラのシルエットが白で描かれている。

 こういうアニメキャラのプリントされた文房具って、限定デザインがほとんどだと思うから、二人で遊んでいる時や下校時に寄り道した時に美奈が『これ欲しい』って言って、茉子がそれを覚えてたってパターンかな?

「うん。少し前に本屋さんに寄った時、みぃちゃん、このシャーペンをじっと見ていたから……」

 俺の予想は当たらずも遠からずってところかな。

「ありがとうマコちゃん! これ、大切に使うね」

「うん!」

 いつも一緒にいる二人だからこそのチョイスだな。良かったな美奈。

「じゃあ次は私だね!」

 そう言ったのは杏子姉ぇで、杏子姉ぇもバッグに手を入れゴソゴソと中を探し、やがてプレゼントが入っているであろう長方形の箱が出てきた。茉子のシャーペンよりもちょっとだけ横に長い。

「はいみっちゃん」

「ありがとう杏子お姉ちゃん。これは?」

「それは開けてからのお楽しみだよ」

 まぁそうだよな。中身見る前に教えたら楽しみが減ってしまう。

 ただ杏子姉ぇの場合、高額なプレゼントも予想されるけど……さすがに中学生のいとこ相手にそれはないか。

 俺がそう考えている間に、美奈は包装紙を破き、中に入っていた白い箱をパカッと開けると……。

「腕時計だ! かわいい!」

 みんな美奈の周りに集まり、杏子姉ぇの贈った腕時計を見る。

 アナログの時計で本体は白く、数字は黒。そして秒針は薄いピンクになっている。

 ベルト部分は革になっていて、これも色はピンクだ。

 確かに可愛いし、値段も高くないっぽい。

「みっちゃんってこういうの身につけてるの見たことないなって思って、それで選んでみた」

 プレゼントを選んだ理由が綾奈のそれと似ているな。

「ありがとう杏子お姉ちゃん!」

「せっかくだからつけてあげるよ」

 杏子姉ぇは腕時計を持ち、美奈の右手首につけた。

「それで? マサとアヤちゃんのプレゼントは?」

「急かさないでくれよ杏子姉ぇ。今持ってくるから」

「わ、私も」

 俺は弘樹さんと明奈さんに一言ことわりをいれてから、綾奈と一緒に二階に上がり、麻里姉ぇの部屋からラッピングしたフィギュアが入った箱を持ち、綾奈と一緒にリビングに降りた。

「おまたせ」

「マサのプレゼント、けっこう大きいね」

「お兄ちゃん……マジで取ってくれたの?」

「当たり前だろ。ほら」

 俺は美奈にプレゼントを手渡した。美奈からリクエストされた物だから言わないでもわかるだろう。

「でも、なんで袋に?」

「それな、俺が包んだんだよ」

「え?」

「たとえ中身がわかっていてもラッピングしたらプレゼント感が増すって、綾奈に言われてな」

 動画を見ながらなんとか包むことができたんだけど、マジで悪戦苦闘した。

 俺がもうちょっと器用だったら、ちゃんとピシッと包めたかもしれないが、所々紙が膨らんでいるところがある。

 綾奈が手伝いを申し出てくれたんだけど、俺が一人でやらなきゃ意味がないと思ってそれを断り、俺が一人でやった。

「ありがとうお兄ちゃん! 帰ったら早速飾るね!」

「おう」

 どうやら予想以上に喜んでくれたようだ。やっぱり綾奈の言ったようにラッピングをして正解だったようだ。

「じゃあ、次は私だね」

「マサのは大きかったけど、アヤちゃんのは小さいね」

 まぁ、ヘアピンだからな。綾奈のプレゼントが一番小さいのは当然だ。

「うん。美奈ちゃん、私からはこれだよ」

「ありがとう綾奈お義姉ちゃん。開けていい?」

「もちろん」

 美奈はワクワクしながらテープをペリっと剥がして、親指と人差し指を突っ込んだ。

 というか美奈って、綾奈と杏子姉ぇが揃ってる時は綾奈も名前をつけて呼ぶんだな。『おねえちゃん』だけだと紛らわしいから。

「うわぁ……可愛い!」

 美奈がヘアピンを取り出して、それを見ながら目をキラキラさせている。どうやら気に入ったみたいだな。

「えへへ、よかった。早速つけてみる?」

「うん!」

「じゃあつけてあげる。どれがいい?」

 美奈は赤、ピンク、白のヘアピンを見て「うーん……」と唸って、十秒ほど考えてつける色を決めた。

「白」

「わかった。じゃあ借りるね」

 綾奈は美奈からヘアピンがついている台紙ごと受け取り、白のヘアピンを取って美奈につけた。

 俺もずっと見ていないヘアピンをつけた美奈は、いつもより可愛く見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る