第673話 昼食よりも前に
自分でプレゼントを包む包装紙をはじめとした色々な物を買って、俺たちは地元駅に戻ってきて、そこでココアを購入してから今は再び綾奈の家に向かって歩いている。
正直他にも買いたいものはあったんだけど、荷物が重く、かさばってしまいそうだったから今日は諦めた。
まぁ、その買いたかったものは美奈の誕生日パーティーとは関係がないものだから、明日の土曜日……それか日曜日、パーティーが終わったあとにでも買いに行けばいいな。
綾奈の家が近くなってきて、俺たちの口数は明らかに減った。
理由は……うん、ものすごくドキドキしてきたからだ。
元々今日はイチャイチャするという目的で集まって、俺の家でも綾奈の家でも、果てはあの公園でもイチャイチャ出来なくて、なら先に買い物を済まそうとアーケードやショッピングモールに行ったんだけど、買い物中はそっちに集中して、イチャイチャしたいって気持ちはそこまで大きくはならなかった。
でもこうして、買い物が終わり綾奈の家に戻っていると、イチャイチャ以外の考えがことごとく排除されている。
なんだかすごく緊張してきて心臓が痛いし喉も乾く。
手を繋いで隣を歩く綾奈を見ると、頬を赤くして少し俯きながら歩いている。表情から緊張がうかがえて、多分だけど綾奈も俺と同じ考えをしてるんだろうなって想像できる。
俺のお腹が鳴った。もう正午は過ぎてるし、これだけ移動したらお腹もすく。
綾奈にも聞こえていたらしく、俺のお腹を見たあとに俺の顔を見てきた。
そして見つめ合ってお互い笑った。
「お昼食べてきたらよかったね」
「まぁ、そこまで考えてなかったしね」
最初からお昼は自分の家で食べようと思っていたので、買い物中も食事のことなんて頭になかった。買い物もイチャイチャしたあとに行くって思っていたし。
「「……」」
笑いあったあとは、また会話がなくなり無言で歩く。
いつもの綾奈だったら、『先にご飯食べる?』って聞いてきそうだけど、それがないってことは、おそらく綾奈も俺と同じなんだろうな。
明奈さんが用意してくれているかもしれないし、ちょっとドキドキしすぎて聞くのを忘れただけなのかもしれないけど……。
今は、お昼ご飯よりも綾奈を───
「「ただいまー」」
帰ってきたことを告げると、明奈さんがリビングから出てきた。
毎回出迎えてくれてありがたい半面、ちょっと申し訳ないな。
「おかえり二人とも。色々買ってきたわね」
「そ、そうですね。これもいるかなって思ったら……」
チラッと下を見ると、午前中にいた麻里姉ぇ、幸ばあちゃん、銀四郎さんの靴はなかった。明奈さんしか出てこなかったから、やっぱり帰ったんだな。
本当はいけないとこだし、すごく失礼だとは頭ではわかってるんだけど、三人がいないとわかって、内心でガッツポーズをしてしまった。本当にごめんなさい……。
「お昼まだよね?」
「うん」
「じゃあ今から作るから食べましょ。もちろん真人君もね」
明奈さんは当たり前のように俺の分も作ると言ってくれる。それがとても嬉しいしありがたい。
「あ、ありがとうございます。でも、あとで食べてもいいですか?」
「わ、私もあとで食べるから……」
今は綾奈とイチャイチャしたい気持ちがものすごく強いので、明奈さんには本当に申し訳ないけど、あとで食べると申し出た。
「わかったわ。じゃあ二人の分も作って、先に食べちゃうわね」
「すみません明奈さん……」
「ごめんねお母さん」
「いいのよ。でも、ほどほどにして降りてくるのよ?」
「「!?」」
明奈さんは笑いながらリビングに入っていった。
ど、どうやら俺たちがあとで食べると言った理由もお見通しみたいだ……。
と、とりあえず手を洗ってから二階に行こう……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます