第671話 義妹へのプレゼント選び

 アーケードを出た俺たちは、駅に行く前にこのフィギュアを家に置くために、また俺の家に向かってる途中で、美奈が俺の部屋でゲームをしていることを思い出した。

 リクエストされたプレゼントとはいえ、やっぱりパーティー当日まで隠しておかないと楽しみもないからな。

 だからいつものT字路を直進し、綾奈の家に行き、フィギュアを麻里姉ぇの部屋に置かせてもらった。


 それから電車に乗り、ショッピングモールにやって来た。

 ここで綾奈が美奈に渡すプレゼントや、パーティーの空間を彩る飾りなんかを買うつもりだ。

 ケーキの材料は明日スーパーに行って買う。道具なんかも確認して、足りないものがあればそれも明日買う手筈になっている。

 まず最初にやってきたのは雑貨屋だ。ここに来るのは綾奈の誕生日プレゼントを買いに来て以来だ。プレゼント類は大体ここで買ってるなぁ。

 綾奈と手を繋ぎながら店内を歩いて、ちょっと今さらな質問を綾奈にした。

「ねえ綾奈。美奈に何をプレゼントするか決めてるの?」

 俺が綾奈に聞きたかったこと……それはプレゼントのことだ。

 ここにまっすぐ来たってことは、ある程度は何を贈るか決めてあると考えてもよさそうだけど、具体的に決めてあるのかはちょっと前から気になっていた。

 まぁ、もし何も決めてなくても、ここは可愛いものが色々揃ってるから、プレゼント選びには困ることはない。というか綾奈が渡すものだったら大抵はすごく喜ぶだろうな。美奈も綾奈大好きだし。

「うん。ヘアアクセをあげようかなって思ってるよ」

「ヘアアクセ?」

「うん。ブラウンの長い髪が綺麗だけど、美奈ちゃんがアクセサリーをつけてるのって見たことないから」

「あー確かに」

 俺も美奈がヘアゴム以外、髪につけてるのって見たことがないな。持ってない……ってことはないと思うんだが……。

「だから美奈ちゃんに似合う可愛いのを選ぶつもりだよ」

 綾奈、なかなか気合いが入ってるなぁ。

 義妹に贈る、おそらく初めてのプレゼント……いいのをあげたい、喜んでもらいたいって気持ちが強く出ているみたいだ。

「綾奈のチョイスなら間違いなく美奈は喜んでくれるよ」

「えへへ、そうだと嬉しいなぁ」

 変なものやウケを狙ったものじゃなければ喜んでくれるだろう。

 綾奈はそんなものは贈らないし、ちゃんと美奈のことを考えながらプレゼントを選ぶはずだ。

 俺は綾奈にヘアアクセのコーナーを案内した。

 綾奈の誕生日プレゼントのシュシュを買ったのもここだったので売り場は覚えていた。

「いっぱいあるね」

「そうだね」

 綾奈は様々なヘアアクセを見て、どれが美奈に似合うかを選んでいる。

 しかし、本当に結構な種類があるな。

 俺は綾奈への誕プレはシュシュって決めてたから、他の商品には目がいってなかったけど、ヘアピン、ヘアゴム、リボン、シュシュ、カチューシャとか色々ある。

「ん?」

 俺は紐みたいなのが何重にも丸くなっているものを見つけて、その一つを手に取った。

 これ、ただの紐じゃないな。紐の中になんか針金みたいなものが入っているみたいで、形を自由に変えることが出来る。

「綾奈、これって?」

「それはワイヤーポニーだよ」

「ワイヤーポニー?」

 やっぱり初めて聞くな。名前からしてポニーテールをする時に用いるリボンみたいなものか?

「うん。普通に髪を後ろで一つに巻くのも出来るし、ポニーにした髪に巻き付けてオシャレにすることも出来るんだよ」

「そうなんだ」

 ヘアアクセって一括りに言っても、本当にいっぱいあるんだな。

 ワイヤーポニーか……綾奈の髪はそれほど長くないけど、できないこともないだろうから、してるところをちょっと見てみたいなぁ。

「美奈のプレゼント、これでも良さげだな……」

「でも美奈ちゃんは普段アクセサリーはしないから、ワイヤーポニーはちょっとしないかも……」

「確かに……」

 普通のヘアゴムとは違い、紐を巻き付けないといけないから、ヘアゴムを二重とかにして巻くよりも手間がかかりそうだ。

 最初は嬉しそうにつけるだろうけど、だんだんとしなくなる美奈が想像できた。

「だから、これにしようかなって」

 そう言って手に取ったのはヘアピンだった。

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