第668話 見守って、嫉妬して
私は小さくなっていく旦那様の背中を、右手を伸ばして見ていた。
真人……私の知らない女の人の知り合いがいたんだ……。
真人の女性の知人は、私も全員知ってる人ばかりだと思っていたから、ちょっとびっくり。
もちろん浮気なんて疑ってないよ。今さら疑う余地なんてないもん。
それ以前に、真人ほどの誠実な人が、浮気なんてするはずないもん。
他人であっても手を差し伸べる真人だから、知り合いが困っていたら動かずにはいられないんだよね。
旦那様のそういうところ、本当に尊敬するし大好き。
「そうだ」
私がいるのもちょうど道の真ん中あたり……ここでじっとしていたら、助けに入った真人の関係者ってバレちゃうかもしれないから、真人の邪魔をしないように、ちょっと移動しないと。
私は右側に移動している途中、真人の女の人を呼ぶ声が聞こえた。
「
私が真人の方を見ると、真人は茉里さんと呼んだ女性の隣に立っていた。
女の人……茉里さんも突然の真人の登場で驚いてるみたい。
と、とにかく早く移動しないと……。
私が見やすい位置に移動していると、小学生の女の子の集団が真人たちのやり取りを見ていて、その中に凛乃ちゃんがいた。ナンパの現場に真人が乱入してすごくびっくりしている。
「凛乃ちゃん」
「あ、綾奈さん!」
私が声をかけると、凛乃ちゃんはびっくりしながらも私のそばにやって来た。
凛乃ちゃんのお友達も困惑しながらゆっくりとついてきた。
「あ、綾奈さん、あの……真人さんが……」
「うん、わかってる。あのナンパされてる人、真人の知り合いの人みたいだから真人が助けに入ったんだよ」
「そ、そうなんですね。真人さん、すごい……」
凛乃ちゃんのお友達が私のことを尋ねてきたので、凛乃ちゃんは私と真人のことを簡単に説明していた。
凛乃ちゃんが言ったように、知り合いとわかった瞬間、なんの躊躇もなく助けに行った真人はすごい。
旦那様のかっこいい部分を見れて顔が綻んで、少しして真人の隣にいる女の人を見る。
すごく綺麗な人で、身長は私より少し低いくらいかな?
学生さんではない感じで、お姉ちゃんと同じくらいの年齢かもしれない。
真人……あんな綺麗な人と一体いつ知り合ったの!?
あれ? でも、誰かに似てる気がする……?
「!?」
え、お、お胸がすごく大きい……! 私より身長低いのに、ちぃちゃんと同じくらい大きい!
「なんだてめぇ!?」
金髪の人が大きな声を出して真人を威嚇して、私は反射的に金髪の男の人を見る。
なんだか今にも胸ぐらを掴みそうな勢いで、私は真人が心配になってしまう。
「ま、真人さん……」
凛乃ちゃんもすごく心配そうに真人を見ている。
うぅ……私も助けに行けたらと思っちゃうけど、私が行ったら真人の行動が無駄になっちゃうから、我慢がま───
「んん!?」
「え!?」
私と凛乃ちゃん、そして凛乃ちゃんのお友達のみんなも、茉里さんと呼ばれた女の人の取った行動驚いていた。
茉里さんは、私の……私の真人の腕に抱きついていた。
軽くじゃなくって、私がいつもしているようにギュッて抱きついている!
私がいる場所からは見えないけど……あれ、絶対に胸が押し付けられてるよね!?
「むぅぅぅぅぅ~……!」
ま、真人に抱きついていいのは私だけだもん! 早く真人から離れてよぉ!
「あ、綾奈さん……落ち着いてください……!」
凛乃ちゃんが何か言ってるみたいだけど、目先の二人に集中していて聞いていなかった。
真人も突然のことでびっくりしてる。こういう時はポーカーフェイスを意識しないと怪しまれてしまいそうだけど、茉里さんの行動が予測できなかったみたい。
あ、ナンパしてた人たちが舌打ちをしながら離れて行った。
よかった……真人と茉里さんに危害が及ばなくて。
ナンパも撃退できたし、これで茉里さんも真人を離す───
「………………あれ?」
茉里さん、真人から離れない?
ど、どうして!? もうナンパの人はいないんだから、演技する必要もないのに!
「あ、あの人……もしかして真人さんのこと……」
「!?」
凛乃ちゃんが思ったことを口にして、それからハッとした顔をして口を自分の手で塞ぎ、おそるおそる私を見てきた。
私は凛乃ちゃんが喋ってからすごい勢いで凛乃ちゃんを見ていたので、私と凛乃ちゃんの視線がバッチリと重なった。
「あ、綾奈さん……あの……」
凛乃ちゃんがすごく焦っている。
私は凛乃ちゃんに笑顔を見せたんだけど、なぜか凛乃ちゃんはちょっと怖がってしまった。
それにしても、あの茉里さんって人、本当に真人の腕から離れない。
私の知らない綺麗な人で、凛乃ちゃんが言いかけたように、本当に真人に好意を持ってるから離そうとしないのかな?
マコちゃん、香織ちゃん、雛さんの他に、まだ真人に好意を持ってる人がいるなんて……私の旦那様、どれだけモテるの!?
真人も困った顔をしてるし、もうナンパの人たちは見えなくなったから、真人を助けに行ってもいいよね?
そろそろ真人を離してもらわないと。
私だってイチャイチャしたくて我慢してるのに、あんなに堂々と私の旦那様の腕に抱きついて……!
「むぅ……!」
私以外の人が真人とくっついてるのを見るのもそろそろ限界だったので、私は茉里さんを止めるべく走った。
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