第667話 自分でラッピングすることを決意
フィギュアをゲットした俺と綾奈は、フィギュアをナイロン袋に入れてゲーセンを出た。
「取れて良かったね真人」
「ああ。これで美奈が喜んでくれる」
俺はビニール袋を持ち上げ、フィギュアが入っている部分を自分の目の高さまで上げる。
このキャラクターは推しとかでは全然ないんだけど、これを受け取った美奈が笑顔になる場面を想像して、つい俺も嬉しくなった。
「さて、じゃあ次はショッピングモールだね」
「うん」
俺たちが次に向かうのはショッピングモール……そこで綾奈が美奈に渡すプレゼントを買うと言っていた。
「綾奈は何を買うの?」
「う~ん……まだ決めてないんだけど、雑貨屋さんに行って、美奈ちゃんに似合いそうなものがあれば買おうかなって思ってるよ」
雑貨屋さん……俺が綾奈に贈った指輪やシュシュを買ったあのお店か。確かにあそこなら何かしらいいものがあると思うから、そこで選ぶのはいい選択だと思う。
それから綾奈は何か思いついたのか、「あ、そうだ!」と言った。
「どうしたの綾奈?」
「ねえ真人、ショッピングモールで包装紙を買って、そのフィギュアをラッピングしちゃおうよ」
「ラッピングか……」
確かにラッピングをしたらプレゼント感が増すよな。
「中身がわかってるけどいいのかな?」
このフィギュアは美奈からのリクエストだ。たとえラッピングをしたとしても、包装紙の中身はわかりきっているのだけど、それだとラッピングする意味ってあるのか? と思ってしまって、それが口から出てしまった。
「もちろんだよ。大好きなお兄ちゃんが手を加えてよりプレゼントっぽくしてくれて、美奈ちゃんが嬉しくならないわけがないよ」
だといいけどなぁ。
でも綾奈の言うように、ラッピングしたらプレゼント感は増す。
美奈の……大切な妹の誕生日だもんな。渡すならとことんプレゼントっぽくしてやろう。
「……ありがとう綾奈。包装紙もショッピングモールで探してみるよ」
「えへへ、どういたしまして」
綾奈は満面の笑みを見せ、俺の腕に抱きついた。
綾奈は本当に、俺にはないアイデアを言ってくれるからいつも助けられている。
「真人はプレゼントラッピングってしたことあるの?」
「い、いや、ないな」
上目遣いで聞いてくるもんだからドキドキする。
「美奈ちゃんもそれは知ってると思うから、きっとすごく喜んでくれるよ」
「たとえ喜んでくれなくても頑張ってみるよ。とりあえず夜にラッピングのしかたを動画で見て覚えるよ」
まずは知識を得て、それからだ。
「頑張ってね」
「ああ」
アーケードの出口が見えてきた頃、俺の目にある光景が映ったので、俺は足を止めた。
「……あれ、ナンパか?」
「そうみたいだね」
女の人一人に対し、男が二人でナンパをしている。
遠目だから顔はよくわからないけど、高校生より大人っぽいな。髪の色も金髪と赤だし。
女の人は後ろ姿しかわからないが、かなり身長が低いな。中学生か高校生か?
ウェーブのかかった長い栗色の髪、手にはエコバッグを持っていて、買い物帰りのような出で立ちだ。
よく見ると服装も落ち着いた感じで、それだけ見ると学生っぽくはないな。
道の真ん中でナンパをしていて、道行く人は三人を避けて、だけど通り過ぎる際は必ず三人を見て通り過ぎている。
「ん!?」
女の人が困ったように左右をチラチラと見ている。
そして俺は、その横顔を見て、綾奈の手を離して自然と一歩踏み出していた。
「ごめん綾奈。ちょっと行ってくる」
「え!?」
「あとで詳しく話すよ。まずはあの人を助けないと」
「ま、真人? あの女の人、知ってる人なの!?」
俺は綾奈を見て首肯し、もう一度綾奈に謝ってから、あの女の人を助けるために走った。
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