第663話 美奈の誕生日パーティーに呼びたい人

「綾奈と真人? ここで何してるのかしら?」

 玄関を開けたら妹と義弟がいて、ちょっと驚きながら不思議そうに俺たちを見ている麻里姉ぇ。

 まだ靴も脱いでいない家族を見たら、そんなリアクションになるのも当然だよな。

 しかも俺がいるし、時間的にもどこかに出かける直前ってのは、考えにくいだろうし。

「おや、麻里奈もおかえりなさい」

「久しぶりだな麻里奈!」

「おじいちゃん、おばあちゃん来てたのね。ただいま」

 麻里姉ぇも来たことで、いつまでも玄関で立ち話もアレなので、五人でリビングに入った。

「あら、三人ともおかえり」

 俺たちを見て、明奈さんは少しだけびっくりしていたけど、すぐに優しい笑顔を見せてくれて、おかえりと言ってくれたので、俺たち三人もただいまを言った。

「そうそうこれ、翔太さんがみんなにって作ってくれたのよ」

 麻里姉ぇはそう言いながらドゥー・ボヌールのロゴが入った紙袋をテーブルに置いた。

「うわぁ! ありがとうお姉ちゃん! お義兄さんにもあとでメッセージ送らなきゃ!」

「ぜひそうしてあげてちょうだい」

「悪いわね麻里奈」

「私は持ってきただけだし、それも旦那様に言ってあげて」

 翔太さんの手作りケーキ……家族だからいつでも食べれるってのはわかってるんだけど、これって、お店で売るやつと並行して作ったのかな?

「あら? どうしたの真人?」

「え?」

 俺が考え事をしながらケーキを見ていたから、麻里姉ぇが俺を見ているのに気づかなかった。

「けっこうあるから真人ももちろん食べていいわよ」

「う、うん。それは嬉しいんだけど、ちょっと考え事をしてて……」

 俺は麻里姉ぇにさっき考えていたことを話した。

 すると麻里姉ぇは表情を変えずに、「翔太さんだから」と言った。

 そのたった一言に、妙に納得してしまう俺がいた。義兄にいさんさすがです!

 納得したところで、今度は明奈さんが俺を呼んだ。

「あ、そうだわ。真人君」

「はい」

「明後日の日曜日、美奈ちゃんのお誕生日パーティーの件なんだけど……」

「あ、はい」

 明奈さんが言ったように、明後日の日曜日は美奈の誕生日パーティーをこの家で開催する。

 冬休みの終わりの方に決定したんだけど、当初は明日の土曜日に開かれる予定だったんだけど、俺たちの部活があるので日曜日に変更となった。

 日曜日は俺が朝からここに来て、ケーキ作りや飾り付けの手伝いをする手筈なんだけど、なにか問題でもあったんだろうか?

「真人君のご家族以外に呼びたい人っているのかしら?」

「呼びたい人、ですか?」

 誕生日パーティーの参加人数は、綾奈と綾奈のご両親、そして主役の美奈と俺を含めた家族の計七人だ。

 翔太さんは仕事で多分無理で、麻里姉ぇもお店の混み具合次第では参加出来るかもしれない。とりあえず決定してるのは七人だ。

 ここの家は広いから、呼ぼうと思えば呼べるのだろうけど、大丈夫なのかな?

「えっと、何人くらいなら大丈夫ですか?」

 呼びたい人と聞いて、一人は確定しているのだが、呼べる人数によっては、まだ誘いたい人はいる。

「そうねぇ……一人か、二人かしら」

「でしたら、美奈の親友と……杏子姉ぇを呼びたいのですが……」

 どうしても呼びたい人は茉子だ。明奈さんに聞かれる前からなんとか呼べないかと思っていたので、明奈さんのこの提案はまさしく渡りに船だった。

 もう一人……修斗と迷ったんだけど、修斗と美奈はちゃんとした友達になったばかりだし、それに会場が会場なので、修斗は絶対に落ち着かないと思ったので、今回は杏子姉ぇにした。

 まぁ、落ち着かないのは茉子も一緒だと思うけど。

「杏子ちゃんも呼ぶのね!? これはより楽しみになってきたわ」

 杏子姉ぇの名前を出したら明奈さんのテンションが上がった。

 前に綾奈から、『お母さんも杏子さんのファンなんだよ』って聞いたことがあったけど、この反応を見るとマジ……というかガチみたいだ。

 綾奈はそんな明奈さんを見て少し苦笑いをしている。

 杏子姉ぇと会ったばかりの綾奈も明奈さんと似たような……いや、明奈さん以上の反応だったと思うんだけど、これを言うと綾奈は「むぅ……」っとなりそうだったので言わないでおいた。

「じゃあ真人君、二人に連絡を任せて大丈夫かしら」

「もちろんです。任せてください」

 こうして美奈の誕生日パーティーに呼ぶ人が決定した。

 そのあとはみんなで翔太さんの作ってくれたケーキに舌鼓を打った。

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