第629話 焼肉店から帰宅して
「雄一さん、良子さん。送っていただいてありがとうございました」
焼肉屋さんをあとにした私は、雄一さんの運転する車で家まで送ってもらった。
今は車から降りて、真人のご両親にお礼をしていた。
「お礼なんて言わなくてもいいよ綾奈さん。俺たちは当然のことをしたまでなんだから」
「そうよ綾奈ちゃん。気にしないで」
本当、真人のご両親は優しいなぁ。一緒にいて心が落ち着く。
私は後部座席の、美奈ちゃんがいる方へ移動した。
「美奈ちゃん、またね」
「うん! またねお義姉ちゃん」
美奈ちゃんは窓から手を出してきたので、私はそれを握って、義妹と笑いあった。
五秒くらいで離し、今度は真人のいる方へ移動した。
「真人、また明日ね」
明日も早朝のランニングはするし、真人は明日から部活もあるから、朝に二回会うことが出来る。すごく楽しみ!
「うん。また明日ね綾奈」
真人とも笑いあって、お互いの左手を合わせる儀式をして、名残惜しい気持ちを抑えて、車から距離を取ると、雄一さんが車をゆっくりと発進させた。
みんなが手を振ってくれていたので、私も車が見えなくなるまで手を振り続けてから家に入った。
「ただいまー」
リビングに入ると、お風呂上がりのお父さんと、テレビを見ているお母さんがいた。
「おかえり綾奈」
「焼肉は美味しかった?」
「うん! あのね───」
私は焼肉屋さんであったことを両親に話した。
杏子さんに敬語なしで話が出来たこと、杏子さんのお母さんの奏恵さんに、将来の進路について聞かれたこと、真人も私と同じ考えをしていて、将来二人でなにかをしたいと思ってくれていたことをざっくりとだけど話して、お父さんもお母さんも相槌をうちながら聞いてくれていた。
「じゃあ、綾奈たちも将来は麻里奈と翔太君のようになるのかしら?」
「ど、どうなんだろ? まだ何をするかも決まってないから……」
「だとしても、なにも考えずに過ごして卒業が間近に迫る……とはならないのだから、俺はいいと思うよ」
「ありがとう、お父さん」
真人と一緒にお店をするとしたら……飲食店かな? 私も真人も料理は出来るから、旦那様と一緒に料理が出来るって考えただけでとても楽しみになってきちゃう。
「ところで綾奈」
「どうしたのお母さん?」
「夕方、どうして真人君は土下座をしていたの?」
そうだった。夕方は急いで真人の家に向かったから、お母さんに説明をしてなかったんだった。
「ん? 真人君が土下座? どういうことだ綾奈?」
当然お父さんも気になるよね。
「えっと───」
私は両親に真人が土下座していた理由を説明した。
「そう……千佳ちゃんの彼氏のお姉さんが」
「うん。真人は悪くないし、雛さんも真人に元気を……勇気を貰うためなのに、私が嫉妬しちゃって不機嫌になっちゃって……」
「よく我慢したわね綾奈」
「それにしても、真人君はモテるんだな」
「すっごいモテるんだよ! 女の子だけじゃなくて、男の子にも!」
しかも真人を好きな人はみんなかわいい人ばかりだし、横水君もまぁ……真人と競えるくらいかっこいいし!
「男の子にって……まさか!」
「ち、違うよお父さん! 真人を『おにーさん』って呼んでる男の子のことだよ」
ちょっと説明が足りなかった。危うく両親に横水君を『同性が好きな男の子』って認識させてしまうところだった。ごめんね横水君。
「な、なんだ。そういうことか」
「うふふ、私たちの息子は人気者ということよあなた。綾奈、これからも真人君を大切にするのよ」
「うん!」
これからもずっとずっと、真人を想って過ごしていくよ。たまには『むぅ』ってしちゃう時があるかもしれないけど、私の真人への愛は絶対だもん。
真人と一緒にいられる幸せをいっぱい噛みしめながら、真人を大切にしていくよ。
真人……愛してるよ。
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