第615話 舞依との初顔合わせ

「舞依ちゃんおまたせ!」

「ううん、今来たとこだから大丈夫よ」

 綾奈と金子さん……美少女二人が待ち合わせの定番のやり取りをしているのを俺はじっと見ていた。

 金子さん……茶髪のセミロングの髪が似合う美少女だなぁ。服と雰囲気から、陽キャっぽい感じだ。

 あ、金子さんがこっちを見た。

「はじめまして、綾奈ちゃんの旦那様。金子舞依です」

 おお……挨拶、すごいしっかりしていて好感が持てるやつだ。金子さんって千佳さんと同じタイプなのかもしれないな。

 おっと、今は感心してないで俺も挨拶をしなくちゃ。

「は、はじめまして。中筋真人、です」

 緊張が抜けきってなくてちょっとどもってしまった。……情けない。

「中筋君緊張してる?」

 そしてあっさりと見抜かれてしまった。

「そ、そうだね。少し……」

「真人は人見知りだから……」

「そ、そうなんだよ。ごめん金子さん」

「あはは。気にしなくていいって。こっちこそ急に誘っちゃってごめんね」

 綾奈のフォローと金子さんの気さくさでなんとか挨拶は乗り切ることができた。

 金子さんに、ちょっと気を遣わせてしまったかな……?

「それで舞依ちゃん。これからどこに行くの?」

「あれ? 綾奈はどこに行くか知らなかったんだ」

 待ち合わせしてたから、てっきり行く場所も知ってるもんだと思ってた。

「この先に喫茶店があるから、そこで綾奈ちゃんたちのことを色々聞きたいなって思ってるんだけど、いいかしら?」

 喫茶店か。普段はファミレスやドゥー・ボヌールしか行かないから、ちょっと新鮮でいいかもしれない。

「もちろんいいよ。真人は?」

「俺も大丈夫」

「ありがとう二人とも。それじゃあ行こっか」

 俺と綾奈は返事をし、金子さんの先導で喫茶店に向かった。


 歩き始めてから五分。大きい通りからちょっと外れたところに目的地の喫茶店があった。

「なんか、隠れ家的な場所にある喫茶店だね」

「うん。中はどうなってるのかな?」

「あたしも入るのは初めてなの」

「え、初めてなの!?」

 初めてなんだ! まっすぐ迷わずに案内してくれたから、わりと行きつけの場所なのかなって思ってたけど違うんだ。

「気にはなってた場所なんだけど、高校生が一人で喫茶店って、なんとなく敷居が高い気がして入れなかったのよね。二人を利用する形になっちゃうけど……」

「そんなこと思ってないし気にしないでよ舞依ちゃん。友達でしょ?」

 俺は金子さんを見て、一度首肯した。

 利用されたとかはまったく思ってもないし、喫茶店という、なんとなく大人がよく使うイメージの空間に入るというので、ドキドキするけどちょっとワクワクもしてる。

 そのおかげか、金子さんに対する緊張もほんのちょっとほぐれてきた……と思う。

 別の緊張に切り替わっただけかもしれないけど。

「ありがとう綾奈ちゃん、中筋君。それじゃあ、入りましょう」

「「うん」」

 笑顔になった金子さんは、喫茶店の扉を開け、俺たちも金子さんに続いて店内に入った。

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