第612話 まさかの幕引き
だがこれはチャンスだ。このリスポーンのわずかな無敵時間を利用して、綾奈の助けに入れる!
復活するのと同時に、俺は綾奈たちの方へと向かう。
近くまで戻ってきていた修斗のキャラが、持っていた剣を投げて俺に当たったが、ギリギリ無敵時間だったのでノーダメージ!
「綾奈! 助けに来たよ」
「う、うん! ありがとうましゃと!」
綾奈は空中に逃げ、それを追おうとしていた美奈に攻撃を加え、これまで美奈もかなりのダメージが入っていたのでそんなに強くない攻撃でもけっこう吹っ飛んだ。
綾奈の真下に吹き飛び、綾奈がすかさずスピンキックで美奈にダメージを与えながら下へと降ろしていく。
その真下に移動した俺は、上段タメ攻撃を美奈にクリーンヒットさせ、美奈を空高く吹っ飛ばした。
「やべ!」
「逃がすか!」
敵に背を向けて敵前逃亡を図ろうとした格闘家(修斗)を俺は掴み、綾奈の方へと投げ飛ばした。
そして綾奈の真下に行ったタイミングで、綾奈はキャラを固い物質へと変身させ、その衝撃で修斗のキャラも空の彼方へと吹き飛んだ。
「っしゃ!」
「やった!」
俺と綾奈はハイタッチをした。
「つ、強ぇ……」
「やっぱりこの夫婦は引き離さないと……」
「離れたりするもんかよ!」
「そ、そうだよ! 私と真人はいつも一緒なんだから!」
「いやゲームの話だから」
「おにーさんと綾奈先輩をリアルに引き離すのはどう考えても無理ゲーだわ……」
あ、ゲームの話だったんだ。ついリアルな話をしているのかと思ってしまった。
そこからは美奈たちが俺たちを再び分断させる作戦を取り、俺たちは必死にそれに抗い、乱戦にもちこんだ。
「スキありだよお義姉ちゃん!」
「わっ!」
綾奈は吹っ飛ばされたが、ギリギリで場外にならずにすんだ。
残り残機一で、俺一人で美奈と修斗の相手をするのは無理だったので助かった。
「うぅ~……えい!」
いまだに高い上空にいる綾奈が、そんな掛け声とともに固い物質に変身してすごいスピードで落ちてくる。
「あ、綾奈!?」
いや、そんな上空からまっすぐ落下してたら避けろと言ってるようなものだよ。
俺もタイミングが掴めないので、どちらかに攻撃を加えて綾奈の落下地点に相手を持っていくことが出来ない。
そして綾奈の攻撃はものの見事に空振り。
「ああ! 避けないでよ美奈ちゃん!」
「いやいや、普通避けるよ!」
ちょっとポンコツモードに入ってそうなお嫁さんに、美奈はツッコミを入れながら上空に蹴り飛ばした。
……が、これまたギリギリで場外にならなかった。ダメージはめちゃくちゃ入ってるのに、なんという強運!
「マジで!? これでも吹っ飛ばないの!?」
「すげぇ……綾奈先輩しぶと……すげぇ耐えてる」
なんか失礼なことを言いそうになった修斗が慌てて言い直した。
だが、この運を味方にすることが出来れば、まだ逆転の糸口は掴めるかもしれない。
俺は逆転を狙うため、必死に修斗にダメージを与えていく。
しかしここで、予想外なことが起きた。
ギリギリ耐えたと思っていた綾奈だったんだけど、時間差で綾奈の操作していたキャラがキラーンとお星様になってしまった。
「は? え!?」
ど、どういうこと? 美奈は追い打ちをしてないし、このステージはギミックもないし、美奈も修斗もアイテムを投げたりしてないのに……。
多分俺だけじゃなく、美奈も修斗も同じことを思っているはずだ。
そしてその答えを持っている綾奈が気まずそうに言った。
「ご、ごめんねましゃと。慌てていたらスティックを上に倒しちゃった……」
「「「……」」」
俺は心の中でずっこけた。
つまり綾奈は、自らキャラを死に追いやってしまったと……。
白熱していた勝負だったが、まさかの綾奈の自滅で一人になってしまった俺に勝機はなく、善戦むなしく俺も場外へと吹っ飛ばされてしまった。
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