第611話 逆襲の美奈と修斗

「ま、負けたー!」

 二回戦は美奈と修斗チームの勝利となった。

 美奈は全身を近未来的なアーマーに身を包んだキャラに、そして修斗は茉子が使っていた暗黒闘気を身に纏うパワー系のダークファイターを使用した。

 綾奈を集中的に狙われて、俺が助けに行こうとしたら修斗が俺の迎撃に来るし、美奈もアイテムを投げてくるから近づけなかった。

 綾奈も空中に逃げようにも美奈のキャラの空中ローリングアタックでじわじわとダメージを与えられてから強攻撃を入れられてのコンボを打破する前に場外となった。

 そして二対一で俺に勝ち目がある訳もなく、善戦はしたがあえなくやられてしまった。

 それにしても、美奈と修斗……急にチームとしての連携が取れだした。いや、連携というよりはとにかく先にどっちかを倒そうとして、必殺技を先に綾奈に集中砲火を浴びせた気もするけど、そんなにご褒美……いや、名前呼びが嫌なんだな……。


 そして最終の三回戦。

 美奈と修斗はまたしてもキャラを変更。美奈はスピード特化のキツネ、そして修斗は有名格ゲーキャラだ。


「修斗はそいつが一番強いキャラなのか?」

「そうですね。それに格ゲーはよくやってますから」

 こいつは格ゲーのコマンドでも技が出せるから、ボタン一つで簡単に技を出すより、コマンドを入力する方がしっくりくるのかもしれない。

「キリッとしててちょっとかっこいいキツネさんだね」

「お義姉ちゃん、油断してると痛い目見るよ」

 そういや綾奈はあのキツネと相対するのは初じゃなかったか? 性能がわからない以上、これは苦しい戦いを強いられそうだ。

 このゲームはキャラが多いけどその反面、全てのキャラの能力を把握しづらい。

 冬休み中しかプレイしなかった綾奈は、知っているキャラより知らないキャラの方が圧倒的に多い。

 特訓はしたけど、同じ相手と繰り返しだったからなぁ……それもいけなかった。

 俺と綾奈はキャラをそのままで、三回戦がスタートした。


 開始早々、美奈は光線銃を綾奈のキャラに向けて連射していた。

「あれ? ダメージはあるけど動ける。……これなら!」

 綾奈は被弾覚悟で突進。多分ジャンプでかわすよりも攻撃して光線銃攻撃も止めされる魂胆なんだろうけど、なかなか脳筋な選択だよな。

「甘いよお義姉ちゃん!」

 綾奈の蹴り攻撃をジャンプでかわし、そのまま降下しながらの回転蹴りで多段ヒットを与える。

「ふえぇ!? ど、どうしよう……」

「綾奈、とりあえず距離を───」

「綾奈先輩の心配をしてる場合ですかおにーさん!」

 一方の修斗は俺にべったりで、こっちも一度距離を取りたいのに離れてくれない。

「横水、そのままお兄ちゃんを画面の端まで追いやって! 私はお義姉ちゃんを逆側に追い込むから!」

「わかった!」

 この短時間で俺の想像よりもチームワークに磨きがかかってないか!?

 ……いや、違う!

「そういうことか……!」

 この二人、チームワークなんてない。

 乱戦になったら互いに足を引っ張りあって逆に不利になるから、こうやって俺と綾奈を分断して一対一サシにもちこんでいるんだ。

 綾奈の実力は美奈より上だけど、ここまでペースを乱されたら実力だけでは覆すのは難しい。

「ああ! やられちゃった……」

 綾奈の残機はあっという間に残り一。あとがない。

 俺と修斗は残り残機は二だけど、明らかに俺が不利だ。

 俺はマジで近距離しか攻撃手段がないけど、修斗のキャラは飛び道具がある。

 あ、ここで運良くお助けモンスターが出てくるボールが俺のそばに!

「くらえ修斗!」

 ボールを拾い、修斗に向かって勢いよくボールを投げたが、出てきたのはなんの攻撃手段も持っていない魚だった。

「残念でしたねおにーさん。……お」

 今度は修斗のキャラのそばに、強攻撃でリーチが伸びる剣が出現。迷うことなく修斗はそれを装備。

「ちょ! 格闘家ならその身一つで戦いなさいよ!」

 なんか焦って変な口調になってしまった。

「勝つためなら手段を選んでられない時だって格闘家にもあるんです!」

 剣の強攻撃がヒットし、俺は場外へ吹っ飛ばされた。

 これで俺と綾奈ペアの残機はそれぞれ一。

 対して修斗は二、美奈は無傷の三。

 俺たちは崖っぷちに追い込まれてしまった。

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