第600話 姉妹であることを打ち明ける

 俺たちのケーキが揃ったタイミングで、俺は話を切り出した。

「それで早速なんだけど───」

「おめでとう!」

「え?」

「ふえ?」

「……はぁ」

 早く本題を話して、早くみんなでケーキを堪能しようと思って早速切り出そうとしたら、江口さんがなぜか俺たちを祝福した。

 俺と綾奈は江口さんに面食らってしまったけど、楠さんは額に手を当ててため息をついている。

 この二人にはいつものことなのかもしれないな。

 それはさておき、なんで祝福してるのかを聞かないとな。

「江口さん。なんでいきなり……」

「え? 結婚したんじゃないの?」

 え? 結婚!?

「そ、それは早くしたいけど……ど、どうしてそっちの方にいくの!?」

 お、今度は綾奈が江口さんに聞いている。顔が赤くなって可愛いな。俺も早く結婚したい。

「だって大事な話っていうから……」

「そもそも結婚出来る年齢じゃないって、前にも言ったよね? 忘れたの乃愛?」

「あ、そうだった。ごめんね二人とも、つい……」

 ついって……。

 俺もその報告はしたいけど、楠さんの言ったように、まだ法律的に結婚出来ないからな。

「はぁ……ごめんね中筋君、西蓮寺さん。幼なじみがこんなので」

「あっはは! せとかひど~い」

 江口さんは楠さんのディスりをからからと笑って受け流している。幼なじみって言ってたし、昔からこんな感じなんだな。

「いやいや、全然構わないよ。それは本当に入籍した時にまた言ってもらうとして、二人は綾奈に歳の離れたお姉さんがいるって聞いてる?」

 これ以上脱線すると本題に戻せなくなるし、ケーキを楽しむ時間もなくなってしまうから、俺は会話の軌道を修正した。

「綾奈ちゃんのお姉さん? 確か前に聞いたような……」

「うん。確か一学期に」

 お、どうやらお姉さんの存在自体は二人にも話しているみたいだ。

 ただ、そのお姉さんが麻里姉ぇだということは微塵も思ってないよな。

「綾奈」

「うん」

 ここからは綾奈の口から言ってもらおうと思い、俺は綾奈にバトンを渡した。

「おお、阿吽の呼吸?」

「乃愛、ちょっと黙って」

 江口さん、俺と綾奈のちょっとしたやり取りでテンションが上がってるな。そもそもこれって阿吽の呼吸なのか?

 そしてそんな江口さんに淡々とつっこむ楠さん。いいコンビだ。

「それで、私のお姉ちゃんなんだけど……」

「え? 紹介してくれるの?」

「でも、なんで私たちに?」

 江口さんはまた口を挟んできたけど、今度は楠さんも止めなかった。どうやら疑問の方が強いみたいだ。

 まぁ、同じクラスで友達として約一年間接してきたけど、いきなりお姉さん紹介の流れってのは不自然だもんな。脈絡もなにもあったもんじゃないし。

「紹介なんだけど、既に二人もよく知ってる人というか……」

「「?」」

 二人は本当にわかっていなくて小首を傾げている。

 このあと誰がお姉さんなのかを知った二人は、おそらくびっくりするだろうな。俺も最初はマジで驚いた。

 そうなると、保険としても同席している俺の出番はなくなるわけだけど。

「実は、私のお姉ちゃん……松木先生なの!」

 お、ついに綾奈がお姉さんの正体を明かした! これには江口さんなんかは驚いて声を大に───

「「え?」」

 ──してではなく、ただ静かに驚いていた。

 俺の予想したリアクションとは違うけど、果たして信じてくれるかな?

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