第589話 帰宅してイチャイチャ
「ただいまー」
写真を撮影したあと、拓斗さんの綾奈へのお返しを受け取り、休憩時間ギリギリの二人に別れを告げて家に帰ってきた。いろいろあって長居したから外はほとんど暗くなっていた。
俺が帰宅を告げると、リビングに続く扉が開かれて、中から綾奈が出てきた。
俺が誕生日プレゼントであげたシュシュで髪を束ね、母さんから借りたであろうエプロンをした綾奈……新妻感がすごい。
それに、こうしてすぐに出迎えてくれるのって、仕事で帰ってきた夫を労う妻感も出ていて自然と笑顔になってしまうな。
「おかえりなさい真人! 遅かったね」
「ただいま綾奈。……うん、ちょっと、いろいろとね」
遅くなった理由はとても一言では表しきれないからな。これは夕食後に話そうかな。
「お姉ちゃんがなかなか帰らせてくれなかった、とか?」
「な、なんでそう思うんだ?」
「だって、お姉ちゃんも真人が大好きだから……」
「お返しを渡して、頭を撫でられたけど、別に帰らせてくれなかったってほどでは……」
遅くなった一番の理由はむしろその後の拓斗さんと星原さんの件だし。
「……って、綾奈!?」
綾奈は自分の右手を挙げて、それを俺の頭の上に乗せた。
俺はまだ廊下に上がっていないから、段差で綾奈もそこまで手を挙げなくても俺の頭に届かせることが出来ている。
「私も旦那様を撫でたいな~って……」
そう言って綾奈は優しく俺の頭を撫で続けている。
あ~……気持ちいいなぁ……。やっぱり綾奈に撫でられるのが一番好きだ。
俺はだんだんとふわふわした気分になり、目を瞑り考えるのをやめて、綾奈にされるがままになっている。
「ふふ、気持ちいいの?」
「うん。すごく……」
すごく幸せな気分だよ……。
「あれ? 真人の目、なんだか少し腫れてるような……」
「っ!」
俺がすごく幸せな気分に浸っていると、綾奈からそんな指摘をされた。
マジか。長い時間泣いたわけでもないのに、腫れているのか!?
「真人、もしかして泣いちゃったの? え、辛いことがあったの!?」
「い、いや、辛いことはなかったから安心して。……というかよくわかったね」
「大好きな旦那様のことはよく見てますから」
綾奈は俺の頭を撫でながら、えっへんと胸を張った。ドヤ顔も可愛いな。
「嬉しいよ綾奈」
「えへへ。ところでなんで泣いちゃったの?」
それを語るのには拓斗さんと星原さんのことを話さないわけにはいかない。綾奈に言っていいかの許可はもらってないけど、近いうちにドゥー・ボヌールに行くし、綾奈も拓斗さんの気持ちは知っているから、ここで俺が言っても問題はないよな。
「うん。実は───」
「お兄ちゃんたち、イチャついてないで早く入ってきてよ。もうお腹ぺこぺこだから」
俺が拓斗さんたちのことを話そうとしたら、リビングから美奈が顔を覗かせた。ちゃんと見もしないでどうしてイチャついてるとわかったんだ?
「わかった。すぐ行くよ」
「ご、ごめんね美奈ちゃん」
「いいよ。それより早く食べよ」
美奈は笑顔でそう言うと顔を引っ込めた。
俺たちは軽くキスをして、俺は手を洗ってからリビングに入った。
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