第587話 盗み聞きを許さない望緒
「ま、真人君!?」
「ちょ、なんで真人君がここにいるんだ!?」
案の定二人に見つかってしまった。ここは言い訳せずに正直に話さなくちゃいけない。
「うぅ……ぐすっ、麻里姉ぇにバレンタインのお返しを渡して、帰ろうとしたらお二人の声が聞こえて、拓斗さんから聞いて気持ちを知っていたから、いけないと思いつつもどうしても気になってしまって……本当にごめんなさい」
「ま、マジかぁ……聞かれていたのか」
「それにしても、なんで真人君が泣いてるの?」
「拓斗さんの告白を聞いてるうちに、感情移入しちゃったみたいで……ずずっ!」
いまだに泣くとは思ってなかった。感情移入もそうだし、緊張の糸が切れたのも関係してると思う。
「お、おふたりとも……おめでとうございます~!」
止めようと思っても止まらない。泣き虫のまんまだな俺。
「というか、いつから聞いてたんだ?」
俺は涙を止めながら、いつから聞いていたか記憶を探る。
「えっと……星原さんの『マカロンありがとう』くらいからです」
「ほとんど最初っからじゃないか」
「本当にごめんなさい……」
本来なら気づかれずにここを離れようと思っていたのに、拓斗さんから話は聞いていたとはいえ、ここまで拓斗さんの告白の行方に一喜一憂しているのは自分でもちょっとびっくりしている。、
「まぁ、俺も君に自分の気持ちを言ったからなぁ……それだけ心配してくれていたってのは嬉しかったし、気にするなよ」
「ありがとうございます拓斗さん」
拓斗さんが優しい人でよかった。星原さんと付き合えたから心がより寛大になってる。
「望緒さんは……っ!」
「ほ、星原さん……?」
俺と拓斗さんは星原さんを見てぎょっとした。星原さんはいつの間にか、眉を吊り上げて、腕を組み仁王立ちで俺を睨んでいたからだ。
「拓斗君は優しいから許したけど、私はそうはいかないよ真人君」
「は、はい……」
俺は怒られて当然の行為をしたので、星原さんのお叱りは甘んじて受けるつもりだけど、どんなことを言われるんだろう? ほとんど笑顔の星原さんしか見たことないからわからないけど、これはかなりきつく絞られそうだな。
「ま、待ってください望緒さん! 真人君は俺を心配してくれたから聞いていただけで、綾奈ちゃんの旦那で、翔太さんと麻里奈さんが認めている真人君が悪気があってこんなことするわけ───」
「ちょっと黙ってて拓斗君」
「……はい」
拓斗さん撃沈! 援護は嬉しかったけど相手が強すぎる!
拓斗さんを簡単に打ち破った星原さんは、一歩、また一歩と俺との距離を詰める。やばい……星原さんの顔を見れない。
「真人君。手、出して」
「は、はい……」
俺の真正面、すぐ近くにやってきた星原さんに言われるがまま、俺は手を出す。
な、なんだ……? 痛いツボでも刺激されてしまうのか?
俺がそんな訳のわからないことを考えていると、俺の手にピンクのカバーに入れられている一台のスマホが置かれた。
俺は混乱したまま星原さんの顔を見ると、さっきまで俺を睨んでいたのが嘘のように、星原さんは笑顔を見せていた。
「あ、あの星原さん。これは……」
「私のスマホよ」
「いや、えっと……」
それはわかってるんです。
そうじゃなくて、なんで俺に自分のスマホを手渡しているんですか?
そう言いたいのに、混乱と少し残っている恐怖心で言葉がうまく出ない。
「拓斗君の告白と、私の返事を聞いた真人君には、バツとして私たちのツーショット写真を撮影する刑に処します」
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