第585話 拓斗の告白
ドゥー・ボヌールの裏手側……そこは建物と塀以外はほとんど何もないところだった。
人気店にしては駐車場が少ないなと思っていたけど、それでも足繁く通う人がいっぱいいるからすごいなぁ。
「拓斗君、マカロンありがとう」
「いえ、お返しは当然なので……」
まぁ、そんなことは置いといて、今は拓斗さんと星原さんだ。
俺は二人からは見えないよう壁の角に隠れる。
まさか星原さんもいるのには驚いたけど、まさかここで告白するのか!?
当然盗み聞きは褒められるものじゃないけど、偶然にも出くわしてしまったこのビッグイベント……罪悪感よりもこの後の展開が気になってしまって足がドゥー・ボヌールの敷地の外に向かっていかない。
「まさかロシアンチョコレートのお返しがこんなに美味しそうなマカロンとは驚いたよ」
「それ、けっこう自信作なんで、どうしても望緒さんに食べてほしくて……」
拓斗さん声ちっさ!
でも、今から告白する緊張もあると思うけど、そんなにガチガチになってしまうほど星原さんが好きなんだな。
「ありがとう。休憩時間もそんなに残ってないし、少し冷えるから中に入ろっか」
「あ、待ってください!」
拓斗さんが星原さんを呼び止めた。ということは、いよいよか……!?
もうすぐ拓斗さんが想いを伝えると思うと、俺までめちゃくちゃ緊張してきた。
声出さないように手で押えておこう。
「ん、どうしたの拓斗君?」
「あの、俺……」
拓斗さんは緊張からなかなか言い出せずにいる。
俺も綾奈に告白した時や、その前の高崎高校の文化祭であった大告白祭はマジで吐きそうになるほど緊張した。
それでも緊張に負けないように、俺の中の綾奈に対する想いを全部出し切るんだって思って、緊張を打ち消したんだ。
拓斗さんならきっと乗り越えられます! だから自分の気持ちを、想いを星原さんに伝えてください!
「な~に? いつもより歯切れがわる───」
「俺、望緒さんが好きです!」
「っ!」
「え?」
言った……言ったよ拓斗さん! ついに星原さんに思いの丈をぶつけた!
勢いまかせだったけど、告白なんて勢いがあってナンボだ。普通のテンションで言うなんてまず無理だ。相手を想うほど緊張してしまうものだ。
拓斗さんの星原さんを想う気持ちは本物だ。じゃなかったら、一昨日俺たちに打ち明けたり相談したりはしない。
頼む! 拓斗さんの想いよ届いてくれ……!
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